最新の臨床医学:4月24日<肺結核① 結核は過去の病気ではありません。>

肺結核は、結核菌による感染症です。

 

治療は多剤併用療法(経口薬の場合、イソニアジド・リファンピシン・エタンブトール塩酸塩・ピラジナミドの4剤)が基本になります。

 

治療期間は、標準治療を実施した場合でも6か月間に及びます。

 

不規則治療や中断は、十分な効果が挙げられないばかりでなく、結核が蔓延し、耐性菌を生み出すことになります。

 

WHOは1995年にDOTS(直接観察下、短期化学療法)戦略を提唱しました。

 

これは「発見した喀痰塗抹陽性肺結核患者の85%以上を治す」ことを目標とした包括的な結核対策です。

 

日本の結核登録率(罹患率に相当)は人口10万対13.9(2016年)まで低下し、低蔓延国といわれる10万対10に近づいています。

 

しかし、初回塗抹陽性肺結核患者の治癒・治療完了率は47.7%(2016年)と良好ではありません。これには結核患者の高齢化(70歳以上の患者割合59.0%)が強く影響しています。

 

潜在性結核感染症の診断と治療は、わが国の結核対策のなかでも重要です。

 

潜在性結核感染症であった場合、免疫抑制状態にある患者(HIV感染症、臓器移植、慢性腎不全・血液透析、糖尿病、生物学的製剤による治療)は、活動性結核を発症するリスクが高いです。

 

 

日本結核病学会「結核診療ガイドライン(改訂第3版)」(2015年3月)

 

厚生労働省「結核医療の基準」(2016年1月)

 

 

高円寺南診療所での結核対応

 

①結核の診断には、検査結果を併せて説明することが重要です。

 

②喀痰検査と塗抹検査が陽性であった場合、胸部X線で空洞がある場合は結核の病態が進行していることになります。そのため、結核診療施設に入院して治療する可能性が高まります。その場合には、感染症法に則って対応する必要性を説明します。

 

③患者・家族などに接触する時間が長い人は結核に感染している可能性があります。

その場合、接触者検診を実施する対象になる可能性について説明します。ただし、すでに呼吸器症状を呈している家族(接触者)が居る場合は、より迅速な対応が必要です。

 

④結核の治療は最短でも6か月間を要すること:治療を成功させるためには厳密な服薬管理が重要です。その際には保健所の担当者が支援を行うことを説明します。

 

⑤結核の治療は多剤併用療法:肝機能障害などの副作用が起こる頻度は比較的高く、定期的に採血を行い副作用の有無を確認します。副作用の症状があった場合には、早期に受診していただきます。

 

⑥リファンピシンは薬物相互作用を起こしやすい抗結核薬です。

現在内服している薬をすべて提示していただき、薬物相互作用の可能性をチェックすることは不可欠です。