第115回日本内科学会(京都)4月15日(日)報告③その3

たった3日間の学会ですが、内容が濃く、膨大な情報量になってしまいました。

 

以下の学会報告リポートは、いわば講義ノートのようなものですが、一般の皆様にも理解し易いように書き改めています。私の分析の他、感想や思い付きは朱書きとしました。

 

 

2.原発性アルドステロン症の診断と治療… ………………………大分大学 柴田 洋孝

 

二次性高血圧のなかで、原発性アルドステロン症は特に頻度が高く、高血圧の約5~15%を占める食塩感受性高血圧です。

 

しばしば治療抵抗性高血圧をも呈し、同程度に血圧をコントロールした本態性高血圧患者と比べ、心血管疾患の罹患率が高いです。

 

本症の診断は、段階的に行うことが推奨されています。スクリーニング検査としては、アルドステロン/レニン比で行うことが推奨されています。

 

しかし、最終的に手術による治療を目指すためには、副腎静脈サンプリングによる片側性アルドステロン産生腺腫の局在診断が必要になりますが、実臨床とりわけ外来診療において容易に実施できる検査ではありません。

 

診断の進捗を阻む未解決の課題としては、ホルモンの迅速測定、副腎静脈サンプリングの代替検査となる体外診断、手術治療と薬物治療による予後調査等があります。

 

片側性病変では副腎摘出術により治療を期待でき、両側性病変でも薬物療法により著明な改善が期待できます。

 

高円寺南診療所では、今後、未治療高血圧患者の薬物療法を開始する際に、積極的に二次性高血圧を鑑別し、とりわけ原発性アルドステロン症の鑑別するための初診時スクリーニング検査としてアルドステロン/レニン比をルーチン化する予定です。

 

 

 

3.クッシング・サブクリニカルクッシング症候群… ……………福岡大学 柳瀬 敏彦

 

クッシング・サブクリニカルクッシング症候群は、特徴的な身体所見や副腎偶発腫瘍として発見される例が増えています。これらも高血圧や耐糖能異常等合併症が多く、手術により著明な改善が期待されます。

 

糖質コルチコイド(GC)は、糖質・脂質代謝作用のみならず、昇圧に作用し、生命維持に必須のホルモンです。

 

クッシング症候群はコルチゾールの慢性過剰症ではおよそ84%で高血圧を呈します。

 

コルチゾールの自律産生能が弱いサブクリニカル・クッシング症候群においても60%強の高血圧合併症が報告されています。

 

GCにおける死因は心不全、脳卒中、心筋梗塞等の血管合併症によるものが多いです。

 

本症における血管合併症の発症・進展には高血圧以外にもGC過剰に伴う糖尿病、肥満、脂質異常症等が相互に関係します。

 

 

血圧上昇の成因としては、GC過剰に伴う体液量増大や種々の因子を介した末梢血管抵抗の増大、カテコラミンやアンジオテンシンⅡに対する受容体等様々な機序関与しています。

 

また長期的にはインスリン抵抗性を介した耐糖能異常や脂質異常症等により動脈硬化を惹起することも関与します。

 

治療は副腎腫瘍の摘出を原則とし、CSにおけるその効果は顕著です。

 

一方、コルチゾールの自律性分泌が比較的弱いサブクリニカルCS(SCS)に関しては、診断上の問題点や手術適応に関して種々の議論がなされてきました。

 

なおCSやCSCの副腎腺腫ではPKA(プロテインカイネースA)シグナルの恒常的活性化をきたす体細胞異変が同定されました。

 

これはSCSよりもCSでの変異陽性率が高いことから、コルチゾールの自律分泌能との関連が明らかになっています。