最新の臨床医学:4月20日<関節リウマチ(1)残される課題>

 

 

 

関節リウマチ(RA)とは、一言でいえば全身性自己免疫疾患の代表です。

特徴は、持続性・破壊性の関節症状を有することです。

つまり、端的には関節に症状が現れる病気なのですが、全身性の病気であるという理解が必要です。

患者数は国内で約70万人とされてきましたが、80万人とされるようになってきました。

男女比は1:4で女性に多い病気です。

年齢は40~60歳代で、就業年齢に起こるため、RA発症は労働生産性の低下につながります。また、近年では生物学的製剤が普及し、RA患者の労働生産性は向上しましたが、患者医療費を押し上げ、社会経済的にも大きな問題になっています。

RAは身近な疾患であるため、こうした経済的観点は重要であり、抗リウマチ薬を「適切な患者に」「適切なタイミングで」「適切な製剤や投与量を」使用することを常に心がけているところです。

 

薬剤の進歩に合わせてRA分類基準が改訂され、また「目標達成に向けた治療」戦略が公表されました。

以下が、日本リウマチ学会から刊行されています。

2014年「関節リウマチ診療ガイドライン」

2016年「関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン改訂版」

 

しかし、以下のような課題が残っています。

①いまだに治療の決定版がない

難治性のRAの場合、せっかく早期にRAを診断し、ガイドラインに沿って治療を試みても、多くの薬剤にアレルギー反応が出たり、しばらくすると効果不十分となったりすることがあります。その理由は、RAは一括りの病気ではなく、ある程度異質な病気の寄せ集めであるからです。私は<関節リウマチ>という病名自体が多くの患者さんに誤解を与えているのではないかと心配しています。個人的には<関節リウマチ症候群>に改めるべきではないかと考えています。

言い換えれば、同じRAという診断であっても、患者ごとに病態が異なり、それに関連する免疫細胞やサイトカインが異なっています。これは、多くの患者さんに対して原因療法が行えていない現実とも重なってきます。また、抗体製剤にアレルギーがある場合には、有効性の判定以前に、その薬剤の使用が困難になってしまうことも問題になっています。

②長期罹患RAで合併症の多い患者

困るのは、強力な免疫抑制療法が行いにくいケースです。

典型例としては、すでに関節変形が進行してしまっている例、ステロイド薬の合併症が複数生じてしまった例、肺線維症をはじめとする肺合併症を有する例などです。

この場合は、治療目標を臨床的寛解ではなく、低疾患活動性とせざるを得ません。

しかし、悩ましいのは、患者は疼痛や機能障害を訴えることが多く、生活の質QOLが著しく低下することです。とりわけ、問題になるのは高齢RA例です。

認知機能の低下を伴う場合には、いっそうの支援が必要になります。

②医療費の問題

生物学的製剤が使用できるようになってから、RA患者の医療費は急上昇しました。

高円寺南診療所では、高額な生物学的製剤を極力使用しないで済むように、コストの低い抗リウマチ薬を工夫して処方しています。そのために最も大切なのは、早期発見および早期治療です。