第115回日本内科学会(京都)報告②:4月14日(土)その5

喘息・COPDにおける気道炎症メカニズム………………高知大学 横山 彰仁

 

気管支喘息は成人の6~10%程度、慢性閉塞性肺疾患は40歳以上の8%以上に認められます。

 

気管支喘息では、基本的に、その発現のメカニズムは明確でないためか、一定の評価を獲得している既存薬を使用しても十分なコントロールが得られない患者が5~10%程度存在し、これらは重症喘息と呼ばれます。

 

このなかに喘息自体が重症である本来の重症喘息と、喘息以外の因子によって重症化している治療困難喘息があり、重症喘息のピットフォールになります。

 

Th2型T細胞…自然免疫との関係

 

好酸球性炎症、非好酸球性炎症

 

非好酸球性炎症に対してステロイドは無効

 

治療困難因子の改善

 

口演中の治療困難喘息の因子スライドには、心理的因子がリストされていませんでした。これこそが大いなるピットフォールです。

 

 

喘息増悪頻度およぶICS効果予告因子としての末梢血好酸球数(喀痰中好酸球数が望ましいのだが)

 

好酸球性炎症:COPDに対する抗IL-5(メポリズマブ)の増悪抑制効果は好酸球数が増加するほど大きくなる,他に抗IgE

 

COPDは、いつでも治療が有益な疾患、

 

薬物療法の基本は気管支拡張薬

 

横山先生は、以上のように解説していますが、重症喘息のピットフォールには、鼻炎合併喘息であるにもかかわらず鼻炎の治療がなされていないケースや心理社会的ストレスで増悪し発作を生じる呼吸器心身症としての喘息の見落としを具体的にあげておくべきではないかと思います。

 

喘息は呼吸器内科やアレルギー内科が最も得意としなければならない疾患であるにもかかわらず、必ずしも適切に治療がなされているとは限りません。

 

呼吸器内科専門医や内科アレルギー専門医は鼻腔を診察しませんし、たいていは心身医学に対する研鑽を積んでいないからです。

 

現在、日本アレルギー学会は総合アレルギー専門医を養成しようとしているし、私もその方向に賛成、というか、とっくの昔に実践しているので、重症喘息とか難治性喘息の多くは、細分化専門医学や大量生産性医療によってもたらされたケースではないのかとさえ考えています。

 

慢性閉塞性肺疾患は基本的に難治であるために、治療しても仕方がないという認識そのものがピットフォールです。現在、いかなる患者であれ治療は可能であり、肺機能低下を抑制し症状を緩和すること、および初期からみられる併存症への対応が重要です。また、予防可能な疾患であり、禁煙が最重要です。

 

母体の喫煙暴露や栄養障害等、胎生期の問題が喘息および慢性閉塞性肺疾患、また、最大到達肺機能低下のリスク因子であることも知られています。

 

横山先生の後半部分の記述は、全くもってその通りだと思います。

 

 

慢性心不全における薬物治療と非薬物治療の進歩と限界… …九州大学 筒井 裕之

日本循環器学会と日本心不全学会は、心不全を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」とする一般向けの定義を公表しました。

心不全リスク(ステージA,B)⇒症候性心不全(ステージC,D)

慢性心不全に対する薬物療法・非薬物療法は進歩が著しい反面、未だに厳然たる限界があります。心不全については、近年は「左室駆出率が低下した心不全(heart failure with EF: HFrEF)LVEF《40%」主に収縮機能障害(心筋梗塞、拡張型心筋症などに対して「左室駆出率が保持された心不全(heart failure with preserved EF: HFpEF)」主に拡張機能障害(高血圧性疾患を始め、多様な基礎疾患と多様な併発疾患)が話題になっています。前者の治療が著しい発展を遂げているのに対して、後者は増加して現代型心不全であるにもかかわらず、未だ生命予後を改善する治療が確立していないからです。

治療の発展:神経体液性因子の上昇による心不全増悪という悪循環のメカニズム

非薬物療法:呼吸療法、運動療法、細胞治療

病態別治療:HFpEFは利尿剤を病態に応じて、ただしHFmrEFは個々の病態に応じて治療

入院死亡率8%、再入院率20%(アドヒアランス不良にいる症状増悪によることが多い)

画一的な治療では改善できず、個別的ケアの必要性

新たな心不全治療薬:2型糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬

心不全による入院を抑制する

ACE阻害薬〔エナラプリル:レニベース®〕を上回る成績の薬剤の開発

いずれにしても、心不全患者は高齢者が多いとはいえ、治療戦略の基本は変わりません。ただし、エビデンスが十分でないうえに副作用が生じやすく、合併症も多いため、患者特性に基づいた個別の対応が必要です。

非薬物療法である植込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator: ICD)と

心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy: CRT)の有効性は確立し、標準治療となっています。ただし、画一的なプログラムには限界があり、行動変容に基づくセルフケアを支援するICT(information and communication technology)の活用も取り組まれています。

筒井先生のレクチャーのなかで、循環器内科医も心身医学とりわけ心療内科と無関係ではいられない時代に突入したことが行動変容に基づくセルフケアを支援するICTの活用という記述で紹介されました。問題は、どこまで適切に活用できるかということです。高円寺南診療所でも心臓超音波検査によって左室駆出率を計測できるので、心不全の評価分類と重症度評価をこれまでより一層きめ細やかに行わなくてはならないと思います。