最新の臨床医学:腎臓病学< 糖尿病性腎臓病>

糖尿性腎腎臓病の分類:

糖尿病患者においては、糖尿病管理の向上と患者の高齢化とともに、以前よく見られていたネフローゼから腎機能低下に至る古典的な糖尿病腎症患者が減る一方で、蛋白尿を伴わずに腎機能低下を示す症例が増えてきました。

 

そこで、これらを総括して糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease)と捉えるようになっています。

 

日本腎臓病学会と日本糖尿病学会の合同委員会で「糖尿病性腎症」の病期分類が改訂されました。

 

血清クレアチニンにより算出されるeGFR30mL//1.73m²未満であれば蛋白尿の程度に関わらず、ステージが進むことになります。

 

ただし、2期を診断するにあたり微量アルブミン尿は必須です。そして、これは実際的には「糖尿病性腎臓病」の分類になっています。

 

 

糖尿病性腎症は糖尿病に罹患後、5年以上経過してから生じます。

 

診断する上で参考になるのが、微量アルブミン尿の検出の他、網膜症や神経障害などの合併症の存在です。

 

一般に、網膜症が腎症に先行することが多いです。

 

糖尿病性腎症初期には、検尿試験紙で蛋白尿を検出できないことが多く、また腎機能が低下しても腎が委縮しないことも多いです。

 

さらに血清クレアチニンは進行期にならないと上昇しません。

 

また糸球体濾過量(GFR)は、初期には糸球体過剰濾過によって増加しますが、末期には著明に低下します。

 

 

尿中微量アルブミン量測定は、早期診断に有効であり、糖尿病性腎症第2期(早期腎症)の診断根拠となり、このステージが糖尿病性腎症のうち76%を占めます。

 

なお尿アルブミン30~299mg/gCr、eGFR30mL/分/1.73m²以上であれば微量アルブミン尿と診断します。

 

このステージの尿中微量アルブミン尿は、不可逆的ではなく、治療によって正常アルブミン尿に戻せることがあります。

 

 

糖尿病性腎症に合併するキンメルスティール-ウィルソン症候群では、光学顕微鏡でキンメルスティール-ウィルソン病変と呼ばれる糸球体結節病変が認められることがあります。

 

 

<糖尿病・耐糖能異常の治療>

糖尿病は糖尿病腎症の原因であり、他の慢性腎臓病(CKD)の悪化因子でもあります。

 

また糖尿病はそれ自体で心血管系疾患(CVD)の強力な危険因子です。

 

糖尿病腎症の管理目標はHbA1c6.9%未満です。

 

しかし、腎機能が低下すると低血糖の危険も増すことに留意します。

 

重篤な腎障害ではインスリン治療を原則とします。インスリン自己注射を行っている者の多くにインスリン抗体が検出されますが、インスリン抗体の存在自体は治療の対象にはなりません。

 

 

糖尿病性腎症の食事療法として、顕性腎症期あるいはG3以上では低蛋白食が推奨されます。

 

 

糖尿病性腎症第4期(腎不全期)は尿アルブミン300mg/gCr以上,eGFR30mL/分/1.73m²未満ですが、このステージでは多量の蛋白尿が漏出し、ネフローゼ症候群を伴うものも少なくはありません。

 

糖尿病性腎症に伴って糸球体硬化が認められる場合は、腎機能が進行性に低下し腎不全となりやすいです。

 

病期分類4期に相当する2型糖尿病患者において、体液貯留に対しては利尿薬を投与し、高カリウム血症が是正されればRA阻害薬投与を検討します。

 

しかし、ビグアナイド薬とSU薬は禁忌です。

 

 

糖尿病性腎症に合併した高血圧にはACE阻害薬、ARBが第一選択です。

 

ACE阻害薬であるイミダプリル(タナトリル®)は糸球体の輸出細動脈をアンジオテンシンⅡ生成阻害作用により拡張して糸球体内圧を低下させることで腎症の発症や進展を予防します。

 

他のACE阻害薬、ARBも同様の作用を示すと考えられます。

 

Ca拮抗薬が追加される場合もありますが、サイアザイド利尿剤は血糖値を上げることがあるため、第一選択にはなりません。

 

なお、高度腎機能低下時に使用可能な経口血糖降下薬は限られています。

 

 

糖尿病性腎症での透析導入は、慢性腎不全の透析導入基準に従って、臨床症状、腎機能、日常生活障害度から判定します。

 

しかし、高齢者や糖尿病患者では血清クレアチニン値が5~7mg/dLでも早期から導入せざるを得ない場合があります。

 

なお、糖尿性腎症で透析導入患者では心血管イベントでの死亡率の割合が増加し、5年生存率は50%程度です。

 

糖尿病を合併した血液透析患者では、日本透析学会のガイドライン透析によると患者の血糖コントロールの指標には、HbA1cは参考程度に用いること、管理目標をGA20.0%未満(心血管イベントの既往があり、低血糖傾向のある患者では、GA24.0%未満を暫定的目標値)とすることが提唱されています。

 

糖尿病を合併した血液透析患者では、赤血球寿命が短縮し、透析に伴う失血やエリスロポイエチン製剤投与による幼弱赤血球増加などの要因によりHbA1cは平均血糖値と乖離して低値となります。

 

そのため、糖尿病を合併した血液透析患者の血糖管理の指標として適切にはなりえないからです。適切な指標としてグリコアルブミン(GA)が用いられます。

 

GAはアルブミンの糖化産物であり、赤血球寿命やエリスロポイエチン製剤投与の影響を受けず、過去約2週間の平均血糖値を反映します。

 

より具体的には、なおCペプチドはプロインスリンの構成成分でありインスリンと同じモル等量が分泌されるため、インスリン分泌能評価のために測定されます。

 

しかし、腎で代謝され尿に排泄されるため腎機能低下時の評価には注意を要します。

 

透析を要する高度腎機能低下時にはインスリン分泌が枯渇しているか否かの判断のみが可能です。

 

つまり、インスリン分泌の多寡の判断に用いることはできません。