最新の臨床医学:消化器・内分泌・代謝病学< 過敏性腸症候群(IBS)>

消化器症状がありながら、その症状を説明できる器質的病変を特定することができない病態を機能性消化管障害といいます。

 

つまり、内視鏡検査や造影検査、血液検査などでは原因となる異常を認めません。

 

そのうち、大腸・小腸由来の消化器症状(下痢・便秘・腹痛)を呈するものを過敏性腸症候群(IBSといいます。

 

IBSでは、機能的疾患であるため下痢、便秘、腹鳴がみられますが、発熱や粘血便、体重減少などの警告症状は伴いません。

 

 

また急性胃腸炎は感染後過敏性腸症候群ともいわれます。IBSは一般人口の約15%にみられる頻度の高い疾患です。

 

ストレスの関与が考えられていますが、その明確な原因はいまだ不明です。

 

また、便の性状により、便秘型、下痢型など4つのサブタイプに分けることができます。

 

 

受診の数か月以上前から、腹痛・腹部不快感(排便で軽快する)、下痢や便秘(排便回数や便性状の変化)が見られます。

 

患者さんの性格、労働適応、ライフスタイル(特に食習慣など)が発症に関連します。

 

 

過敏性腸症候群の重要な診断基準:排便で腹痛と腹部不快感とが軽快します。

 

 

治療は、心療内科で心身医学療法を行うなど、本人の不安を軽減したうえで、薬物治療を行います。

 

1)患者さんへの説明:癌などの重大な病気ではないので、慌てないで治療に取り組むことの大切さをお伝えします。

 

2)生活指導:生活習慣やストレスも大いに影響するので、規則正しい生活や暴飲暴食・欠食の是正を指導します。

 

3)薬物療法:一般的には高分子重合体(ポリカルボフィルカルシウム)ラモセナロン塩酸(男性下痢型に有効)や消化管運動調整薬(マレイン酸トリメプチン)を投与した上で、腹痛・下痢・便秘に対して対症的に薬剤を選択します。高円寺南診療所では、漢方薬による治療を主体に行っています。

 

 

なお、過敏性腸症候群にも整腸剤が有効であり、整腸剤を用いたプロバイオティクス治療は症状改善に有用です。

 

三環系抗うつ薬は、抗コリン作用をもつため下痢型では効果がありますが、便秘型では悪化する可能性があります。

 

 

2016年Rome委員会より改訂RomeⅣが発表され、IBSの診断基準が示されました。

 

2017年に新たな過敏性腸症候群治療薬リナクロチド(リンゼス®)が承認されました。

 

 

参照:過敏性腸症候群の診断基準(RomeⅣ,2016

 

機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS)(日本消化器病学会、2014