最新の臨床医学:血液学 <多発性骨髄腫(MM)>

貧血と腰痛などの骨痛を訴える高齢者が増えてきました。

 

そうした方の血清にM蛋白を求める場合は多発性骨髄腫(MM)を強く疑います。

 

 

多発性骨髄腫(MM)は形質細胞の腫瘍性増殖と、その産物であるM蛋白および間質細胞との相互作用によって生産される各種サイトカインによって多彩な臓器障害を来す疾患です。

 

このように症状を伴う多発性骨髄腫(症候性多発性骨髄腫)では、貧血、腎不全を含む腎障害、病的骨折などの骨病変、高カルシウム血症などを来します。

 

IgG型骨髄腫が最も多いです。

 

M蛋白以外の正常な免疫グロブリンの産生が抑制されることも特徴の一つです。

 

 参考)くすぶり型多発性骨髄腫(SMM : Smoldring multiple myeloma, 無症候性骨髄腫)

 

 

骨髄腫に関連した臓器障害(CRAB)を伴わない骨髄腫です。

 

血清M蛋白量≧3g/ⅾLもしくは尿中M蛋白量≧500mg/24時間

 

または骨髄のクローナルな形質細胞の比率が10~60%で骨髄腫診断事象およびアミロイドーシスの合併がないことが特徴です。

 

また無症候性であり腫瘍性格が不明確なM蛋白血症であるMGUSとの鑑別は、骨髄中の形質細胞、M蛋白量が多いことなどが挙げられます。

 

たとえばDurie & Salmon(DS)分類で病期ⅠではM蛋白量は少ない、とされます。

 

 

多発性骨髄腫の治療

〇若年例では初回治療としてボルテゾミブ+デキサメサゾンを含む寛解導入療法に続いて自家移植併用大量メルファラン(L-PAM)療法を行います。さらに、レナリドミドによる維持療法を行うこともあります。

 

〇自家移植非適応例には、初回治療としてL-PAM+ボルテゾミブ+プレドニゾロンやレナリドミド+デキサメサゾンを行います。さらに、再発・再燃例や治療不耐性の場合には治療変更を行います。

 

 

殺細胞性抗悪性腫瘍薬

アルキル化薬:DNAをアルキル化してDNA複製を阻害し、細胞死をもたらすものです。

 

 

①マスタード類(シクロホスファミドなど)

シクロホスファミド(CPA)は、多発性骨髄腫や悪性リンパ腫などの血液腫瘍や様々な悪性腫瘍に用いられています。

 

 

②ニトロソウレア類(ラニムスチンなど):DNAへの作用とともに蛋白に対する作用があります。ラニムスチン(MCNU)は多発性骨髄腫や悪性リンパ腫に用いられるが、遅発性骨髄抑制があります。

 

 

 

③抗体製剤(分子標的治療薬)

抗SLAMF7抗体(エロツズマブ)

骨髄細胞及びNK細胞のSLAMF7に結合し、NK細胞による抗骨髄腫作用を増強します。

 

再発・難治性多発性骨髄腫の患者でレナリドミド・デキサメサゾンと併用します。

 

小分子化合物

プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ)

 

プロテアソームを阻害することによって、癌細胞の複数の細胞内シグナル伝達系に作用して抗腫瘍効果を発揮します。主にNFκB経路の抑制作用が重要と考えられています。

 

ボルテゾミブは末梢神経障害や薬剤性肺炎に注意を要します。

 

カルフィルゾミブはボルテゾミブより末梢神経障害が少ないようです。