最新の臨床医学:腎臓病学< 腎細胞癌>

腎細胞癌の発見は一般に難しいです。

 

腎腫瘍の三徴は、腰背部痛、腹部腫瘤、肉眼的血尿ですが、これらの症状が出そろった段階では、すでに進行していることが多いです。

 

 

高円寺南診療所で発見した腎臓癌は、すべて超音波検査により、偶然発見した症例です。

 

 

幸いなことに、いずれも病期Ⅰ(T1N0M0)であったため、5年生存率約95%の段階で、腎摘出術を行うことができました。

 

ただし、術後5年以上経過してからの再発(晩期再発)が見られるため、フォローアップを続けていますが、いずれも元気にご活躍中です。

 

 

膵臓癌と同様に腎臓癌の早期発見に、超音波検査は威力を発揮し、多くの生命を救ってきました。

 

 

<腎細胞癌に対する抗悪性腫瘍薬>

 

免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブなど)

 

人体には免疫監視機構が備わっています。これが癌に対する自然治癒力の根源です。

 

癌細胞が発現する主要関連抗原は、抗原提示細胞に取り込まれます。

 

これがT細胞を活性化し、癌細胞を排除するようになります。

 

しかし、腫瘍細胞は、免疫チェックポイントをアップレギュレート(この場合は、監視力が低下すること。

 

通常の意味は、神経伝達物質やホルモンなどへの応答能が増大すること。

 

それらの物質や信号が減少することで、受容体の数が増加したり、感受性が過敏になったりして生じる。上方制御。)することで、このような免疫監視機構から逃避するので問題となります。

 

 

T細胞に発現する免疫チェックポイント受容体であるCTLA-4とPD-1は、それぞれ、抗原提示細胞表面のリガンド(特定の受容体に特異的に結合する物質)及び癌細胞表面のリガンド(PD-L1またはPD-L2)と相互作用します。

 

それによってT細胞の活性化を抑制します。

 

 

 

免疫チェックポイント阻害薬は、これらの免疫チェックポイント分子を標的とするモノクローナル抗体であり、これを投与することによって、T細胞に対するブレーキが外れます。

 

こうした作用によってT細胞による抗腫瘍効果が発揮されます。

 

ただし、非常に効果に薬剤であるうえに、多様な免疫関連有害事象が生じることが知られているため、適切かつ慎重な対応が必要です。

 

 

ニボルマブは、PD-1に対するヒト型モノクローナル抗体です。

 

この抗体は抗原特異的T細胞を活性化させます。

 

それがこの薬剤の抗腫瘍効果のメカニズムです。

 

腎細胞癌の他にも悪性黒色腫、非小細胞肺癌などに用いられている分子標的治療薬です。

 

 

小分子化合物(アキシチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、エベロリムス、テムシロリムス)

〇VEGFR阻害薬(アキシチニブ)

 

 

VEGFRチロシンキナーゼを選択的に阻害し、腫瘍血管新生を阻害します。

〇マルチキナーゼ阻害薬(ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブなど)

 

 

マルチキナーゼ阻害薬は複数のキナーゼを阻害します。阻害するキナーゼの種類によって効果も副作用も多様です。

〇mTOR阻害薬(エベロリムス、テムシロリムスなど)

 

 

mTOR阻害薬はセリン・スレオニンキナーゼであるmTORを選択的に阻害します。

 

エベロリムスは、マルチキナーゼ阻害薬(ソラフェニブ、スニチニブ)による前治療歴抵抗性の根治切除不能または転移性の腎細胞癌などに適応症があります。

 

テムシロリムスも腎細胞癌が適応ですが注射薬です。