最新の臨床医学:消化器・内分泌・代謝病学 <胃食道逆流症(GERD)/ 消化性潰瘍>

胃食道逆流症(GERD)は、従来、逆流性食道炎と呼ばれてきました。

 

これは胃内容物の食道内への逆流により、不快な症状あるいは合併症を引き起こした状態を指します。

 

胸焼け、心窩部痛(みぞおちの痛み)などが主症状です。

 

また、嗄声(声枯れ)、咳、喘息などの呼吸器症状、のどの違和感や詰まった感じなど咽頭症状、胸痛など心疾患様症状を来すこともあります。

 

そのため系統的な鑑別診断が重要です。

 

 

高円寺南診療所で多数経験しているのが、GERDによる咳嗽です。我が国における咳嗽の頻度は、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群(SBS),胃食道逆流症(GERD)の順です。

 

咳喘息やアトピー咳嗽はアレルギー科専門診療で直接相談を受けますが、GERDは、他の病因の消化器内科や呼吸器内科を併診しているのに良くならないケースとして相談を受けることが増えてきました。

 

とくに、ピロリ菌の除菌療法を行った後に症状が強くなってきたという方が少なくありません。

 

 

上部消化管疾患では、高齢者の増加、H.pylori感染者の減少と除菌治療の普及(毎年約150万人が除菌治療を受けている)などにより、疾病分布が大きく変化しています。

 

すなわち、消化性潰瘍が減少し、胃食道逆流症(GERD)や機能性ディスペプシア(FD)が増加しています。

 

 

胃食道逆流症(GERD)は、機能性ディスぺプシア(FD)との症状のオーバーラップがあり、治療も共通することがあります。

 

GERDの薬物治療の基本はプロトンポンプ阻害薬(PPI)です。薬物療法の他には、運動や食事療法など生活習慣の改善を指導することも重要です。

 

 

生活習慣記録自律訓練法前置式心理面談水氣道®を基本にすると、薬物療法の効果をさらに上げることができます。

 

FD症状を伴うときは消化管運動機能改善薬も用いられます。PPIで一度治癒しても中止すると再発率が高いため、維持療法も保険適応になっています。

 

 

再発再燃を繰り返すGERDで、8週間通常量のPPIを内服し、内視鏡で治癒を確認した後も、維持療法としてPPI(半量など)を継続します。

 

効果不十分時には増量が可能であり、必要に応じて継続投与ができます。

 

ただし、維持療法中止時期の判断は消化性潰瘍と同様に難しく、しかも基準となる十分なエビデンスもありません。

 

そのために、高円寺南診療所では、再発防止の手立てとして、水氣道®参加をお勧めしています。

 

 

また、内視鏡的に食道病変を認めないGERDを非びらん性胃食道逆流症(NERD)と呼んでいます。

 

治療には4週間の制限つきですが、PPIの投与が保険適応になっています。

 

 

2015年に日本老年医学会より「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」が発表され、H₂受容体拮抗薬は認知機能低下、せん妄を引き起こすリスクがあるため、可能な限り使用を控えることとされました。

 

マタ、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期維持療法における注意点が示されました。

 

 

参照:胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン改訂第2版(日本消化器病学会、2014

 

消化性潰瘍診療ガイドライン2015改訂第2版(日本消化器病学会)

 

EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン第2版(胃潰瘍ガイドラインの適応と評価に関する研究班、2007

 

H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2016改訂版(日本ヘリコバクター学会)