最新の臨床医学:呼吸器・アレルギー・膠原病学<肺血栓塞栓症>

今年は、立春を過ぎても、気候の変動が大きく、体調を崩す方が増えています。

 

 

昨日も、外国人の男性で右胸部の激痛を訴える方が来院されました。

 

血流分布の多い右下肺野に好発し、近年、増加傾にある病気として、肺血栓塞栓症があり、警戒しておかなければなりません。

 

 

すでに他の病院で心電図、胸部CT、血液検査その他の検査を受けましたが、異常なしとのことで、気休めに処方されたシップを右胸に貼っていました。

 

その病院も、心臓病や肺の病気を疑い、あるいは血栓などの血液の病気を疑ったのだと思われます。

 

 

高円寺南診療所を初めて受診される外国の方はインターネットによって、英語診療が可能かどうかを確かめてから来院される方が多いです。

 

この方も確認の後、予約をして来院されました。

 

この方は右の肋間神経痛であることが判明したため、肋間神経ブロックを施して、即座に痛みが緩和し一件落着しましたが、事前の限られた情報から、とりあえず予期しなければいけない疾患リストの中に、この病気がありました。

 

 

肺血栓塞栓症は、肺塞栓症や肺梗塞に関連する病態です。

 

この病気の症状は、無症状からショックに至るまで様々です。安静解除時や排便・排尿時の突発的な呼吸困難や胸痛、頻呼吸、動悸が本症を疑う出発点になります。

 

 

静脈血中に入った栓塞子(血栓、脂肪、腫瘍細胞など)が肺静脈を閉塞した状態が肺塞栓です。

 

この肺静脈閉塞によってその末梢領域が出血性壊死を来した状態を肺梗塞といいます。

 

 

この病気の治療は、呼吸循環動態を安定化させて、酸素を投与しながら、抗凝固療法(ヘパリンなど)を開始することからはじまります。

 

抗凝固薬は特発性肺動脈性高血圧症(IPAH)患者の生存率を改善しますが、他のタイプのPAHについては明確なエビデンスはありません。

 

可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に唯一の適応となる薬剤です。

 

 

参照:慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angiographyの適応と実施法に関するステートメント(2014年)(日本循環器病学会ほか)