最新の臨床医学:感染症学 <流行性耳下腺炎>

流行性耳下腺炎(ムンプス;おたふくかぜ)は2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症です。

 

通常1~2 週間で軽快します。

 

しかし最も多い合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎・卵巣炎(⇒不妊症)、難聴、膵炎(⇒1型糖尿病)などを認める場合があります。

 

 

先進国でムンプスワクチンが定期接種でないのは日本だけです。

 

わが国は任意接種であるため、ムンプスワクチン接種率は約30%と推定されています。

 

精巣炎や突発性難聴の増加が危惧されています。

 

2011年、日本小児科学会推奨のワクチンスケジュールにおいて、ムンプスおよび水痘ワクチンの2回接種が推奨されました。

 

 

流行性耳下腺炎およびその合併症の治療は基本的に対症療法です。

 

発熱などに対しては鎮痛解熱剤の投与を行い、髄膜炎合併例に対しては安静に努め、脱水などがみられる症例では輸液の適応となります。

 

効果的に予防するにはワクチンが唯一の方法です。

 

 

感染症法における取り扱い(2012年7月更新)

 

「流行性耳下腺炎」は定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週毎に保健所に届け出なければならない。

 

 

学校保健安全法における取り扱い(2012年3月30日現在)

 

「流行性耳下腺炎」は第2種の感染症に定められており、耳下腺、顎下腺又は舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止とされている。

 

ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りでない。

 

また、以下の場合も出席停止期間となる。

 

〇患者のある家に居住する者又はかかっている疑いがある者については、予防処置の施行その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。

 

〇 発生した地域から通学する者については、その発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間 ・流行地を旅行した者については、その状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間