最新の臨床医学:神経病学<認知症/アルツハイマー病>

認知症とは、一度正常に発達した知的機能が、後天的な脳の機能障害によって、持続的に低下することです。そして、それにともない日常生活、社会生活を営めない状態です。

 

 

さて、認知症の必須条件は、

①記憶障害、② 実行機能障害・失行・失認・失語など記憶以外の認知障害が少なくとも一つあること、③ 認知障害が病前の機能水準から著しく低下すること

 

 

いかがでしょうか。高円寺南診療所に通院してさらに水氣道や聖楽院の活動に参加している皆様は、社会生活を営めているので認知症は免れていることに確認できたことでしょう。

 

また、仮にその傾向が出現したとしても、早めに発見できるので早目の適切な対応が可能なので安心していただけるものと思います。

 

 

認知症の大半を占めるものには、変性によるものと、(脳)血管病変によるもの、それから両者の混合も見られます。前者の代表がアルツハイマー型認知症(広義のアルツハイマー病、以下AD)です。

 

 

ADは脳組織の老人斑と神経原線維変化が特徴です。それぞれアミロイドβ(Aβ)やリン酸化タウが過剰に沈着することが原因とされています。

 

 

ADの症状は、中核症状と周辺症状とに分けられます。

 

中核症状として、

 

①記憶障害、②遂行機能障害、③視空間認知障害、④言語障害、⑤人格変化・行動障害などがあります。

 

 

周辺症状として、

抑うつ、幻覚・妄想などの精神症状と、徘徊、暴言、暴力などの問題行動などの問題行動があり、認知症の行動・心理症状(BPSDと呼ばれます。

 

 

治療戦略としては、中核症状の改善、周辺症状の改善、これらに加えて病変の進行の抑制があります。

 

認知症高齢者での多剤併用は避けます。BPSDに対しては介護指導や療養環境調整などの非薬物的対応を優先するのが原則です。

 

しかし、幻覚・妄想、焦燥、攻撃性がある場合には薬物療法が必要な場合もあります。

 

抗認知症薬を検討しますが、効果が無い場合は漢方薬の抑肝散(ヨクカンサン)⇒気分調整薬⇒抗精神病薬などが適宜用いられています。

 

 

神経内科専門医の中にも東洋医学や漢方に偏見をもっている方が、残念ながらいます。

 

しかし、高円寺南診療所で抑肝散を処方することを非難する専門医は、現段階では存在しないと思います。

 

 

中等度以上のアルツハイマー型認知症には、コリンエステラーゼ阻害薬、メマンチン塩酸塩(メマリー®)、または両者の併用が推奨されています。

 

レビー小体型認知症には、ドネペジル塩酸塩(アリセプト®)が推奨されています。

 

 

抗認知症薬による治療の目的は、病状の進行を遅らせることにあります。

 

したがって、症状が悪化しなければ、薬が効いている証拠となります。

 

抗認知症薬は増量計画が添付文書で示されています。

 

増量が病状の悪化のためではないこと、増量時に悪心、下痢や眠気に加えて、興奮などの副作用も出現する可能性があることを患者さん本人やご家族に説明するようにしています。

 

参照:認知症疾患診療ガイドライン2017(日本神経学会)

 

 

<速報>

血液を使いアルツハイマー病と関係の深い異常たんぱく質「アミロイドベータ」(Aβ)が脳に蓄積していることを発症前に見つける手法を確立したと、国立長寿医療研究センターと島津製作所などのチームが本日、英科学誌ネイチャーで報告されます。

 

 今回開発された手法は、2002年ノーベル化学賞者田中耕一博士の質量分析技術を活用し、アルツハイマー病を「超早期に診断」する技術となる可能性があります。研究チームの金子直樹・島津製作所田中耕一記念質量分析研究所主任によると、今回の技術は血液中から「アミロイドベータ」(Aβ)に関連するペプチドを検出します。このペプチドは複数あって、それぞれ質量が微妙に違います。この特徴を利用し質量分析技術で異なるペプチドを正確に見分けるというものです。【朝日新聞Digitalより】