最新の臨床医学:血液学 < 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)>

溶血性貧血は赤血球寿命が短縮する代表的な病態です。

 

溶血性貧血の検査所見は、

 

 

①赤血球崩壊の亢進によるもの

 

(Hb濃度低下、血清間接Bil上昇、LD1,2上昇、AST上昇、尿中・便中ウロビリン体増加、血清ハプトグロビン低下)

 

なお、鉄、フェリチン、葉酸なども血清や血漿よりも赤血球内での濃度が高いため、溶血すると血清で高値となります。

 

 

②骨髄での代償性赤血球造血亢進によるもの

 

(網赤血球増加、骨髄赤芽球増加)

 

血清ハプトグロビン測定は感度が高く、溶血初期から極低値になるので早期診断に用いられます。ただし、重症度は反映しません。

 

溶血性貧血患者の血糖コントロール指標としてはグリコアルブミンが有用です。

 

間接ビリルビンは非水溶性なので尿中に排泄されないので尿ビリルビンは陰性です。

 

ヘモグロビンの尿中排泄、ヘモグロビンが変性したヘモジデリンが尿中排泄することにより、尿沈査をプルシアンブルーで染色すると陽性となります。

 

また直接ビリルビンを経ると、これは水溶性で尿中に排泄されるため、尿中ウロビリノーゲンの陽性化がみられます。

 

 

 

溶血性貧血の鑑別

 

①まず、直接クームス試験を行い免疫性か非免疫性かを鑑別診断する。

 

 

②クームス試験陽性であれば免疫性であり、

 

自己免疫性溶血性貧血(AIHA50%、

 

このうちの90%は温式AIHA

 

血管外溶血のため、脾腫

 

治療:

副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤(シクロスポリン、アザチオプリンなど)、ɤグロブリン大量投与、タンパク同化ステロイド、脾摘

 

冷式AIHA:寒冷凝集素症8%…寒冷凝集素価

 

発作性寒冷ヘモグロビン尿症2%…Donath-Landsteiner試験

 

 

③クームス試験陰性であれば非免疫性であり、

 

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH25%

 

 …フローサイトメトリー(補体制御蛋白CD55,CD59欠損赤血球)

 

⇒補体感受性亢進、血管内溶血汎血球減少血栓症

 

血管内溶血のため、ウロビリノーゲン尿、ヘモグロビン尿、ヘモジデリン尿

Ham試験(アシドーシスによる易溶血をみる検査)、砂糖水試験

造血幹細胞のPIG-アンカー遺伝子の後天性変異(PNHタイプ赤血球

 

GPIアンカー蛋白の一つである好中球アルカリフォスファターゼ活性低下を生じるクローン性疾患

 

溶血により遊離ヘモグロビンが一酸化炭素を強力に吸着すると、COの持つ平滑筋収縮作用を急激に阻害することにより、消化管が収縮し、腹痛・嚥下困難が出現

 

治療:

エクリズマブ(ヒト化抗補体C5モノクローナル抗体)

 

終末補体活性化経路阻害による溶血防止

 

先天性溶血性貧血(遺伝性球状赤血球症など)17%

 

…赤血球浸透圧脆弱性試験、自己溶血試験