日々の臨床 ⑦:12月30日土曜日

東洋医学(漢方・中医・鍼灸)

 

<急性熱性疾患:外感熱病の見方>

 

 

外感熱病とは、主症状として熱を発する外感病の総称です。外感病とは、病邪が外から人体に侵入して惹き起こされる病気です。

 

臨床的に重要な病邪は、寒の邪(寒邪)と温熱の邪(温邪)です。寒邪によって引き起こされる病気が傷寒、温邪によって引き起こされる病気が温病です。

 

 

一般に外感熱病では、疾患の進展に伴い、症状は刻々と変化していきます。

 

そして、すべての症状は病の発展段階のいずれかの時期を表現しているとするのが中医学や漢方医学の立場です。

 

そこで病状を正しく把握するために、現れている症状を体内に生じている病理学的変化と疾患の進展段階と関連付けて病状を理解する工夫が凝らされています。

 

この段階的変化はアナログですが、いくつかの典型的なパターンに分類して整理しておけば、直ちに適切な治療法が選択できるので実際的です。

 

こうした試みが外感病の症候分類です。

 

 

傷寒の症候分類(『傷寒論』張仲景、後漢時代)

 

臨床症状の変転をまず陰・陽に分類します。さらに陰・陽それぞれ3経に細分し、三陰三陽の六経に分類します。太陽⇒陽明⇒少陽⇒太陰⇒少陰⇒厥陰と変転するのが典型的な傷寒病理パターンです。

 

 

温病の症候分類(『温熱論』葉天士、清時代)

 

疾患の全過程を四つの証に分類します。疾患の全過程は、衛分証⇒気分証⇒栄分証⇒血分証とするのが典型的な温病病理パターンです。

 

また、呉鞠通の分類は、三焦に基づいて分類します。温病の全過程は、上焦症状⇒中焦症状⇒下焦症状とし、上焦に始まって下焦で終わると論じます。

 

 

以上、外感熱病を簡単にまとめましたが、現代西洋医学による外来診療は主として現症に主たる関心が払われる一方で、患者さんの今後の病状の変化については未知数として治療方針を決めます。

 

これに対して中医・漢方では独自の病態論を元に、今後の変化を予測しながら、より計画的な治療方針を選択できるという利点があると思います。

 

今現在で効く薬といえども、明日も効くとは限りません。中医・漢方は、患者さんの体質・気質に合わせるのみでなく、病態の変化を見据えながらタイミングよく最適の処方をする工夫が凝らされているといえます。

 

 

高円寺南診療所では、現代西洋医学と漢方医学を適宜組み合わせての処方を心掛けて30年を迎えつつあるところです。