日々の臨床③:12月19日火曜日<高血圧性心疾患の超音波検査>

一般内科(循環器・消化器・内分泌・代謝・栄養関連の病気)

 

< 高血圧性心疾患の超音波検査>

 

 

高血圧に伴う心臓病を高血圧性心疾患といいます。

 

高血圧の患者さんの診療に当たって大切なのは、高血圧によって心臓に障害が発生しているかどうかを確認することです。

 

高血圧は冠動脈硬化を促進する最大の因子です。

 

 

高血圧性心疾患は、心臓の左心室の形に変化が現れ、その働きも変化します。

 

つまり、左心室の壁の筋肉の肥大(左室肥大)と左心室の拡張が障害(左室拡張能障害)を主体とする病態です。

 

高血圧があると左心室に持続的な圧負荷がかかることによって左心室の筋肉の壁が内腔に向かって肥大します。

 

これを左室の求心性肥大といいます。この肥大が生じると左心室は広がりにくくなります。

 

これが左室拡張能障害の本態です。

 

 

心エコー図検査は簡便性に優れ、高血圧性心疾患のスクリーニングと経過観察に不可欠な検査です。

 

 

まず①左室肥大のチェックが必要です。

 

なぜなら、高血圧により左室肥大が進行するとともに心血管系の諸症状や障害が増加し、左室肥大が改善して退縮すると、それらが減少するからです。

 

つまり、左室肥大は高血圧の患者さんの予後を決定する重要な独立の因子であるということです。

 

またこうした高血圧性肥大心は常に心筋虚血(狭心症、心筋梗塞の原因)の危機にさらされているといえます。

 

たとえ心電図で左室肥大を認めない場合であっても、心エコー検査は不可欠です。

 

 

つぎに②左室拡張能の評価ですが、これは左室肥大と同様に重要です。

 

心電図で左室肥大を認めない場合であっても、左室収縮能や左室拡張能の評価が必要です。

 

 

また、メタボリックシンドローム糖尿病慢性腎臓病を伴う場合は、たとえ正常高値血圧であっても、リスクは中等度・高度なので、早期に心エコー図検査を用いたスクリーニングを行うべきであるとされます。

 

 

かつては心不全になるのは左室収縮能(EF)が悪い人だと考えられていました。

 

これはエコー技術が未発達で心不全に関連するような妥当な指標がEFしかなかったからです。

 

 しかし、近年になって心臓の収縮能力を示すEFには何も問題がないのに心不全になる患者さんがどんどん増えてきました。

 

このような人の左室拡張能を、現在の発達した心エコー技術を用いて測定してみたら心不全との関連が認められた、というわけです。

 

 

私はEFを重要視した考え方が中心だった時代の研修医だったので、左室拡張能の重要性が最初はピンと来ませんでした。

 

しかし、今後の循環器臨床では、心エコー検査で左室収縮能だけではなく、左室拡張能やその他の新たな指標を取り入れていかないと、なぜ心臓が悪いのかを判断できないということになり改めて勉強をし直した次第です。