日々の臨床③:12月5日 火曜日<胸痛への対処の仕方>

一般内科(循環器・消化器・内分泌・代謝・栄養関連の病気)

 

<胸痛への対処の仕方>

 

毎年この時期になると、胸が痛む、という症状の訴えが多くなってきます。

 

 

胸痛を訴える患者さんに対しては、まず緊急処置を必要とする状態かどうか、という判断が大切です。

 

ただし、近年では日本全体が超高齢社会となり、また糖尿病患者も増えているため、痛みの程度が軽かったり、通常であれば明確な痛みが出現するようなレベルの病態であっても痛みに気が付かなかったり、というケースも増えてきたため、軽い胸痛でも油断はできません。

 

 

胸痛をきたす可能性のある病気は、症状経過を丹念に聴取すると鑑別できることが多いです。

 

そのため、痛みの部位の他に、強さ、持続時間、随伴症状、誘因など細かな情報収集が必要です。

 

急激に発症した激痛であれば、心筋梗塞、狭心症、急性肺動脈塞栓症、急性大動脈解離などを念頭におきながら心電図、心エコー検査、胸部X線検査などを迅速に行っています。

 

 

高血圧や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの家族歴、これらの病気の原因となる冠状動脈硬化症の危険因子の問診、喫煙歴などの情報が特に大切です。

 

 

また、定期健康診断の結果を持参していただくこともあります。

 

高血圧、脂質異常症、糖尿病の有無や治療歴の確認も不可欠です。

 

動脈硬化が原因となる脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの病気の有無のチェックも大切です。

 

頚動脈エコー検査も不可欠な検査になりつつあります。

 

 

それでは、高円寺南診療所で対応している胸痛の原因疾患として多いものは何かをご紹介します。

 

第1位:

神経・運動器疾患(変形性頚椎症、胸郭出口症候群、肋間神経痛、骨粗しょう症、リウマチなど)

 

第2位:

心身症性疾患(不安発作、心臓神経症、うつ病)

 

第3位:

消化管疾患(消化性潰瘍、逆流性食道炎など)

 

第4位:

肺疾患(胸膜炎、気胸など)

 

第5位:

心疾患(重症高血圧、狭心症、重症貧血による心不全など)

 

 

このように振り返ってみると、胸痛=心臓病⇒内科・循環器内科といった単純な図式でないことがわかります。

 

ちなみに第1位は内科・神経内科、リウマチ科もしくは整形外科

 

第2位は内科・心療内科もしくは精神科、

 

第3位は内科・消化器内科、

 

第4位は内科・呼吸器内科もしくは呼吸器外科

 

第5位になってはじめて内科・循環器内科の登場です。

 

 

つまり、胸痛のために最初から循環器内科専門クリニック、もしくは総合病院の内科循環器科を受診したとしても、多くの場合、

 

<心臓には問題はありません>というコメントを貰うだけで、適切な診断、ましてや治療に辿り着けないまま、呼吸器内科を受診して・・・、ということになるのではないでしょうか。

 

 

高円寺南診療所は、決して総合病院の替りはできません。

 

しかし、統合医療を実践することにより、初診の段階で何らかの方向性と治療に関する何らかの有益な示唆を患者さんに提供することにより、不必要なドクターショッピングを減らすための努力を続けてきました。

 

この点に関しては、すでに30年近い実績があります。