「臨床医としての腕を磨くのであれば、高円寺で開業するに限る。」

 

とことあるごとに私が表明してはばからない理由は、分類不能な患者さんに恵まれているからです。

 

分類不能な患者さんとは、自分がどこに行ったらまっとうな診療を受けられるかわからずに彷徨っているような患者さんです。

 

これらの患者さんをあえて3群に分類して紹介してきました。

 

これを再掲してみます。

 

 

タイプA:自分の悩みが病気に該当するのかどうかがわからない、というタイプ

 

タイプB:自分の病気の相談窓口かどこなのかがわからない、というタイプ

 

タイプC: 自分の健康上の問題点を複数抱え込んでいて、どこから手を付けてよいのかがわからない、というタイプ

 

 

今回は、タイプCについて検討してみたいと思います。

 

 

タイプCは、タイプAやタイプBとはことなり、すでにご自分の健康問題に気付いていらっしゃる皆様です。

 

このタイプにも、いくつかのサブ・タイプがあります。

 

 

タイプC1:

いわゆる我慢型。すでに健康上の不具合が生じていたにもかかわらず、放置しているうちに、次第に悪化し、さらに新たな病気を併発したため、どこから手を付けてよいのかわからないというタイプ

 

⇒とにかく、継続して通院可能な主治医を見つけてください。

 

初回の受診のみで解決してくれる医療機関を見つけることはとても難しいことです。

 

主治医と相談して、検査計画や治療計画を立案して、段階的に問題解決していかれることをお勧めします。

 

 

タイプC2:

いわゆる気休め型。 自分の健康上の問題点を複数抱え込んでいて、そのときどきで一番気になる自覚症状に対してのみ受診するというタイプ

 

⇒ これは、発作性の病気を持つ方に多いようです。

 

頭痛、めまい、喘息、痛風、狭心症、胆石などいずれにしても、発作が治まれば事足れり、として健康管理を中断することはとても危険なことです。

 

こうしたタイプの患者さんの「お陰様で完治しました。」という思い込みの報告ほど危ういものはありません。

 

 

タイプC3:

いわゆるドクターショッピング型。自分の健康上の問題点を複数抱え込んでいるため不安が募り、健康や医学情報に振り回された結果、いろいろな医療機関を転々とし一貫した治療を継続できていないタイプ

 

⇒複数の病気に対して、病気ごとにインターネット等でマスコミ名医を検索し、別々の病院の別々の科を受診し、

 

おまけにすべて門前薬局で処方薬を受領している上に、お薬手帳も別々、という有様の方がしばしば受診されます。

 

すでに20種類以上の処方を受けているにもかかわらず、減薬には応じず、良く効く新薬を出して欲しいと頑固に要求されるようなタイプも混じっています。

 

健康管理は総合的に行うべきでしょうが、大病院志向・超専門医志向・有名医志向の患者様は、容易に耳を傾けてくださいません。

 

 

タイプC4:

超高齢初診型。90歳を超える超高齢者で、これまで主治医を持たずに済むほど元気で過ごしてこられたような方。

 

とくに住民健診も全く受けたことが無く、何らかのご家庭の事情で、急に老後が心配になって来院するタイプ

 

 

仮に老後を65歳とすると、四半世紀以上に亘って自分が老後の人生を送っているという自覚と覚悟がなかったという方に多いようです。

 

⇒ 本人の思い込みとは甚だしく異なり、心身共に複数の慢性疾患に侵されているケースが少なくありません。

 

家族とのトラブルや、ご近所や社会に対する不満が募り、その矛先をたまたま目の前で耳を傾けようとしている医師にぶつけたりされます。

 

一見しっかりされているようで、部分的に認知症を思わせる言動があったりします。

 

このような方が、ご近所であればいざしらず、通院困難な遠方からわざわざお見えのことがあります。

 

その場合は、なるべくご近所で、継続的に通院可能な医療機関を探していただくようにアドヴァイスします。

 

早晩、要介護となる可能性が高いので、往診や在宅診療の実績がある医療機関を選んでいただくことが肝要であることをお伝えするようにしています。

 

 

このタイプCを細分して、個別に説明するだけで、骨が折れます。

 

しかし、これが日常診療の実情なのです。

 

こうしたケースを想定してトレーニングを受けていない総合病院の総合診療部門の担当医師は、相当なジレンマをかかえるであろうことを同情します。

 

診療所の限界があるように、総合病院の限界もあるということに気づかなければ、路頭に迷う患者さんが増える一方だと思われます。

 

 

ロコモティブ・シンドロームやフレイル・シンドロームあるいは認知症といった超高齢社会に対して介護力強化はまだまだ必要だと思います。

 

しかし、高円寺南診療所は、往診にも在宅医療にも手を広げていません。

 

高円寺南診療所の方向性は、自律と自立、共同体参加と社会貢献による介護予防にあるからです。

 

水氣道®や聖楽院活動は、こうした方向性の中から少しづつ体系化されつつあります。

一般内科(循環器・消化器・内分泌・代謝・栄養関連の病気)

 

<いまさら聞けない?高血圧症の話>

 

 

高血圧症は、患者数の最も多い生活習慣病です。

 

それにもかかわらず、この日々の臨床のコラムでは初登場です。

 

それはなぜかと自問してみるとすぐに答えが浮上してきました。

 

つまり、高円寺南診療所では、高血圧を主訴に初診で来院される方がほとんどいないからです。

 

高円寺南診療所が風変わりな診療所だからでしょうか?

 

否、どうやらそうではないようです。

 

 

一般的に、高血圧診療における大きな課題として、まず、降圧治療を必要とする患者群の約半数が治療を受けていないこと、

 

つぎに、治療を受けている患者群の約半数は降圧目標を達成できていないこと、

 

さらに、急速な高齢化により、加齢関連の高血圧が懸念されていることも挙げられています。

 

 

わが国の高血圧人口は4,000万人を超えると推定されていますが、以上の基本情報を元に、概算すると、

 

高血圧症の患者さんで適切な血圧管理ができている人は4人に1人、つまり1,000万人、

 

これを裏返せば4人のうち3人、つまり3,000万人までが適切な高血圧管理ができていない、ということになりそうです。

 

 

ところで、高血圧は脳血管疾患、心疾患、腎疾患の主要な危険因子です。

 

塩分摂取の多い食生活の改善は今後とも推進していかなければなりません。

 

さらに、血圧管理を取り巻く環境として、内臓脂肪、運動不足などに起因するメタボリックシンドロームや糖尿病は急激に増加しています。

 

また、慢性腎臓病も増加しています。

 

 

高血圧での受診が少ない理由の一つは、高血圧が無症候性、つまり自覚症状がない病気だからではないかと考えます。

 

<痛み、痒み、悩みの三み一体?>での相談に応じている高円寺南診療所での永年の課題は、自覚症状のない病気に対するアプローチの仕方です。

 

高血圧は無症候であるため長期間にわたって徐々に病態が進展することで主要臓器の機能障害をもたらすため、その対策の徹底が望まれます。

 

 

平成元年に開院して以来、ご近所での救急車のサイレンの音を頻繁に聴くにつけて、診療所周辺の住民の皆様の健康意識の水準を心配していました。

 

脳卒中や心筋梗塞、急性心不全のように、突然の合併症をもたらすことが少なくないのも高血圧の恐ろしさの顕れです。

 

 

それでは、高血圧症はどこを受診したらよいでしょうか。

 

内科循環器科(循環器内科)というのが一応の答えになるかもしれません。

 

循環器内科を受診しているような高血圧患者さんは比較的健康管理意識の高い方々ではないかと思います。

 

あるいは、難治性の高血圧などの方も受診されていることでしょう。

 

それでは日本の人口の3分の1にも上る高血圧を循環器内科専門医だけで対応できるでしょうか。

 

実際は、内科を標榜している医療機関であれば、どこでも高血圧に対応してくれるはずです。

 

 

高円寺南診療所の高血圧患者さんに多いタイプは、他の医療機関ですでに降圧治療を受けておいでの方です。

 

全国的な傾向と同様、降圧治療を受けている方で、何とか血圧管理ができている方は半数以下で、管理不十分な方は過半数を占めます。

 

その理由は、心身のいずれかに不調を来すと容易に高血圧を悪化させ、通常の薬物療法のみでのコントロールが難しくなるからだと思います。

 

こうしたタイプの方も、きちんとした全身管理やストレス管理をすることにより、降圧治療の効果が表れ始めることが少なくありません。

 

水氣道に継続して参加されている方は、すでにお気づきの事とは思いますが、稽古前の血圧測定で明らかな高血圧の方は、ごく少数です。

 

そして、そんな方も稽古後の再測定では、血圧が正常化していることを確認していると思います。

 

 

その他のタイプについてリストアップし、簡単なコメントを加えてみました。

 

 

①初診時の血圧測定で、はじめて高血圧が判明した(気づかず型)

 

⇒ これからは、血圧測定の習慣を身につけましょう。

 

 

②健診で高血圧を指摘されたが、困らないので放置してきた(軽視型)

 

⇒ 高血圧について、一緒に勉強していきましょう。

 

 

③自己負担が軽減される年齢まで受診を控えてきた(節約型)

 

⇒ 節約するならタバコ代、酒代、賭け事の費用、ご自分の寿命を節約するのは得策ではありませんよ!

 

 

④高血圧を指摘されると、不快感・不信感を露わにし、

 

何度も血圧を測定し直し、少しでもましなデータを得ようとする(否認型)

 

 

⇒ 現実を謙虚に受け入れることから健康管理がはじまります。

  

頑なさは認知症の始まりかも?・・・要注意です。

総合医療・プライマリケア

 

<いまさら聞けない?風邪症候群の話>

 

 

「先生は何科のお医者さんですか?」

 

これ、あいさつ代わりに良く尋ねられる質問です。

 

<内心では何科でもいいじゃないか(内科)!>と感じながら、

 

「いちおう内科です。」と答えたりするのです。

 

 

いちおう、と言ってしまうあたりが素直でないと自分で反省します。

 

それでも、よく若者同士の合コンなどで、出身大学を尋ねられて「いちおう東大ですが。」と答えるときの気分とはかなり違っているようで、少し似ているところがあるかもしれません。

 

 

なぜ、いちおう、と言ってしまうのか。それは、質問者のその後に予想されるリアクションなり、やり取りが気になるからです。

 

 

なぜ、医者はただの医者ではいけないのでしょうか。

 

 

たとえば相手が弁護士であれば、「何科の弁護士さんですか」と尋ねる人はいるでしょうか。

 

せいぜい「民事系ですか刑事系ですか」と尋ねる人はいてもおかしくはないでしょうが、これもわかった風な素人さんの質問のようでうっとおしそうです。

 

 

「いちおう内科医です。」と答えると、次はこうです。

 

「そうですか。そしたら風邪ひいたら診てもらいますね。」このパターンが70%強です。

 

このような挨拶を受けて喜ぶ内科医を私は知りません。

 

本物の臨床医は決して風邪を軽く扱いませんが、内科医の役割をご存じない素人さんは明らかに軽く見ています。

 

次に多いのは「内科でしたら、何が専門ですか。」という御質問です。

 

 

内科医はただの内科医ではいけないのでしょうか。

 

そこで私は「ただの内科医ですが、何か?」と答えても良いのですが、気が小さいのでそこまでの勇気はありません。

 

「はい。アレルギー、リウマチ、東洋医学と心療内科の専門医です。」と馬鹿正直に答えると、

 

今度は少々呆れ顔で「随分、幅広く、手広くやっておいでですね。」といったお返事を賜ります。

 

 

おそらく内科の診療所の外来で最も多いものが、風邪症候群(以下、かぜ)とされています。

 

高円寺南診療所では、心療内科が前面に出ていた頃は、半年以上も全くかぜの患者さんが受診されないこともありました。

 

その代り、精神科の先生に出禁になった、予約を待てない、おまけに金もない、といったタイプのパーソナリティ障害(人格障害)の方が大挙して受診され、たっぷりと一生分の人生勉強をさせていただいたこともあります。

 

心療内科専門医は内科医の資格が無ければなれないのにもかかわらず、かぜすら診れないメンタルドクターという誤解を受けているのは明らかでした。

 

専門医志向、大病院志向、しかも専門性を理解していない受診者が大半だとすると、この国の医療に明るい未来はあるのだろうか、という自問自答の日々もありました。

 

 

さて、本題の戻ります。かぜ、恐るべし!です。

 

高円寺南診療所のかぜ診療のポイントは、

①かぜの鑑別、

②アレルギー合併の有無の確認、

③抗菌薬使用の適応、です。

 

 

かぜを鑑別するには、田坂の分類というものがることを、実は、最近知りました。

 

そして、改めて納得できたのは、私自身がまとめた分類とほぼ同じであるということです。列記してみましょう。

 

 

1)非特異性上気道炎型(ウイルス性)

 

2)鼻炎型(急性鼻・副鼻腔炎型)大半はウイルス性、アレルギー性鼻炎の合併も少なくない

 

3)咽頭炎型(急性咽頭・扁桃炎型)ウイルス性が多いが、細菌性も

 

4)気管支炎型 90%以上がウイルス性だが、気管支喘息の合併も

 

5)高熱のみ型(インフルエンザ型)敗血症の可能性もあるが、安易な抗菌薬投与はむしろ厳禁

 

6)微熱・倦怠感型(急性・慢性)肝炎、心内膜炎、膠原病、甲状腺炎、悪性腫瘍、心身症・精神疾患等

 

7)その他 発疹型、急性胃腸炎型、髄膜炎型、関節痛型、等

 

 

いかがでしょうか。抗菌薬を必要とする病態は細菌感染によるものですが、

 

ほとんど抗菌薬が効かないウイルス性、アレルギー性であるため、抗菌薬の使用機会はかなり限定されます。

 

もう一つ、かぜはまさに万病の元でありますが、アレルギー専門医にしてリウマチ専門医であることが、かぜの診療に以下に役立つかはご理解いただけるのではないでしょうか。

 

また、抗菌薬が無効なウイルス性のかぜのほとんどに漢方薬は役にたつので東洋医学・漢方の専門医でもあることは自信につながりました。

 

さらに、心因性のかぜ(心のかぜ)というのも存在するので、心療内科専門医としての力量も発揮できて良かったと思います。

<変えられていないこと②>

 

 

前回の続きです。

 

変えられていない事は、

 

①思い込みで動く

 

②都合のよい方に考える

 

③報告・連絡・確認・相談(ほうれんそう)で、

伝えにくい報告が遅くなりがち

要点を伝えるのが下手

 

④同じようなミスを繰り返しがち

 

といった所でした。

 

 

あれ?生まれ変わってない?どうした?

 

という訳で検討していきます。

 

 

まず①②、「自分の都合を優先する」というイヤラシイ思考が抜けていません。

 

自分の都合というのは、

 

「波風立てずに平穏無事に過ごしたい。」

 

「自分さえ無事ならそれで良いのだ。」

 

「今、何とかなればそれで良い。」

 

 

というNogucciの考え3本柱が浮かび上がってきます。

 

 

そういった意味でも、③、④も繋がっています。

 

 

「その場をやり過ごしてしまえば何とかなるかも?」

 

「取り繕ってなんとしちゃえ」

 

「黙っていれば…」

 

「上手く誤魔化せば…」

 

 

と昔の悪Nogucciがささやきかけます。

 

そんな自分と戦っています。

 

少しずつ変えられてはいますが、油断するとすぐに足をすくわれてしまいます。 

 

 

次回は自分の思考パターンの克服について、考えてみます。

 

 

<次回予告>

生まれ変わったNogucci、

しかし、悪Nogucciが戻って来いとささやく、

対抗する手段はあるのか?

 

キーワードは<考え方を変えてみる>

》往く週《 11月1日:第31回聖楽院週例コンサート(60分プログラム)

 

 

担当ピアニスト:鈴木 美穂 (聖楽院特任ピアニスト)

 

 

この回をもって、水曜ミニサロン・コンサート初回から101回目、発足3周年目に突入しました。

 

そこでこの回は、水曜ミニサロン・コンサートの原点に戻り、シンプルに親しみのある演奏を心掛けました。

 

とは言っても、聖楽院週例コンサートは、かつての水曜ミニサロン・コンサートから大きく発展し、

 

オープニングでは今月のテーマとなる聖歌、シューベルトのアヴェ・マリア、ピアノ伴奏により、冨士田紗季のバリトンサックスで旋律を奏でてもらいました。

 

はじめての試みのため、不慣れな点はご勘弁いただくとして、今後もこの形を踏襲していくことにより、聖楽院コンサートの特色を表現していきたいともいます。

 

 

第一部は小倉百人一首で歌うシリーズ2曲が定番となりました。今年の前半でコンコーネ50番を歌い上げ、後半からはトスティ50番に入り、それも、はや30番台です。

       

No.33 藤原道信朝臣<明けぬれば暮るるものとは知りながら>

       

No.34 源兼昌<淡路島通ふ千鳥の鳴く声に>

 

 

この34番の曲は、日本人の心の琴線に触れるタイプの旋律であり、源兼昌の情趣に満ちた歌の世界の視覚化を促してくれるものと感じていました。

 

<淡路島 通ふ鳥の鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関

 

荒涼とした冬の夜の須磨では、海向かいに見える淡路島から千鳥が渡ってくる。 その寂しい鳴き声に、関守は、幾夜も眠りを妨げられ目覚めてしまうことであろう。

 

真夜中に、こうして過ごしている自分の孤独な境遇は、まさにこのようなものだ。

 

鑑賞:飯嶋正広 

 

 

この曲の演奏を聴いてくださっていた森様(さる高名な画伯の孫)という常連のお客様が「懐かしい光景が目に浮かんできました」と仰いました。

 

 

彼は神戸市須磨千守町の御出身で、そこはしばらく空き家になっているとのことでした。

 

この地名は、まさに兼昌の歌に因んで名づけられたのではないかと思える位に、地名の漢字四文字が歌われています。

 

ただの偶然でしょうか。偶然であるとしても、お客様がこのように感じてくださったことは、大きな喜びでありますし、益々精進したいという意欲を与えていただきました。

 

 

その後の演奏は、鈴木美穂のピアノ演奏、なつかしの日本歌曲など、演奏者同志、お客様との対話を交えながらのアットホームなコンサートになりました。

 

特に、日本歌曲の九十九里浜(作詞:北見志保子/作曲:平井康三郎)は、音海店主の片野匡博さんからも、情景が生き生きと心に映ってきました、とのご感想をいただくことができました。

 

ささやかながら、とても有意義な時間をお客様と共有できたという大きな感謝に包まれています。

 

 

 

来る週11月8日:第32回聖楽院週例コンサート(60分プログラム)

 

担当ピアニスト:齋藤亜矢子(第2週先任ピアニスト)

 

 

斎藤さんとの稽古は久しぶりです。

 

ですからコンサートでも、皆様に新鮮な演奏をお届けしたいと考えています。

 

齋藤さんは、伴奏ピアニストとして専門的なキャリアを積んでこられて、聖楽院でもピアノ伴奏科主任としてご活躍いただいております。

 

これまで、課題としながらもなかなか実現できなかったかドイツリートのレッスンも、彼女の御蔭でレパートリを拡げることができ、ベルリンやウィーンでも披露することができました。

 

特に、最近はシューベルトのチクルス『美しき水車小屋の娘』では根気強くお付き合いくださいました。

 

この曲は全部で20曲なのですが、一気に歌いきることは現在の私の力量ではすこぶる至難の業です。そこで、

 

 

まず10曲ずつをご披露させていただくことにしました。

 

 

斎藤さんのピアノ演奏は3つの名曲をお届けします。

 

ノルウェー出身でイプセンの戯曲、組曲「ペールギュント」で有名な<北欧のショパン>とも称せられるグリークとスウェーデン系でフィンランド出身、交響詩「タピオラ」を生んだシベリウス、いずれも北欧の作曲家の作品です。

 

齋藤さんはドイツ留学組のお一人ですが、彼女のピアノの世界には、しばしば北欧三国の繊細な風光や景色が反映しているかのように感じられます。私は、いまからとても楽しみにしています。

 

 

<今後の外部演奏会の予定>

 

11月5日(日)バロック・アンサンブル<アジア・コレギウム・ムジクム>

 

チェンバロ奏者として荻原由実(聖楽院協力ピアニスト)が出演します。

 

どうぞよろしくお願いいたします。

 

場所:青山学院大学のIVY HALL (アイビーホール)5F / GLORY CHAPEL(グローリーチャペル)

 

〒150-0002 東京都渋谷区渋谷4丁目4番25号

 

開演18:15 開演18:30

 

 

11月23日(勤労感謝の日)第1回聖楽院レッスン生内部発表会

 

第一部のレッスン生発表会は無料です。

 

第二部の指導者コンサート(ソプラノ小松奈津子、テノール藤原拓海、フルート八木華沙璃)プログラムを添付いたします。

 

 

12月3日(日)Le Salon de Clavier コンサート(午後の音楽会事務局主催)

 

フルーティストとして西巻有希子(聖楽院協力フルーティスト)が出演します。

 

13:30 開場 14:00 開演 JR 田端駅北口より徒歩7分

 

入場料 ¥2,000 (全席自由)

 

ご予約・お問い合わせ yukiko.nishimaki.flute@gmail.com (西巻)

 

 

12月24日(土)音楽之友社ホール(神楽坂)

 

17:50ベルタガラ・クリスマスコンサート

 

<及川音楽事務所主催>にテノール飯嶋正広が出演します。ピアノ伴奏:向阪由美子

 

私の本番の演奏時間は19:05-19:20の予定です。

 

クリスマス・イヴの夜に皆様の御健康と世界の平和を願って、

 

ラテン語、イタリア語、フランス語、ドイツ語 そして 母国語で歌います。

 

演奏曲目:C.フランク作曲 / 天使の糧(Panis Angelicus)

     T.ジョルダーニ作曲 / 愛しい女よ(Caro mio ben)

           G.フォーレ作曲 / リディア(Lydia)

     F.シューベルト作曲 / 音楽に奇す(An die Musik)

     平井康三郎作曲 / 平城山

 

 

チケット¥3,000(全席自由)

 

 

 

2018年1月28日(日)タカギクラヴィア松濤サロンコンサート(及川音楽事務所主催)に出演予定、演奏曲目、ピアノ伴奏者未定

 

 

2018年2月25日(日) タカギクラヴィア松濤サロンコンサート(及川音楽事務所主催)に出演予定、演奏曲目、ピアノ伴奏者未定

 

 統合医学(東西医学、代替・補完医療)

 

< 糖鎖(とうさ)とは何か?>

 

 

最近、高円寺南診療所の事務長は<糖鎖>の人体実験中です。
(人体実験とは、他に有効な治療や服薬などをせず、それだけの効果を確かめています。)

 

事務長と言っても彼女は薬剤師であります。

 

しかも、オリゴ糖の合成に関する研究で修士号を得て、さらに米国へ留学する予定だった頃に、当時虎の門病院の研修医だった私と出会ったのでした。

 

今では診療所の窓口を手伝うオバサンになってしまったのだから、私の責任も相当大きいことは間違いありません。

 

私が診断した線維筋痛症患者第一号の彼女が言うには、糖鎖を服用すると、起床直後の激痛の継続時間が短くなった、とのことです。

 

 

残念なことに、糖鎖なるものが、なぜそれほどまでに痛みに効くのか私には皆目見当がつきません。

 

そこで、こっそりと下調べをはじめてみることにしました。

 

 

人体は約60兆個の細胞でできています。その細胞ひとつひとつの表面を、産毛のように覆っているのが糖鎖です。

 

糖鎖とは、人体を構成する全ての細胞をつなげる役割をする物質です。

 

「糖鎖」は、様々な糖(単糖)が鎖のようにつながってできている物質です。

 

 

この糖鎖は、体内で主に次の3つの働きを担っています。

 

〇自己防衛機能(免疫力)

 

〇自己修復機能(正常に戻ろうとする力)

 

〇自己調整機能(現状を維持する力)

 

 

最近の研究で、糖鎖が正常に働けば、体に元々備わっている自然治癒力や免疫力が充分に発揮され、自家製の薬として働き、病気にかかるリスクが減ることがわかってきました。

 

反対に、糖鎖に異常が起きたり、劣化したりすれば、それは病毒となり、たちまち様々な病気を作り出してしまいます。

 

つまり、糖鎖の構造が解明されれば、ほとんどの病気が治る可能性が高い、とまで考える人たちがいるそうです。

 

たしかに糖鎖の構造や働きが少しずつわかるにつれて、病気の原因や生命活動の仕組みも解明されていくことでしょう。

 

 

高血圧、脂質異常症、糖尿病、痛風などの生活習慣病にとどまらずガンや心臓病、アレルギー疾患が昔に比べ、現代人に増えているのはなぜなのか、まだ解明されていません。

 

 

まずは、アレルギー専門医の視点から糖鎖を検討します。

 

 

アレルギー疾患は国民病とも呼ばれるまで増加してきました。

 

特に子供に多く発症しているのは、アトピー性皮膚炎と気管支ぜんそくです。

 

成人になっても社会生活に支障が出るほどの重症患者がいます。

 

しかし、アレルギーもアトピーも、治療によるコントロールは以前に比べて容易になってきましたが、一般的には根本原因が不明とされ、根治する治療法も確立されていません。

 

 

そもそも、アレルギー症状はなぜ起こってしまうのか?

 

それは、外来の環境物質を有害な異物として認識し、体外に排泄しようとする働きを強めてしまうためです。

 

例えば、アトピー性皮膚炎などでは、体内にアレルゲンが侵入すると、その部分の血流を増やし、アレルゲンを薄めるようとする反応が起こり湿疹を生じさせます。

 

一方、気管支ぜんそくでは、アレルゲンをシャットアウトするために、反射的に気管を収縮させ、強い息で吐き出させようという過剰な反応が起こり、それが発作をもたらします。

 

 

どちらも不快な症状ですが、根本的には、アレルゲンから体を守ろうとする治癒反応であるということです。

 

アトピー性皮膚炎などへの対処としては、抗ヒスタミン剤、抗セロトニン剤、抗ロイコトリエン剤、ステロイドホルモン、消炎鎮痛剤などが使用されています。

 

これは病気を根本から治すものではなく、あくまでも対症療法です。

 

 

それでは、糖鎖はアレルギーやアトピーなどの疾患と、どのような関係があるのでしょうか?

 

糖鎖には粘膜を丈夫にし、好酸球(白血球の一種)の働きをコントロールする働きがあるようです。

 

そうだとすれば糖鎖が正常に働けば、過剰なアレルギー反応が抑えられ、症状の緩和も期待できそうです。

 

そこで、今後は上記下線部に関連する更なる研究成果が期待されます。

 

 

次に、リウマチ専門医の視点から糖鎖を検討します。

 

関節リウマチは30代から50代の女性に多く見られる膠原病の代表的疾患です。

 

手、腕、足、膝の関節で左右対称に炎症が起きて腫れ、痛みを伴います。症状が悪化すると、症状が悪化すると関節の動きが悪化し、変形することもあります。

 

 

関節リウマチは、ストレス→免疫抑制→パルボウイルスや風邪ウイルスの増殖→顆粒球過多→関節破壊→慢性化のプロセスで発症につながるとする説があります。

 

このとき関節炎を起こす顆粒球は、炎症の発生箇所で直接作られています。

 

 

関節リウマチは自己免疫疾患とも呼ばれ、免疫力が過剰なために自己を攻撃してしまい、発症する病気と考えられています。

 

近年の研究により、免疫力抑制状態で発症していることがわかってきました。

 

 

それにもかかわらず治療には免疫抑制剤やステロイド剤など免疫力を極力抑制する薬が使用されていることがジレンマになっています。

 

 

さて関節には「骨と骨を繋ぐ」「骨格が動くようにする」「姿勢をしっかり保つ」の3つの役割があります。

 

そして関節包という膜で包まれた関節の内側は、滑り易い膜(滑膜)で覆われています。

 

滑膜は関節を滑らかに動かすための関節液の分泌や、関節に栄養分を供給する働きをします。

 

 

ところが、滑膜がひとたび炎症を起こし、炎症性の情報伝達分子インターロイキン6を過剰分泌してしまうと、糖鎖と結合し血液内皮増殖因子(VEGF)を分泌させてしまいます。

 

それによって本来なら必要のない多くの血管が作られ、それらが酵素と栄養分を吸収して滑膜が成長・増殖していきます。

 

 

その後、滑膜からインターロイキン6を多く含む潤滑液が放出されると、血流に乗ってやってきたマクロファージが滑膜の中に入り込みます。

 

そして、線維芽細胞の働きで破骨細胞へと変身し、骨を溶かし関節を破壊してしまうのです。

 

 

この一連の流れを止めるために、2008年に登場したのが、抗体医薬(アクテムラ)です。

 

抗体を患者に注射し、その抗体を患部の細胞膜表面などの糖鎖に結合させてインターロイキン6の結合を阻止するというものです。

 

 

この方法によって、従来の抗炎症薬、抗リウマチ薬、ステロイド剤などでは果たせなかった関節リウマチの進行をほぼ完璧に食い止められつつあります。

 

しかし、糖鎖内服が有効かどうかについては、判断できる段階にはないと思います。

 

 

アレルギー・リウマチを専門とする内科医の視点から

 

癌は、男性の2人に1人、女性の3人に1人が発症しています。

 

発癌の主な原因として、発癌物質の他、生活習慣の乱れによる精神的・身体的ストレスも原因のひとつと考えられます。

 

 

アレルギー・リウマチ疾患は免疫異常を伴っているので、専門医としては、つねに癌を忘れずに診療しています。

 

 

治療法としては、手術、抗がん剤療法、放射線療法がありますが、どの方法でも、すでに免疫力が低下している患者の免疫力をさらに低下させるリスクがあり、

 

完治したかに見えても、数年で再発してしまったというケースを少なからず経験します。

 

 

さて癌になると糖鎖の構造が変化し、正常な細胞間コミュニケーションが障害されます。

 

癌化した細胞の糖鎖は、正常細胞とのコミュニケーションを絶ってしまいます。

 

それによって、無制限にがん細胞を増やしてしまいます。

 

また、癌化した糖鎖は細胞からはがれやすくなり、血管に浸潤して転移していきます。

 

 

癌化が起こると、糖鎖にも異常な変化が現れ、それが癌細胞の転移の原因にもなってしまうことは理解できますが、その逆に、癌細胞を正常糖鎖で覆うことは可能なのかは疑問があります。

 

もしそれが可能であれば癌を覆転移を食い止めることは期待できると思います。

 

 

人間の体には、本来癌を防ぐ機能が備わっています。

 

癌細胞を発見し、攻撃細胞に命令を出して、癌細胞を撃退するのも、糖鎖の役割です。

 

しかし、糖鎖構造栄養素が体内に十分に補充すれば、糖鎖が正常に働くのでしょうか。

 

つまり、免疫細胞が的確にガン細胞を発見し、情報伝達物質インターフェロンも活発に分泌するようになるのかどうかの検討は必要でしょう。

 

 

攻撃細胞のNK細胞やT細胞の糖鎖も正常を維持できれば、インターフェロンに迅速に反応し、ガン細胞を確実に駆遂するようになるでしょう。

 

 

以上より、糖鎖の基礎研究は、今後の医学の画期的な進歩に繋がることは間違えなさそうです。

 

しかしながら、この糖鎖を食品として摂取して、ただちに現行の薬剤以上の効果を期待できるのかどうか、疑問は残ります。

 

事務長に学術データや文献など、更なる情報収集を依頼することにします。

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「外関(がいかん)」です。

 

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場所は手首の関節の背面にある横紋から指2本分のところにあります。

 

 

「手指の疼痛」「肘・腕の屈伸困難」「ぎっくり腰」「頭痛」「片頭痛」「耳鳴り」等に効果があります。

 

 

ぎっくり腰に効果があるなんて不思議ですね。

 

 

<参考文献>

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

東洋医学(漢方・中医・鍼灸)

 

<血(けつ)とは何か?>

 

血とは何かを理解するには、血の働きを説明させていただくことが便利です。

 

血は全身を巡り、五臓六腑ならびに諸組織を栄養・滋潤する作用を持っています。

 

 

最初に、中医学的な表現でご紹介しますので、少しわかりにくいかと思いますが、それと並行して現代医学的に解説いたしますので、少しだけ辛抱してお読みください。

 

 

まず、①食物は脾胃で運化され水穀の精微と津液となり肺に送られます。

 

<食物は胃・小腸で消化・吸収され、また肝臓や膵臓で代謝されて、飲食物由来の栄養素と体液となって肺に送られます。>

 

 

ついで②呼吸によって取り込まれた天空の清気と合することによって元気が構成されます。

 

<呼吸の吸気によって取り込まれた外気中の酸素と結合して元気を生みます>

 

 

さらに③元気の一部は脈中に入り営気となり、脈中で営気の一部が紅色の栄血に変化します。

 

<元気の一部は血管やリンパ管などの脈管の中に入り営気となり、その一部が(赤血球中の血色素:ヘモグロビン、と結合して)血液となります。>

 

 

前回(先週)は<気とは何か>についてお話しましたが、気と血は相互に依存し、共同して人間の生命活動を支えています。

 

気は<陽>の性質によって人体を温め、血は<陰>の性質によって人体を潤します。このことを漢方医学では気血同根といいます。

 

 

水氣道を例に挙げて説明すると、理気航法と調血航法は相互に補完し合いながら、共同して水氣道の稽古活動およびその効果を支えています。

 

理気航法は<陽>の性質によって参加者の心身を温め、調血航法は<陰>の性質によって参加者の心身に潤いを与えます。

 

ですから、理気航法に熟練すると身体が温まるばかりでなく、心も温まります。

 

つまり、理気航法は<陽>である<気>を心身に取り込むことによって、文字通り、陽気になるということです。

 

これに対して、調血航法に熟練すると身体が潤うばかりでなく、心も潤います。

 

つまり、調血航法は<陰>である<血>を総身(心身)にくまなく巡らせることによって、脳も内臓も筋肉にも十分な栄養を届けることができるようになるということです。

 

 

さて、このように大切な働きを持つ<血>が病むことがあります。血の病変の主なものは、

①血虚(ケッキョ)、

②瘀血(オケツ)、

③血熱(ケツネツ)です。

 

頻度として多いのは①血虚ですが、慢性的な難病でより重要なのは②瘀血です。

 

 

①血虚とは、体内の血が不足するか、血液の濡養作用(心身を潤す作用)が減退するものです。

 

診察すると、舌診で舌が淡白色(淡紅色が望ましい)で萎縮性、表面に裂紋(溝)など、脈診では沈・細(脈が細くて、しかも触れにくい)などが特徴です。

 

 

<血虚の症状>

 

1)顔色が悪い。皮膚が乾燥して荒れる。脱毛。

 

2)爪の変形・異常。手足のあかぎれ。

 

3)筋肉のけいれんやこむらがえり

 

4)月経不順・過少月経

 

5)めまい感、立ちくらみ、あくび

 

6)眼精疲労、耳鳴り

 

7)集中力低下

 

 

血虚の治療方針は補血といって、血を補います。

 

そのための漢方の薬剤を補血剤といいます。漢方薬では補血剤として四物湯、当帰飲子、七物降下湯、芎帰膠艾湯が代表的です。

 

 

補血剤の材料となる生薬は主に地黄(じおう)、芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)、阿膠(あきょう)、竜眼肉(りゅうがんにく)、酸棗仁(さんそうにん)などです。

 

高円寺南診療所では、皮膚のアレルギー、とりわけ肌がガサガサして痒みを訴えるアトピー性皮膚炎の方を<血虚>と見た立て当帰飲子(当帰・地黄・芍薬をはじめ11種の薬味からなる)を処方して優れた成績を上げていま)す。

 

 

②瘀血とは、全身に血流が滞るか、局所に血液が停滞する病態です。

 

この病態は、炎症による組織的変化をもたらします。

 

炎症は血管の変化・動脈硬化、血液凝固亢進、うっ血・多血症あるいは月経、妊娠、出産等に伴う諸変化はすべて瘀血の症状です。

 

診察すると、下腹部の抵抗・圧痛、下腹の張りがあり、腹部膨満感や便秘を確認することが多いです。

 

 

<瘀血の症状>

 

1)顔が赤~赤黒い。目の充血。

 

2)爪甲がどす黒い(暗紫~暗赤)。

 

3)静脈怒張・蛇行、毛細血管拡張、

紅斑・出血(血便・血尿・子宮血性帯下)

 

 

4)冷え・のぼせ(熱感)

 

5)頭痛・頭重、肩こり、胸苦しさ・鋭い痛み、動悸

 

6)左上半身、右下半身の異常

 

7)不眠・嗜眠

 

 

瘀血の治療方針は駆瘀血といって、静脈系のうっ血状態、あるいは微小循環障害の状態から解除します。

 

そのための漢方の薬剤を駆瘀血剤といいます。漢方薬では駆瘀血剤として桂枝茯苓丸、桃核承気湯、通導散、治打撲一方が代表的です。

 

駆瘀血剤の材料となる生薬は主に桃仁(とうにん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、当帰(とうき)、紅花(こうか)、地黄(じおう)などです。

 

高円寺南診療所では、慢性的な病気には必ずと言ってよい程、瘀血を伴っていることから、まず桂枝茯苓丸をよく処方し、体質によって、桃核承気湯、通導散などを使い分けます。

 

また、関節リウマチ、骨粗しょう症などの患者さんや、屋外でのお仕事に従事されて怪我の絶えない方の打撲には、治打撲一方が役立っています。

 

治打撲一方とは打撲の治療の決定的処方、という意味になるようです。

 

 

また、高円寺南診療所の鍼灸師である坂本光昭氏が、西洋医学では治療困難な多くの難病を見事に治せているのは、針治療での瘀血治療の名手だからです。

 

坂本氏の針治療を併用すると、漢方薬の駆瘀血剤の効き目も向上します。

 

 

また、水氣道の調血航法は、漢方薬の駆瘀血剤、坂本鍼灸師の針治療とならんで、瘀血の治療に対して効果絶大です。

 

なぜなら、調血航法の調血とは、血流を改善させ、静脈系のうっ血状態、あるいは微小循環障害の状態から解除することに他ならないからです。

 

水氣道は水中運動であるため、調血航法に限らず、静脈系がうっ血しがちな下半身全体に及ぶ水圧による自然的な加圧トレーニングを行っていることになります。

 

重力に逆らって下半身の静脈血を心臓にまで戻していくためには、下半身の筋肉のリズミカルな収縮が必要です。

 

「足は第二の心臓である」という言葉は、身体機能の大事な本質の一つを捉えた表現だと思います。

 

調血航法は、下半身のリズミカルな有酸素的筋肉運動によって、心臓や血管を鍛え、

 

さらに下半身の筋肉も鍛えることによって、自然療法であるにもかかわらず大きな治療効果を発揮できる理由の一つがここにあるワケです。

心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)

 

<身体表現性障害:誤解されやすい不可解な病名!?>

 

 

身体表現性障害とは、症状を説明できる資質的な異常所見に乏しく、心理的要因によって身体症状に影響が出ている種々の障害の総称です。

 

 

ヒステリー、ブリケ症候群、心気症、心気神経症、醜形恐怖、神経衰弱、自律神経失調症、心因性疼痛などと呼ばれてきた疾患の多くを含む概念です。

 

 

<臨床上の特徴>

 

「身体化障害」、「心気症」(もしくは「心気障害」)、

 

「疼痛性障害」(もしくは「持続性身体表現性疼痛障害」)、「その他」の4つに分類されます。

 

 

「身体化障害」の特徴は、圧倒的に女性に多い、成人早期に発症、病状の多発性・反復性・可変性の身体症状が多年にわたり持続することです。

 

「心気症」は、男女を問わず、比較的限られた数の重篤で進行性の身体疾患に罹患している可能性についての頑固なとらわれが特徴です。

 

 

「疼痛性障害」は、痛みにより生活機能障害を引き起こし、その発症、重症度、悪化あるいは持続の因子とあいて、心理的要因が重要な役割を果たしているのが特徴です。

 

 

<検査所見>

 

一般に、患者さんの症状を裏付ける臨床検査所見の裏付けが乏しい点が特徴であるとされています。

 

しかし、高円寺南診療所が蓄積してきた多数の「疼痛性障害」の経験例のデータからは、心理的要因と一般身体的疾患の両方に関連した病理が明らかになることが少なくありませんでした。

 

一例を挙げれば、線維筋痛症患者の頸椎の異常

(ストレート・ネック、スワン・ネック、変形性頚椎症、子骨粗しょう症など)

や腰椎の椎間板ヘルニアなどは日常的に見出されています。

 

 

<診断のポイント>

 

最も重要なのは除外診断であり、患者さんの症状の原因となっている身体疾患を見逃さないことです。

 

線維筋痛症の患者さんが精神科専門医に「身体表現性障害」もしくは「持続性身体表現性疼痛障害」と診断されることで、患者さんの適切な治療が阻まれていた多数例を経験しています。

 

逆に、身体症状の目立つ患者さんであっても、精神疾患として気分障害、不安障害、発達障害、認知症などが背景にあることに興味も関心も持たない、したがって気づこうともしない整形外科専門医が大多数のように思われます。

 

 

心身両面で病気を診ていこうとする立場は、医師のみならず患者にとっても大切な態度だと思います。

 

その立場に立たない限り、以上の病態を鑑別・除外することができず、妥当な診療方針に辿りつつくことは困難を極めることでしょう。

 

 

<経過と予後>

 

いずれのタイプであっても、一般に症状は慢性に経過することが多いです。

 

決して治らない病気ではないのですが、治りにくい患者さんのタイプがあります。

 

①知的障害を伴う方、

 

②物質依存(タバコ、アルコール、薬物など)を伴う方、

 

③心因の関与を頑なに否定して内省に欠ける方、

 

④自分自身の医療費の支出を渋る方

 

 

<治療>

 

治療開始前に、病名、状態、治療方針、経過の予測などを患者さんが理解できる範囲で説明し、同意を得ることが大切だと考えています。

 

しかしながら、他の多くの病気とは異なり、そのための手続きには相当の時間と労力が掛ることをご理解いただきたいと思います。

 

精神科的なアプローチだけでも医療者側の負担が大きいうえに、身体的(内科的、整形外科的など)なアプローチも必要です。

 

そのうえ、これらを総合し、さらに体系的に統合していくためには高度な専門性と処理手続きが必要となります。

 

 

診断手続きから初期治療までの間に、求めに応じて診断書を作成し、職場に提出することが日常的に行われますが、この診断書作成は、とても重要な意味を持っています。

 

家庭や職場という生活空間を共にし、直接的な係りをもつ人々に、きちんと病状を理解していただくことが、病気の治療の進展に大きな影響を及ぼすからです。

 

他者からは理解されにくいばかりでなく、仮病であるとか、怠慢であるとか、甚だしい誤解に苦しんでいる間は、治療は進捗しないからです。

 

 

診断書は、職場での上司のみならず、職場を担当する産業医との協力体制樹立のためにも有効で、たとえば、休職して治療に専念し、その後、段階的に職場復帰するプロセスにおいても大きな役割を果たします。

 

 

初診時に発行され「うつ病」とか「身体表現性障害」とかの診断名と休職期間のみが記載されているような程度の診断書には、大きな期待はできないとお考えください。

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<リウマチ患者さんの歯周病>

 

 

これまで、日々の臨床では、歯科・口腔外科領域のトピックスを掲載したことはありませんでした。

 

しかし、総合リウマチ科をタイトルとして、改めてこの領域との関連性を日常診療において数多くの気づきが得られています。

 

 

そもそも、関節リウマチと歯周病の関連性は古くから指摘されていました。

 

そして実際にリウマチ専門医は口腔環境が芳しくない患者さんに接することが多いです。

 

歯周病はリウマチ患者さんに併発しやすい生活習慣病とされています。

 

 

しかしながら、歯学部を卒業された歯科医の先生とは違い、医学部医学科を卒業した医師は、専門的に歯周病について勉強する機会にはなかなか恵まれません。

 

そこで、まず、歯周病について皆様と共に勉強したいと思います。

 

 

歯周病の原因は、歯と歯肉の間の溝である歯肉溝・歯周ポケットなどに生息する細菌です。

 

歯垢(プラーク)とも呼ばれています。

 

この細菌と、生体を守る「生体防御機能」のバランスが崩れたときに歯周病が発症するといわれています。

 

 

歯周病は以下の3つのリスク因子が複雑に絡み合う多因子性疾患です。

 

その1.上記の「細菌因子(歯周病原菌)」、

 

その2.「宿主因子(免疫・炎症反応・遺伝)」、

 

その3.「環境因子(喫煙・ストレス・生活習慣)」

 

 

歯周病には「歯肉炎」と「歯周炎」の2段階があり、このことは重要です。

 

 

歯肉炎は、炎症がまだ歯肉に限局している状態です。

 

これはプラークコントロールによって改善します。

 

 

歯周炎は炎症が歯周全体(歯肉のみならず、セメント質、歯根膜、歯槽骨)に波及し、

 

歯槽骨吸収が進行し、深さ4mm以上の歯周ポケットが形成された状態です。

 

これは治療による歯槽骨の再生が可能な症例が限られてしまいます。

 

 

2016年の厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、

 

歯周炎は25~34歳ですでに32.4%、65~74歳では57.5%にまで達し、国民病の1つに数えられました。

 

また歯を失う原因の約半分が歯周病とされます。

 

なおリウマチ患者さんの場合は86%が歯周病という2007年の報告があります。

 

 

リウマチがあると歯周病が発症・進行する理由は、いくつか知られています。

 

 

その1.ステロイドや免疫抑制剤の使用

 

その2.ストレスや不安定な精神状態

 

その3.歯周病原細菌(ポルフィロモナス・ジンジバーリス:Pg)

 

 

とくにこのPgは歯周組織蛋白をシトルリン化させるシトルリン変換酵素を持つことによって、抗シトルリンペプチド抗体(抗CPP抗体)を作ってしまう唯一の口腔内細菌です。

 

この抗体は血行を介して関節内のシトルリン化蛋白とともに免疫複合体を作り炎症を引き起こします。

 

つまり関節炎を発症させる、ということです。この抗CPP抗体は、リウマチにとって精度の高い血液検査による診断指標です。

 

この抗体が高い症例の多くは予後が悪いことが知られています。

 

 

以上より、リウマチ患者さんは一度は歯科を受診し、歯周病が指摘された場合は、歯周病の治療は必ず行うことをお勧めいたします。