総合医療・プライマリケア

 

<いまさら聞けない?頭痛の話>

 

慢性頭痛患者数は4000万人だそうです。この数字は盲点でした。

 

私が頭痛専門医の受験資格を得るための研修は、今週末の大坂での学会で一段落しました。

 

日本頭痛学会を構成する会員の構成は脳神経外科医と神経内科医が37%ずつ、内科医(神経内科以外を専門とする内科医)は3%とのことです。

 

ちなみに私は、3%のグループに属し、頭痛専門医資格取得のハードルは極めて高いそうですが、全く苦痛には感じませんでした。

 

なぜなら、私が毎日接している患者さんの多くが頭痛持ちだからです。

 

 

 学会名は第45回日本頭痛学会総会というものでしたが、朝7:30からの教育セミナー以外は、ほとんどが英語での発表で、あたかも国際学会のようでしたが、

 

頭痛に関する世界最先端の情報が国内で一両日中に学べるとても充実した内容でした。

 

 

ところで私はプライマリ・ケアというカタカナに馴染めないでいます。

 

頭痛専門医になるための研鑽をはじめてますますその感覚が強くなってきています。

 

我が国では、内科系開業医=プライマリ・ケア医との誤解が多く、また救急医療と混同しているケースが多いのが問題です。

 

プライマリ・ケアとは地域社会の全構成員が参加する健康福祉問題改善のための医療活動だとされます。

 

そしてプライマリ・ケア医はそうした全体組織のリーダーである、という人もいます。

 

 

30年近く地域の開業医を続けてきてのプライマリ・ケアについての率直な感想は、特に都市部におけるプライマリ・ケアに限れば、それは大いなる幻想に過ぎませんでした。

 

<絵に描いた餅>とは、まさにこのようなことを指すのだろうという思いです。

 

 

プライマリ・ケア医に対して家庭医や産業医は領域が特定されている分だけ役割が明確ですが、

 

プライマリ・ケア医の業務は、どのように考えても広範に過ぎ、

 

公的な役職を伴わない一私人が能力を発揮できるなどと考えること自体、世間知らずの誹りを免れないのではないかと思います。

 

なぜなら、地域社会の健康福祉問題改善を担当するのは、本来保健所の仕事ではないのでしょうか。

 

税理士が税務署の表玄関に名札を並べるかのように、医師も士業(さむらい業)化して、地域保健所の表玄関に医士として名札を並べることも悪くはないかもしれません。

 

 

それは、さておき、私も一時期は、そうしたプライマリ・ケアの認定医や指導医の資格を取得したことがありましたが、

 

無意味に思えて、これらの資格の維持はすべて放棄しました。

 

その理由は、私が必要であると考えている<健康福祉問題改善のための医療活動>と医師会あるいは行政が考えているものとの隔たりが大きいからです。

 

具体的に言えば、私の目の前にいる一人一人の患者さんにとって真に必要な仕事とのギャップをどうしても埋めることができないことを悟ったからに他なりません。

 

そうかといって、現行の保険医療制度を全面的に否定する立場ではないことは明確にお断りしておかなければなりません。

 

そうではなくて、現行の保険医療制度を十分に活用しても、多くの患者さんが救済されないまま放置されていることに臨床医はもっと意識と努力の焦点をあてるべきだと考えている、ということです。

 

なぜなら、国民病ともいえる頻度の多い病気でさえ十分な医療対応がなされていないことが明らかだからです。

 

 

たびたび話題にしている専門医制度を例にあげると、患者数が多い専門医の順番に並べてみると

 

アレルギー専門医(アレルギー疾患罹病率50%超)、

 

頭痛専門医(頭痛患者数4,000万人)、

 

痛風認定医(高尿酸血症患者頻度、男性では25%程度)、

 

高血圧専門医(高血圧患者数1,010万8000人:厚労省平成26年調査)、

 

リウマチ専門医(手足が痛む患者数560万人:線維筋痛症患者数200万人、関節リウマチ患者数70万人)、

 

糖尿病専門医(糖尿病患者数316万6000人:同年の調査)などなど・・・

 

 

皆様、いかがでしょうか。

 

<高円寺南診療所は、やたらと複雑な病気を診たがり、むやみにいろんなことに手を出している>、

 

と怪訝に思っていらっしゃる方が少なくないと聴きます。

 

これは、大きな誤解であることをご説明したいと思います。

 

 

ここで冷静にお考ください。高円寺南診療所は、当たり前の国民病、しかも現代人を苦しめている、ごくありふれた病気の診断と治療をテーマとしているにすぎないのです。

 

ごく当たり前の頻度の多い病気を診る医者に専門医制度が確立しつつあるので、専門医でない医師は、特殊な病気は不得手であるばかりでなく、

 

ありふれた病気についての診療能力についての説明責任をどのよう果たしているのでしょうか。

 

 

現代医療の問題点を根本から解決できないまま専門医制度の確立を急いだ結果、誇りをもって担当してきた開業医の仕事がどんどん奪われてきました。

 

実績のある第一線の現場の開業医までもが巻き込まれて、大いに困惑しています。

 

内科系開業医が信頼される総合医療を実践していくためには、以上の様な国民病をきちんと診ていくことができるだけの更なる知識・技術・経験が必要不可欠なのではないかと考えています。

 

また、それらを裏付ける資格を獲得する等の一連の努力による品質表示すらできない医師が、どのように総合医療を実践するのか、

 

さらに、プライマリ・ケア医として地域社会の全構成員が参加する健康福祉問題改善のための医療活動のリーダーとして認知されることなど、到底及びもつかないのではないかと、私は考えています。

 

敬意を受けることもなく、ひたすら都合の良い便利な医師に徹することも一つの生き方でしょうが、

 

それでは到底、知識と経験を兼ね備えた専門家としてのリーダーシップを発揮することには結びつかないと思われてなりません。

 

皆様は如何お考えでしょうか。  

 

<変えられていないこと③ 悪Nogucciへの対抗策>

 

 

前回、Nogucciの思考として、3本の柱があると述べました。

 

 

それが以下の3つです。

 

①波風立てずに平穏無事に過ごしたい。

 

②自分さえ無事ならそれで良いのだ。

 

③今が何とかなれば、それで良い。 

 

さて、強敵ぞろいです。どう対抗していきましょう?

 

 

まず①波風を立てないで~と、思っていても波風は必ず立ちます。

 

自分はパーフェクトにこなしているから平穏無事!

 

というつもりでも、

 

自分がミスをして平穏で無くなる(圧倒的にこれが多いです)、

 

また、他から波風がやってくることもあります。

 

 

平穏というのは、静に何も動かないことが理想と考えていました。

 

 

現実は、静な凪の時より、波風立っているほうが多いです。

 

その中で早め早めに仕事にとりかかり、準備を整えることを意識していくうちに、

 

平穏無事って、「あれ?むしろ波の中、揺れている中、動いている、行動している中にあるのでは?」と考えるようになりました。

 

後回しにて、取り繕うことを考える程に、平穏は遠ざかりました。

 

 

②③については、後で困る事が多いです。

 

事が大きくなり自分に返ってきます。

 

ですので、「今を誤魔化さずに、できる事を正直にやっておけば、後から困らない」

 

簡単なことです。でも解っていても…。

 

「必要な事は、一歩進む、どんな小さなことでも良いから実践すること」と考えました。

 

①②③に共通することは

 

「取り繕わずに正直に相談する(自分だけで抱え込まない)、今できる事をできる範囲でとりかかっておく」

 

あれ?普通だ。 

 

これを日々実践すると、ちょっと楽になってきました。

 

 

でも時々、悪Nogucciが囁くんです。

 

「後回しにすれば、今楽でしょ?今波風立てることないよ…」って。

 

 

統合医学(東西医学、代替・補完医療)

 

<ヨーガ療法とは何か?>

 

高円寺南診療所で得意とし、かつ実績のある非薬物療法(薬以外の治療法)は、

 

生活指導、栄養指導(現在、管理栄養士募集中)、理学療法(独自の統合理学療法)、鍼灸療法、心身医学療法、水氣道®、音楽療法です。

 

 

このなかで水氣道が効果的だと思われる方に、水氣道をお勧めする際に、以前から気になっていたことがあります。

 

それは、定期的にジムに通っている、自宅でストレッチしている、ヨガ教室に通っている、これらはいずれも水氣道を警戒し、勧めを断る際に患者さんたちが口にされることの多い主な理由です。

 

その中でも、近年、ヨーガがブームのようで関心を持つ人が増えています。

 

そこでヨーガとは何かをお尋ねしてみると、イメージのみが先行していて、基本的な情報も入手していない方がほとんどでることに驚かされます。

 

そこでヨーガについての情報を統合医学的な立場から整理してみました。

 

 

ヨーガという場合と、ヨーガ療法という場合では区別して考えるべきかもしれませんが、統合医療の世界では伝統的なヨーガを医学や心理学方面に役立てるヨガ療法として世界中に広まったのは、第二次世界大戦後でした。

 

 

そもそもヨーガの発祥は諸説ありますが、3000年以上前からのようです。

 

一般には古代インド発祥の宗教的行法で、心身鍛錬によって「悟りを開く」ことを目的とするものと認識されているようです。

 

文献学的には古ウパニシャド聖典の中に見いだされ、私たちの人間存在を5つの鞘を動かす原動力たる生命原理(アートマン)をその中心に据えています。

 

現代のヨーガ療法もこの人間観に基づいて人間の諸病を考えています。

 

 

古代インドにおいて人間の健康はサンスクリット語のスヴァスタという言葉で表されるそうです。

 

これが英語のヘルスの語源になっているともいわれます。

 

 

サンスクリットにおいて真の健康の概念とは、「自己が根本的存在に留まる」ことです。

 

したがって、健康であれば、自己存在を自己本来の自己と同一視することができるはずです。

 

これに対して、不健康の始まりは、自己存在を自己本来の自己以外の人間関係などの社会的条件と同一視することであり、さらに、自己存在を肉体(食物鞘・生気鞘)や心理作用(意思鞘・理知鞘・歓喜鞘)と同一視することだとします。

 

 

インドの精神文化で言われていることは、私たちの人間存在の究極的健康実現は、5つの鞘の奥に内在する生命原理(アートマン)そのものを意識化し、悟り、同一の存在となることです。

 

そして、ヨーガとは、真の自己発見技法であり、それが真の健康実現法となるものです。

 

ヨーガ療法とは、このヨーガを現代社会に応用させたものといえます。

 

 

水氣道では、私たちに内在する生命原理を体感し、私たちを取り巻く生命環境との調和を図るという考え方に立ちます。

 

この立場は世界保健機関(WHO)が健康の概念の一要素としての採択を検討している「スピリチュアルな健康」に通じています。

 

 

ヨーガ療法の病因論

 

ヨーガの考え方では病気は無知(無智)が根本原因であるとしているようです。

 

○過去の記憶を貯蔵する領域(歓喜鞘)を自己と同一視する無知⇒歓喜鞘の不調

 

○自己の知性・感性・感情を働かせる領域(理知鞘・意思鞘)と自己とを同一視する無知⇒理知鞘・意思鞘の不調

 

これらの無知は私たち人間の知性と感性次元での不調和を生じさせ、

 

その不調和が呼吸作用を乱し(生気鞘の不調)、

 

さらには食物で支えられている肉体(食物鞘)に各種の疾患を生じさせる(食物鞘の不調)とします。

 

 

 このような立場から、ヨーガでは様々な呼吸技法によって不調に陥っている呼吸作用を整調させようとしていることが理解できます。

 

これは、水氣道における理気航法に通じるものがあるようです。

 

 

ヨーガ療法による指導法

 

患者が最も自己を認識しやすい食物鞘、すなわち肉体次元から自己認識できるように指導し、次いで生気鞘次元、意思鞘次元、理知鞘・歓喜鞘次元の指導における各種の技法を総合的に使用します。

 

 

以上、ヨーガについての基本情報のまとめを試みましたが、ヨーガとの比較によって多少なりとも水氣道に興味を持たれた方は、躊躇することなくご参加されることをお勧めいたします。

 

 

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「臂臑(ひじゅ)」です。

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場所は腕をあげると肩関節のところに2つの窪みが現れます。

 

 

その前方の窪みから指4本のところにあります。

 

 

「上肢の麻痺」「肩関節周囲炎」「頸項部のこわばり」「頭痛」等に効果があります。

 

 

頭痛に効果があるなんて不思議ですね。

 

 

<参考文献>

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

 

東洋医学(漢方・中医・鍼灸)

 

<水(すい)とは何か?>

 

中医学(中国伝統医学)では、水を津液(シンエキ)と言います。

 

津液は体内のすべての正常な水分の総称です。

 

血液中の液体成分や組織間液、汗、尿その他の比較的清稀(さらさら・すっきりした成分)な水分をといい、細胞内液や、分泌液のなかでも比較的濃稠(ネバネバ・ドロドロとした成分)なものをといいます。

 

しかし、津と液とを厳密に区分することは現実的でないため、両者を一括して津液と称しています。

 

 

津液は気(キ)、血(ケツ)と並んで重要な体成分です。

 

気が陽に属するのに対して、津液は血とならんでに属します。

 

 

津液(水)の源は口から入った水です。

 

脾胃(上部消化管)によって吸収された水分は肺に運び上げられ

(現代医学的には、この間に門脈⇒肝臓⇒心臓⇒を経由して)、

 

水道である三焦を経由して全身に分布された後、腎の働きにより膀胱に集められます。

 

腎ではその一部が上騰して再利用(現代医学的には、腎尿細管での再吸収に相当)され、残りは尿として排泄されます。

 

 

このように中医学理論は大筋において現代医学・生理学と矛盾はありませんが、下線部については、現代医学的に説明することは困難です。

 

そこで、少し補足を加えて<臓腑器官で代謝された後の濁液>が三焦水道を経由して、と解釈し、<臓腑器官で代謝された後の濁液>とは静脈血と考えれば、グッとわかりやすくなります。

 

しかし、そもそも三焦水道とは何でしょうか?

 

 

三焦とは上焦、中焦、下焦の総称とされます。これらについては、別の機会の話題にしたいと思います。

 

 

津液(水)の病変とは?

 

津液の病変は、津液の損傷や不足、水分の積聚(病的な貯留)に分けられます。

 

 

津液の損傷(傷津)は、津液の損傷の軽度なもの、あるいは水分摂取不足などによる一時的な津液が消耗したもので軽度の脱水症状です。

 

現れやすい症状は、発熱、口渇、舌乾燥などです。

 

 

脱液(傷陰)は、全身の体液成分が枯渇した重篤な変化です。

 

高度な脱水状態で、意識障害や心不全などを伴います。

 

 

中医学の概念での肺、脾、腎の三臓が失調し、津液の輸布(分布)あるいは排泄障害を引き起こし、その結果、異常な水分が停滞蓄積したもので中医学では水滞と総称され、日本漢方では水毒(スイドク)とされます。

 

細分すると全身性の浮腫である水腫(スイシュ)と局所的な浮腫である痰飲(タンイン)とに分けることがあります。

 

なお、痰飲もさらに薄い水分を、粘稠な水分をとして分けます。

 

日本人には、慢性的な水分過剰の病態が問題になることが多いので、水滞(水毒)の症状について紹介します。

 

 

水滞(水毒)の症状

 

①むくみ・浮腫

 

②鼻汁、蓄膿、痰、耳垂れ

 

③動悸、息切れ、咳、喘息

 

④悪心・嘔吐、口渇、胃内停水

 

⑤めまい、耳鳴り、頭痛・頭重、肩こり、関節の痛み(右上半身と左下半身に生じやすい)

 

⑥分泌障害:唾液・涙の分泌過多、発汗異常(過剰もしくは無汗)

 

⑦排泄障害:下痢(水様性)、便通異常・腹鳴

 

 

 

水滞(水毒)対策

 

①むくみの原因となる塩分の摂取過剰、蛋白質摂取の欠乏、脚気の原因となるビタミンB1欠乏の有無を確認し、是正する。

 

②体の浮腫みは、脳や心の浮腫み、自律神経の不調(夜更かし、朝寝坊、昼夜逆転など)、ホルモンのアンバランス(甲状腺機能低下、副腎機能低下など)を、生活習慣の見直しをはかる。

 

③運動不足はないか。たとえ運動をしていても質的な吟味が必要。

有酸素運動が望ましく、さらにいえば運動中に持続的に水圧が掛る水中有酸素運動が好適。

 

水氣道は理想的なエクササイズであり、活水航法は浮腫み対策の核心的な技法。

 

 

④漢方薬では主に利水剤を使用。鍼灸と併用による効果増強の実績多数。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

上焦は横隔膜より上の部分にあり、「霧の如く」肺の衛気を宣発し、津液を散布する作用です。

 

 

中焦は横隔膜より下で臍の位置より上の部分にあり、「濫(かめに貯えられた水から生じる泡、変化が生じることを示す)の如く」といわれている。

 

 

下焦は臍より以下の部位、尿と大便の排泄である。

 

「下焦は潰(みぞ)の如く」といわれている。その他、肝腎や命門 も下焦に属している 。

 

 

心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)

 

<音楽療法:聖楽院の役割>

 

 

音楽療法とは、音楽のもつ生理的、心理的、社会的な作用を、心身の障害の回復、機能の維持や改善、さらには生活の質の向上に向けて、音楽を意図的に、計画的に活用して行われる治療技法です。

 

つまり、音楽療法は心身医学療法の一つとして理解することができます。

 

 

音楽療法は発展途上にありますが、過日お亡くなりになった日野原重明先生が名誉理事長であった日本音楽療法学会は中心的な役割を果たしていて、すでに多数の音楽療法士を認定しています。

 

通常、音楽療法士が専門の医師と協力して患者の行動の変化を目標として行う教育的、治療的活動です。

 

 

しかし、実際の仕事内容としては、おもに福祉の場面や医療の場面が多く、身体や精神上の障害を持っている人に対して、その対象者の状況に合わせた音楽的プログラムを組み、音楽を歌ったり、聞かせたりなど、音楽の持つ力を生かしたリハビリテーションを行い、障害の回復や生活の質の向上が図られているようです。

 

 

今年の4月に発足した聖楽院は、いわゆるクラシック音楽の声楽曲を題材として、声楽のもつ生理的、心理的、社会的な作用を、心身の障害の回復、機能の維持や改善、さらには生活の質の向上、社会復帰や社会貢献を通しての自己実現や自己超越に向けて、クラシック音楽のもつ芸術性を尊重しつつ、創造的、計画的にこれ活用して行われる教育的で啓発的な治療技法です。

 

 

日本音楽療法学会の立場と最も大きく異なるのは、聖楽院の音楽療法の対象は心の病気に限定しないことです。

 

そして治療目標として自己実現にとどまらず自己超越を志向する点にあります。

 

そのためには、芸術性の向上を犠牲にせず、最大限これを活かせるように導くことが不可欠だと考えています。

 

 

また、音楽療法に関わる専門の医師について、私はわが国ではまだ、その位置づけが不明確であり、音楽療法専門医のような制度も知りません。

 

聖楽院では“聖楽療法医”構想があります。療法医は専門医ではなくてよいのですが、いくつかの条件が求められます。

 

 

まず臨床医であること、特に心身両面での診療に従事している医師であって、みずから音楽を愛好し、計画的に訓練し、演奏活動を行うに当たって職業音楽家とも良好なコミュニケーションが取り、協議の上でコンサート・プログラムを作成できること、などです。

 

 

聖楽院での具体的な実践指針について、以下にご紹介いたします。

 

 

①音楽療法士ではない一般の職業演奏家の協力によって公開レッスンに参加したりや内部コンサートを開催したりすること、

 

②協力演奏家は、あくまで伴奏家あるいは演奏家として関与することとし、特段セラピーを意識しないようにすること、

 

③患者としてセラピーに参加するのでなく、あくまで受講生としレッスンに参加すること、

 

④姿勢、呼吸、発声など医学的な観点からのアプローチを行うこと、

 

⑤基礎教材は、声楽練習曲(コンコーネ50、トスティ50)を採用し、独自に小倉百人一首の歌詞を配したオリジナルな材料を用いて、声楽の芸術的基礎をしっかりと身に着けること

 

⑥少人数制レッスン制を基本として、補助的に個人レッスン制を併用すること

 

⑦不特定の多数を対象とするのではなく、参加者の芸術表現者としての適性や可能性を考慮し、能力に応じたクラス分けを行うこと

 

➇公開の場で音楽表現をする経験を味わうことができるように導くこと

水氣道と私~私の水氣道3ステップ~

 

<ステップ2>

 

AO3

 

 

ステップ2へのコメント

 

リズムを刻む

 

 

大坂さんが目下修錬中の応用航法は調血航法です。

 

この航法は、特にこの無理なく一定のリズムを継続的に刻む動作が基本要素の一つです。

 

大坂さんはこの動作にとって大切なポイントに気付かれたのだと思います。

 

 

調血航法は、脳を使って、心肺機能と筋肉の働きを鍛錬します。

 

そして、全身のしなやかな筋肉を作り、怪我を起こしにくく、障害に陥りにくい、しかも回復力に優れた体作りを目的とします。

 

調血航法で鍛錬することによって血液を心臓から頭や指先・爪先まで滞りなく送り出し、また全身から心臓へ戻ってくる循環を促します。

 

全身の筋肉の屈伸運動を繰り返すことによって、瞬発力(パワー)持久力(スタミナ)を強化し、同時に平衡感覚協調運動能力を磨くことができるのです。

 

 

脳を使ってリズムカルに1・2、1・2…と声に出し体を動かす事で、無理なくその目的が実現されるのです。

 

 

平衡感覚や協調運動能力を磨くことを可能とするのは調血航法のみに限られてはいません。

 

 

基本五航法では、

第一航法(素歩き)・第二航法(棒歩き)・第四航法(つま先浮かし歩き)は2拍子、

 

第三航法(前蹴り歩き)は3拍子、第五航法(前後蹴り歩き)は4拍子が基本のリズムで動作しています。

 

 

また、いきいき体操(準備体操)・のびのび体操(整理体操)でも、1・2・3…7・8と皆で声を出しリズムを合わせながら動作を行っています。

 

 

大坂さんが2つ目のステップとして記述されているこのリズムを刻むという動作の重要性に気づかれたことは、

 

このように水氣道全体の流れの中で本質的な要素の一つに開眼したと言えるのではないかと思います。

 

 

日本水氣道協会 水氣道2級(中等修錬生)

 

調血航法直伝 加藤博文

 

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<関節リウマチの経口剤「オルミエント」の登場>

 

 

関節リウマチ治療の新たな経口剤「オルミエント錠」(一般名・バリシチニブ)が先月発売されました。

 

関節リウマチの第1選択薬である「リウマトレックス®」(一般名・メトトレキサート:MTX)など、既存治療が効果不十分な患者さんに用います。

 

1日1回投与で炎症や免疫反応に関与するヤヌスキナーゼ1(JAK1)およびJAK2を選択的に阻害します。

 

臨床試験では、疾患活動性の抑制効果は既存の生物製剤(バイオ製剤)を上回りました。

 

 

上気道感染の他、重大な副作用として感染症などがあることが懸念材料です。

 

 

関節リウマチは、近年では発症早期から疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を用いて疾患活動性を抑え続ける(寛解または低疾患活動性とする)ことで、将来の関節破壊を抑制することが可能となりました。

 

 

DMARDとしてはまずリウマトレックス®(一般名・メトトレキサート:MTX)の使用が強く推奨されます。

 

高円寺南診療所では実施していませんが、リウマトレックス®で効果不十分な患者さんには、一般的にバイオ製剤などが用いられています。

 

しかし、バイオ製剤によっても寛解・低疾患活動性に至らない患者さんや副作用のために継続できない患者さんが一定数存在します。

 

また、バイオ製剤の投与経路は点滴静注あるいは皮下注射であるため、通院あるいは注射の負担は避けられません。

 

 

関節リウマチの新薬であるオルミエントはJAK1/JAK2を選択的に阻害する経口剤です。

 

これはIL-6、GM-CSF(顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子)、IFNγといった炎症性サイトカインの細胞内シグナル伝達を阻害します。 

 

MTXで効果不十分な患者さん、バイオ製剤で効果不十分な患者さんなどに用いることが想定されます。

 

一方で、「安全性プロファイルおよびそのリスクの程度は生物製剤と類似していると考えられる」(審査当局の報告書)ことから、適正使用が求められています。

 

 

国際共同第3相試験「RA-BEAM試験」は、MTXで効果不十分な関節リウマチ患者さん1305例を対象に行われました。

 

ランダムに分け、オルミエント、プラセボ、アダリムマブ(抗TNFα抗体)のいずれかを投与しました。

 

 

主要評価項目の「12週時のACR20改善率(米国リウマチ学会による疾患活動性の改善基準)」はオルミエント群69.6%、プラセボ群40.2%で、同剤が有意に優れていました。同剤群とアダリムマブ群(61.2%)との間にも有意差が認められました。

 

 

他の第2相試験、第3相試験を合わせて、オルミエントを投与した3439例中、同剤との因果関係が否定されなかった有害事象は41.5%に認められました。

 

主なものは上気道感染(9.7%)帯状疱疹(3.9%)などでした。

 

また、主な臨床検査値異常はLDLコレステロール上昇(43.2%)などでした。

 

 

重大な副作用として、重篤な感染症 などがあり、同剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用することとされています。

 

 

 

▽効能・効果=既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)

 

▽用法・用量=通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。

 

▽薬価=2mg 1錠 2694.60円、4mg 1錠 5223.00円

 

 

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】

 

①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

 

②重篤な感染症(敗血症など)の患者

 

③活動性結核の患者

 

④重度の腎機能障害を有する患者

 

⑤好中球数が500/mm3未満の患者

 

⑥リンパ球数が500/mm3未満の患者

 

⑦ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者

 

➇妊婦または妊娠している可能性のある婦人

 

 

高円寺南診療所では、当面、生物学的製剤の使用は見合わせる方針です。

 

その理由は、2つあります。

 

 

第一に生物学的製剤は、免疫に直接作用する薬なので、免疫力の低下が避けられず、細菌や真菌に対する抵抗力を弱くしてしまうからです。

 

通常は問題ない程度の菌による日和見感染症にかかったり、結核を発症したりすることが問題になっています。

 

 

第二の問題は非常に高価なことです。

 

以前の抗リウマチ薬による治療では、1カ月あたり数千円で済んでいた薬剤費が、生物学的製剤だと10万~15万円程度必要になることもあります。

 

負担が重いために生物学的製剤の使用に踏み切れない患者さんも多くいます。

 

 

免疫力の低下は、投与前に十分な検査を行い、感染症を疑う症状があった時にどう対処するか担当医と十分に相談しておくことが重要です。

 

 

薬剤費の負担については、身体障害者福祉制度や高額療養費制度を利用して支払額を抑えることができます。

 

しかし、医療費助成を受けられるほどの身体障害者となると、かなり進行した関節リウマチになってしまいます。

 

病状を進行させないための投与では、医療費助成の対象にならないのが実情です。

 

このあたりが日本の医療制度の欠点の一つです。

 

 

水氣道は、参加者の行動体力のみならず防衛体力(免疫力)を高めることが重要な目的の一つですが、

 

それと同時に、病気が進行しないうちに支援する生涯エクササイズであるといこと、費用が一か月数千円以下で済んでしまうことなどから、

 

たとえ水氣道が医療の一環として承認を獲得することができたとしても、現行の医療費助成の対象にはなりえないことでしょう。

< 東京警察病院に期待!外国人患者対応についての案内>

 

 

高円寺南診療所は東京警察病院から提携医証をいただいております。

 

文面は以下の通りです。

 

< 貴院は地域医療に発展のため当院と医療連携を行う医療機関であることを証します

 

平成23年5月10日 財団法人自警会 東京警察病院 >

 

 

法人の設立は昭和4年(1929年)3月18日とのことですから、90年近くになるようです。

 

高円寺南診療所は警察病院が平成20年に飯田橋から現在の中野に移転してから3年程で医療連携を開始し、6年を経過したところです。

 

精密検査や手術などで患者さんの入院が必要な際は、それまでは都内の各病院に紹介するのが常でしたが、

 

それからは推奨病院リストのトップに東京警察病院を定めるようにしてから、紹介⇒受診⇒診療所への報告⇒復帰の流れがスムーズになり、

 

その間、経験を重ねるにつれて当方の対応も段階的に改善してこられたように思います。

 

 

病院の実務概要は、患者さんの報告を通して医学的水準においても医療サービスにおいても信頼しています。

 

ただし、それらはすべて伝聞情報であり、より直接的に体験する機会が欲しいと望んでいたところ、私自身が小手術を受ける機会に恵まれました。

 

これまで大病や大怪我を経験せずに過ごしてこられたことを感謝するとともに、生まれて初めての手術を経験しました。

 

 

手術時間は、ちょうど水氣道の基本五航法が始まる頃、修了は水氣道の整理体操(ノビノビ体操)が始まる頃、といえば水曜日に参加している水氣道会員にはピンとくることでしょう。

 

要するに、小一時間で済む形成外科での小手術(左胸部皮下腫瘍切除術)でした。

 

受付手続き、初診、検査、会計⇒再診、受付、手術、会計、

 

こうした一連の手続きが近代的に整備され、会計も診察券による自動支払い装置によるものでした。

 

要所要所に英語での表示も併記されていて、またボランティアの案内係の方もいらっしゃいましたが、

 

日本語が通じる日本人の開業医であるはずの私でも、初回はいささか戸惑ったくらいでした。

 

 

手術は局所麻酔によるものでした。意識は通常通り維持されているので、全体の流れをワクワク(医師として)、ビクビク(患者として)しながら味わうことができました。

 

とても丁寧で洗練された対応をしていただき感謝すると同時に、予想していた以上に今回の経験は得るところが大きかったと思います。

 

 

待ち時間対策として、最近停滞気味であったフランス語の新書サイズのテキストを持参していきましたので、退屈することはありませんでした。

 

しかし、ふと気づいて大勢の患者さんを見まわしてみると、明らかな外国人は見当たりませんでした。

 

中国や韓国、モンゴルの方々とは話声を聴くまでは判別がつきませんが、少し気になるところでありました。

 

会計を済ませて、中野駅に向かう途中の中野中央公園(Nakano Central Park)には、外国人の方を多く見かけました。

 

中には、ブロンド美人の先生が日本の幼稚園児に囲まれている姿も見かけました。

 

 

高円寺南診療所は、英語による外国人対応をしているので、提携先の病院も英語対応が可能であると心強いです。

 

そこで、改めて東京警察病院のHPを検索してみましたが、残念ながら、英語での紹介は載せられていませんでした。

 

高円寺南診療所での外国人患者さんへの対応で、しばしば対応難渋するのは、診療所内でのコミュニケーションではなく、紹介先です。

 

英語が達者な留学経験のある医師も都内には少なくないので、中核病院での英語対応の問題が解決できれば、英語対応可能とする診療所は間違いなく増えるはずだと思います。

総合アレルギ‐科(呼吸器・感染症、皮膚科・眼科を含む)

 

< いまさら聞けない?COPD >

 

呼吸器疾患は、かぜ症候群にはじまる呼吸器感染症や、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの気道系疾患、特発性間質性肺炎などの間質性肺疾患、肺がんなどの腫瘍性疾患、睡眠時無呼吸症候群、過換気症候群など呼吸の異常など、疾患の種類が多いです。

 

 

高円寺南診療所は内科を基盤として、生活習慣病の診療をすることにはじまり、アレルギー・リウマチ関連疾患やストレス関連疾患を専門的に診療しています。

 

ですから、気管支喘息(呼吸器アレルギー)、特発性間質性肺炎(膠原病の合併症、抗リウマチ薬の副作用その他)、睡眠時無呼吸症候群(原因となる肥満に対する減量指導)、過換気症候群(ストレス関連心身症)など数多くの呼吸器疾患のほとんどと密接なかかわりをもっています。

 

 

呼吸器疾患の中でも、近年特に注目されているのがCOPDです。

 

COPDは、これまで肺気腫、慢性気管支炎といわれていた疾患を統一した概念です。

 

COPDの患者で受診者は22.3万人といわれ、40歳以上の8.5%に相当します。

 

高円寺南診療所で専門外来を続けている70万人といわれる関節リウマチの半数にも満たない数です。

 

しかし、関節リウマチと異なるのは、治療を受けていない潜在的罹患者数が多いことです。

 

一説には530万人ともいわれています。

 

単純計算では、4.2%しか受診していないことになります。

 

95.8%の患者が放置されているということは、とても恐ろしいことです。

 

しかし、COPDは「治療可能な疾患である」と定義されています。

 

 

COPDは世界的に増加の一途を続けており、2020年には世界の死因の第3位になるとの予測もあります。

 

肺癌も未だ増加傾向が続いていて、国内の悪性腫瘍死の男性1位、女性2位です。

 

COPDや肺がんの主要な原因の一つにタバコが挙げられています。

 

 

COPDの特徴で重要なのは合併症や高血圧などの併存症が多いことです。

 

逆にCOPDによって併存症を悪化させることも知られています。

 

ですから、COPDは呼吸器専門外来では十分に対応できないことがしばしばであり、高円寺南診療所のような総合内科あるいは総合診療科に近い医療機関が積極的に関与しなければならない疾患群の一つだと考えています。

 

 

COPDの診療で大切なのは、まずCOPDを疑うことから始めます。

 

COPDを疑うべき症状としては、咳、痰、労作時の息切れなどです。

 

それに加えて喫煙歴がある場合には要注意です。

 

これらの多くは、患者さん自身が「歳のせい(老化現象)」であるとか、

 

「治りにくい、しつこいかぜ」などと自己診断しているケースが多数に登り、

 

喫煙が原因であることは認めたがらない傾向があり、難渋します。

 

 

しかし、継続して受診してくださる限り、誠心誠意の態度でお付き合いさせていく中で、いつか必ず真実を受け入れてくださります。

 

 

平成元年開院以来の禁煙指導は、今日に至るまで一貫した立場で対応しております。