統合医学(東西医学、代替・補完医療)

 

<正食(マクロビオティック)につて>

 

正食とは、1928年(昭和3年)に食養研究家の桜沢如一が考案した食生活法です。

 

そのモデルは石塚左玄の食養道にあるそうです。

 

桜沢如一は1929(昭和4年)に渡仏しパリで正食を広めました。

 

そして1960年代には渡米して、弟子の久司道夫らとともに「禅・マクロビオティック」を唱えて、独自の哲学を含む食生活運動を発展させました。

 

私は、開業医としての業務の傍ら、千葉県市川市の昭和学院短期大学ヘルスケア栄養学科の非常勤講師(後に客員教授)に招聘されたことをきっかけにAmerican College of Holistic Nutrition(米国綜合栄養大学、通信制)の博士課程に入学して自然療法や臨床栄養学を学びました。

 

多数の英文教材の中の一冊に久司道夫氏のMacrobioticがあって、興味深く勉強した記憶があります。

 

 

伝統的な和食への関心は欧米でも高いようです。

 

 

そこで正食の指導の特徴を列記してみます。

 

 

三大理念に、「一物全体」「身土不二」「陰陽調和」があります。

 

 

これらのうち「陰陽調和」が根本原理であり、「一物全体」も「身土不二」もこの原理から派生しているのではないかと考えます。

 

 

正食法の考え方は、現在においても概ね推奨できますが、余り実際的でない項目も含まれていると思います。

 

「陰陽調和」はとても大切な基本概念ですが、「一物全体」や「身土不二」に厳密にこだわりすぎることはあまりお勧めできません。

 

 

①玄米や雑穀、全粒粉の小麦製品などを主食とする

 

 

②野菜、穀物、豆類などの農産物、海草類を食べる

 

 

③「身土不二」(地産地消):近隣の地域で収穫された、旬の食べ物を食べる

 

有機農産物や自然農法による食品を摂取する。

 

 

④砂糖を使用しない

 

甘味は米飴・甘酒・甜菜類・メープルシロップなどで代用する。

 

 

⑤鰹節や煮干しなど魚の出汁、うま味調味料は使用しない。

 

出汁としては、主に昆布や椎茸を用いる

 

 

⑥天然由来の食品添加物を用いる

 

塩はにがりを含んだ自然塩を用いる

 

 

⑦肉類や卵、乳製品は用いない。

 

 

➇「一物全体」:皮や根も捨てずに用いて、一つの食品は丸ごと摂取する。

 

 

⑨食品の灰汁(アク)も取り除かない。

 

 

⑩コーヒーは身体を冷やすので避ける。

   

 

(参考:太字で下線を施した項目は、飯嶋正広自らが実行しているもの、下線を施した項目は、飯嶋正広が参考にしている項目です。)

 

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「肩髃(けんぐう)」です。

 

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場所は腕を真横に上げると肩関節に現れる窪みにあります。

 

 

「肩関節周囲炎」「上肢麻痺」「脳血管障害」「高血圧」等に効果があります。

 

 

また「蕁麻疹」に効果があると言われています。

 

 

<参考文献>

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

東洋医学

 

<漢方の見立て方①>

 

漢方では、病人を見立てる際には、西洋医学のように病名ではなく(しょう)で分類します。

 

 

分類基準が異なるため、西洋医学の病名診断と漢方の証の見立ては併存しても矛盾は生じません。

 

高円寺南診療所では統合医学的アプローチのため、両者を同時並行で行っています。

 

 

東西医学の併用が有益なのは、たとえば何人かの患者さんが西洋医学で同じAという病名診断をした場合に、それぞれの患者さんに同様の治療を施すことになりますが、それに加えて漢方での見立てをすると、必ずしも同じ<証>ではありません。

 

むしろ、それぞれに異なる<証>であることが普通です。

 

たとえば、A病の3人が、それぞれ甲の証、乙の証、丙の証、ということになります。

 

その場合、高円寺南診療所では、3人の患者さんをA-甲、A-乙、A-丙と認識して、それぞれに最も適した治療方法を選択するようにしています。

 

それによって、治療効果のメリットを最大化し、副作用などのデメリットを最小化することを試みているのです。

 

 

 

さて<証>とは、具体的には陰-陽表-裏寒-熱虚-実という8綱4対の基本尺度の組み合わせに基づいて、病状を分析し、これらを統合して正しい見立て<証>に至ろうとする方法です。

 

このように見立てのために8綱の尺度概念を用いるため、この方法は八綱弁証(はっこうべんしょう)と呼ばれています。

 

 

表裏とは病気のある場所、寒熱は病気の性質、虚実は病邪の強弱と身体の抵抗力の強弱との相対関係をそれぞれ表しています。

 

そしてこれらのすべてを総括する概念が陰陽です。

 

 

今回は陰陽の見分け方について説明いたします。

 

 

私は、患者さんを前にしたとき、必ず陰陽の事前鑑別をします。

 

ただし、これはあくまでも仮説です。

 

なぜなら<病気は病人を騙(だま)し、したがって病人は医者を欺(あざむ)く>のが普通だと考えているからです。

 

それならば、なぜ事前鑑別が必要なのでしょうか。

 

それは、必要の有無以前に、必然的に行ってしまう作業だからです。

 

つまり、私の右脳系による無意識の印象形成です。

 

無意識であるから直接コントロールすることは難しいです。

 

しかし、これは、それ以降の見立ての手続きによって逐次再検討を加え、場合によっては仮説を修正します。

 

むしろ、限られた情報だからといって判断保留をすべきだという左脳系の指令をまともに受けてしまうと、かえって西洋医学的な還元的先入観に支配されしまって、盲点が広がってしまいかねないからです。

 

 

また、はじめに仮説を立てて、次に検証を加える、といったプロセスを重ねていくと、次第に勘が鋭くなり、感覚も研ぎ澄まされてくるというメリットがあります。

 

この方法は、西洋医学的にも応用可能であり、たとえば、問診や打聴診などの簡単な診察によって、心臓の拡大を疑った場合、

 

レントゲン撮影をする前に、その大きさを予め推定しておいてから撮影して、予測と実際の画像所見がどれだけ一致していたかどうか、

 

ということは医師一人だけでも実行可能なセルフトレーニングです。

 

 

さて、こうした前置きの後に、陰陽とは何か、に戻ってみましょう。

 

 

陰陽は表-裏(部位)、寒-熱(生理的活動)、虚-実(組織構造)を統合した概念です。

 

 

とは人体の構造的物質的な側面、とは心身の機能的運動的な側面(心理機能と生理機能)を指します。

 

陰という人体の器に陽という内容が心身の総体が満たされていて、両者は相互依存の関係にあると考えます。

 

 

典型的な<陰証>と見立てることができる場合では、

 

病気の部位裏(身体の腹面、下部)にあり、生理的活動性(抑制、衰退)状態であり、

 

病気の影響を受けている組織構造(筋骨、五臓)で、「血」の状態に変動が生じ易いです。

 

 

たとえば、お腹(裏)が冷えて(衰退)下半身の筋力(筋骨)が低下しているような病人は「血」が不足しているか、巡りが悪い可能性があります。

 

このような病人は<陰証>と見立てられることでしょう。

 

 

典型的な<陽証>と見立てることができる場合では、

 

病気の部位表(身体の背面、上部)にあり、生理的活動性は(興奮、亢進)状態であり、

 

病気の影響を受けている組織構造(皮毛、六腑)で、「気」の状態に変動が生じ易いです

 

 

たとえば、背中や肩(表)が凝っていて、気持ちが興奮している状態(興奮、緊張亢進)、鳥肌は立つが汗がかけない(皮毛)という病人は「気」の流れがせき止められているか、上逆している可能性があります。

 

このような病人は<陽証>と見立てられることでしょう。

 

 

しかし、実際の臨床上では、陰陽錯雑(いんようさくざつ)といって、陰の中にも陽があり、陽の中にも陰があることが多く、

 

このあたりを深く見立て、一人一人の全体像を把握することが必要になります。

 

 

なお、水氣道®の稽古のプログラム体系も、身と心のバランス陰陽のバランスの調整に向けて構成されています。

 

水氣道®の稽古を通して、私たちは自分自身の見立てをすることができるようになり、また、それに基づいたバランス調整プログラムを組み立てて実行できるようになります。

心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)

 

<摂食障害>

 

摂食障害は、食行動の異常をきたす病気で、患者さんの数は増加傾向にあります。

 

その背景は、長引くダイエットブーム、日常生活上のストレスの増大などとされています。

 

最近では、身体的障害の他に発達障害、自閉症、精神疾患との合併症もみられ、治療に難渋するケースが目立ちます。

 

複数の医療機関を渡り歩いた揚句に高円寺南診療所に辿り着いたという方が、当方では典型例です。

 

 

摂食障害の男女比は1対20です。女性の障害有病率は神経性やせ症で0.9%、神経性過食症では1.0%以上とされます。

 

 

摂食障害の基本となる病型は、神経性やせ症です。

 

「摂食制限型」という表現型から、ある時点で空腹感などに耐え切れずに過食を伴うようになると「過食・排出型」という表現型に変化します。

 

これに対して、神経性過食症の場合には、もともと神経性やせ症として始まりますが、外見上ではやせが目立たないこともあります。

 

また、いわゆるうつ病、境界性パーソナリティ障害などが合併あるいは潜在していて過食という表現型をとることもあります。

 

 

治療方法としては外来通院治療と入院治療があります。

 

高円寺南診療所では外来通院治療を専らにしていますから、入院治療の必要な方は外部の病院に紹介することになります。

 

入院治療の必要な方とは、極端に体重が減少していて生命の危険が迫っているようなケースです。

 

 

治療指針として、英国のNICEガイドラインや米国精神医学会のガイドラインが出されていますが、NICCでは、神経性過食症については早期来院で症状経過を観察し、患者さん自身が自分の症状を記録するとか規則正しい生活をするなど、前向きに症状改善に取り組み、治療者はそれを援助する指導付ヘルプという方法を推奨しています。

 

 

日本の多くの医療機関では、薬物療法が主体です。

 

神経性過食症ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の有効性が認められています。

 

薬は治療効果を高めますが、薬だけで治療することは難しいので、生活改善を行いながらの使用が推奨されています。

 

 

そこで高円寺南診療所でも、神経性過食症に対しては外来治療(生活指導心理療法薬物療法)に加えて院外治療(水氣道®聖楽院での音楽療法)がとても役に立っています。

 

ただし、残念ながら、本人の自覚と改善のための姿勢が欠如しているタイプの神経性やせ症の治療成績に関しては芳しくありません。

 

 

心理療法としては、諸外国での標準的な非薬物療法が2つほどあります。

 

その一つが、① 神経性過食症に特化した認知行動療法プログラムです。

 

 

これは治療初期に1週間に2回通院して1時間面接する方法ですが、日本の現行の保険医療制度下で実施することは事実上不可能だと思います。

 

 

もう一つが、② 対人関係療法です。

 

 

この治療法は、努力すればするほど治療効果の上がる治療法です。

 

「症状に振り回されないようになるための強力な手段」を生活の中で試し、スキルを高めていく努力が治療になるからです。

 

具体的には、家族やパートナーなど「重要な他者」との「現在の関係」に焦点を当て、感情を指標に周りの状況に変化を起こすことで病気を治していきます。

 

対人関係療法のなかで、患者さんは以下の3つの課題に取り組みます。

 

自分の気持ちをよく振り返る(自分との関係を改善する)

 

自分の周りの状況に変化を起こす(行動の仕方を改善する)

 

対人関係スキルを高める(他者との関係を改善する)

 

 

これらの3つの課題に取り組むことによって、【自己志向(自分との関係+行動の仕方)】と【協調性(他者との関係)】をバランスを取りながら高めていきます。

 

【自己志向】と【協調性】のバランスは安定した「愛着(アタッチメント)」の土台にもなります。

 

 

対人関係療法に取り組む中で、【関係性(協調性)】という安心基地は【自己志向(自己受容)】を支え、これによって健全な【関係性(協調性)】が維持できることを体感的に理解しながら、病気から回復していきます。

 

 

このような明確な課題と取り組む過程で高められる受容なスキルが3つあります。

 

それは、

 

□心の状態の変化についての気づき(自分との関係を改善する)

 

□ 考え・感情・情動のコントロールについての気づき(行動の仕方を改善する)

 

□ 自己概念や関係の中における役割についての気づき(他者との関係を改善する)

 

 

これらのスキルを磨くことによって病気の治療だけでなく再発防止までを目指します。

 

以上は対人関係療法ですが、これは水氣道®や聖楽院で実践している方法論にも当てはまります。

 

水氣道®は集団(小社会)の中で温水に浸かりながら行う有酸素運動です。そのため身体面でのトレーニング効果も加わり、まさに心身のバランスを再統合する治療法として、通常の対人関係療法より優れた側面をも併せ持っています。

 

 

このことは、会員の皆様であればどなたも実感しておられるのではないかと自負している次第です。

 

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<リウマチ結節、痛風結節、それとも石灰化上皮腫?>

 

 

リウマチ科では、しばしば皮下腫瘍や結節と遭遇することがあります。

 

そこで役立つのが超音波検査です。とくに関節リウマチでは、表在超音波による関節滑膜の観察は日常的な検査項目になってきました。

 

 

最近では体表部の病変の診断に表在エコー検査は、甲状腺や唾液腺、耳下腺や皮膚科・形成外科領域の表在腫瘤の有無や周囲のリンパ節の腫れを調べます。

 

また、血流ドプラー法を併用すれば、炎症の程度や拡がり、あるいは悪性腫瘍に特徴的な異常血流パターンの有無を確認できます。

 

さらに悪性が疑われる腫瘤をエコーで確認しながら針を刺し、エコー下穿刺吸引細胞診をおこなって、採取した細胞を顕微鏡で観察してより精度の高い検査を行うことがあります。

 

 

ようやく先々週の水曜日、11月1日に東京警察病院形成外科を受診し、事前の血液検査を済ませて、8日に手術による腫瘍摘出、15日に抜糸処置および摘出腫瘍の病理診断報告を得て終了となりました。

 

縫合技術は一般外科の水準とは異なり、芸術的でありました。

 

形成外科は美容外科を兼ねることが多いのでそのためかもしれませんが、お見事であります。

 

 

さて病理の結果は、石灰化上皮腫といって、中高年者ではなく、子供に多い腫瘍ということで、一つ勉強になりました。

 

水氣道を創始して、継続的に鍛錬している人体に発生する腫瘍とは、いかなる腫瘍か、自分自身を第三者の立場から観察し、考察していましたが、何となく納得できてしまう結果であったように思います。

 

つまり、私は一昨日で58歳になりましたが、まだまだ成長期の肉体を持っているということです(医学的根拠はありませんが!)

 

 

最近では体表部の病変の診断に表在エコー検査は、甲状腺や唾液腺、耳下腺や皮膚科・形成外科領域の表在腫瘤の有無や周囲のリンパ節の腫れを調べます。

 

また、血流ドプラー法を併用すれば、炎症の程度や拡がり、あるいは悪性腫瘍に特徴的な異常血流パターンの有無を確認できます。

 

さらに悪性が疑われる腫瘤をエコーで確認しながら針を刺し、エコー下穿刺吸引細胞診をおこなって、採取した細胞を顕微鏡で観察してより精度の高い検査を行うことがあります。

 

 

そこで、日本形成外科学会のHPを検索してみたところ、石灰化上皮腫について、一般の患者さん(あるいはその家族)にもわかりやすい言葉で説明してありました。

 

このような文体で表現することは、なかなかの技術を要します。

 

私の文体は、硬く、重く、難解になる傾向があるので、大いに参考にさせていただこうと思います。

 

ただ、私が知りたかったのは、石灰化上皮腫に対する形成外科学会での検査体系についてです。

 

検索してみると、レントゲン、CT、MRIなどは紹介されていますが、超音波検査の有用性については触れられていませんでしたので、一般にはまだ余り普及していない可能性があるのではと推定しました。

 

 

もっとも、警察病院でお世話になったDr.平井は触診のみで石灰化上皮腫を見抜いておられたのでさすがであります。

 

 

一般社団法人日本形成外科学会のHPより引用

 

ただし、下線太字は飯嶋正広が加工しました。

 

一般社団法人日本形成外科学会HP

 

 

1.疾患の解説 

 

どのような病気か?

 

石灰化上皮腫とはその名の通り皮膚の一部が石灰のように硬くなる良性の皮下腫瘍の一つです。

 

他の皮膚皮下腫瘍と同じようになぜ発生するのか原因は分かっていませんが、毛母腫(pilomatorixoma)という別名が現すように毛根に存在する毛母細胞を起源とする腫瘍です。

 

比較的若い人、特に小児の顔(まぶた)、腕、頸などに発生することが多いようです。

 

 

症状は?

 

臨床的には皮膚の直下に石の様に硬いしこりを触れます。

 

殆どの場合無症状ですが、時に痒みや圧痛(押すと痛い)を感じることもあります。

 

皮膚の色は正常か、または腫瘍の上の皮膚が薄い場合は下の腫瘍が透けて見えて黄白色や青黒い色に見えることもあります。

 

触ると表面は凸凹していますが、境界は明瞭で可動性は良好です。

 

一般的に悪性腫瘍(癌や肉腫)は硬く、表面が凸凹していることが多いのですが、悪性腫瘍は表面から触って腫瘍を動かそうとしても殆ど動かないことが多いのに対してこの腫瘍は皮膚の下で移動するという違いがあります。

 

ただ大きなものや、可動性が悪いもの、皮膚表面が破裂してしまったものなどでは、時として悪性腫瘍と見分けがつかないこともあります。

 

 

どうやって診断するか?

 

診断はまず臨床的に上記のような臨床症状からある程度判断することができます。

 

ただし粉瘤、ガングリオン、類皮嚢腫など他の皮膚皮下良性腫瘍と見分けがつかない場合もあります。

 

レントゲン撮影をして石灰化を確認することにより、更に診断の確度は高まります。

 

ただし、石灰化の程度は様々なので、石灰化が進行していない場合レントゲンで映し出されない場合もあります。

 

また部位によってはCTMRIで周辺臓器との位置関係を事前に確認しておかなければならない場合もあります。

 

 

2.治療法

 

この腫瘍の成長はゆっくりですが、自然に治ってしまうことはありません。

 

また飲み薬や付け薬、レーザーなどで腫瘍をなくすこともできません。

 

細菌感染を起こせば赤くはれ上がります。

 

また既に述べたように悪性腫瘍との鑑別が必要な場合もありますので、原則的には外科的に手術をすることが望ましいと考えられています。

 

そして手術で摘出した組織を顕微鏡で見る検査(病理学的検査)することによって確定診断をします。

 

 

摘出術は、年齢と腫瘍の大きさにもよりますが、小学校高学年以上であれば殆どの場合局所麻酔で日帰り手術が可能です。

 

年少児の場合や大きなものの場合には全身麻酔が必要です。

 

傷痕に関しても形成外科的な手技を用いることでかなり目立たない傷痕にすることができます。

 

(中にはケロイド体質といってどんなに傷を丁寧に縫合しても傷痕が赤く盛り上がってしまう方もいますが、その場合は術後更にケロイドの治療が必要になります。)

 

 

3.治療により期待される結果

 

手術することによって治癒が期待できます。

 

腫瘍自体がもろいので、完全摘出できなかった場合再発する場合もないわけではありませんが、その場合も再手術で根治が期待できます。

 

本腫瘍が転移したり、本腫瘍が直接の原因で生命を脅かすことはありません。

今回はT.Hさんから水氣道の所感をいただきました。

 

T.H

 

THさんが水気道を頑なに固辞する気持ち、良く分かります。

 

なぜなら実は私自身も水が得意でなかったからです。

 

ドクターが日頃言っているのは、

 

<水が苦手な人ほど水氣道で生まれ変われる>ということです。

 

 

私にも水が恐怖だった記憶があります。

 

私が水氣道に初めて参加した14年前、

 

それは1月末のことでした。

 

その日のことを私はいまでもはっきりと思い出します。

 

 

さてTHさんが「試しに・・・」と思ったこと、これを<受容>といいます。

 

それがとても良い結果を生み出しました。

 

 

THさんは、なぜ水氣道を試してみようと思ったのでしょうか。

 

水氣道を始められた当初は、水氣道が楽しいなんて思いもつかなかったようです。

 

それでもTHさんは水氣道を淡々とお続けになっているように見えました。

 

 

THさんが水氣道は「楽しいかも」と思えるようになったのは、

 

水氣道を始めてしばらくしてからのようです。

 

その頃には思い込みや心の囚われからふっきれていたようですね。

 

 

またTHさんはその頃、すでに私との自律訓練法を始めていらっしゃいました。

 

自律訓練法の効果もあったように思われます。

 

 

何らかのきっかけによって、

 

囚われの気持ちから解放されたこと、

 

それによって楽になれたことを実感できたこと、

 

成せば成ると思えること、

 

これを<自己効力感>といいます。

 

これの経験ができたことは良かったです。

 

 

「体を委ねればいいんだ」という<気づき>が、

 

気持ちに変化をもたらし、

 

積極的な行動を促す心的態度を養いました。

 

つまり、<心の変容>により、

 

これらの一連の過程を実感できたこと、

 

そして、新たな、より生産的な行動様式を獲得すること、

 

つまり、<行動変容>へと繋がっていったこと、

 

これらはとても貴重な体験です。

 

 

いずれにせよ、水氣道は団体運動です。

 

このこと自体に深い意義があります。

 

なぜなら、人間は社会的・経済的な存在であって、

 

一人で引きこもっていては生き永らえることができないからです。

 

 

ですから、集団での活動の中にあっても、

 

自分のペースを見失わないこと、

 

逆に言えば、自分本来のリズムやペースを発見すること、

 

このことの大切さを理解しながら稽古を続けていくことが一番です。

 

 

水気道は、ドクターが言うように生涯運動です。

 

仲間と共に楽しく自分を活かしながら継続していくことが大切です。

 

 

これからもよろしくお願いします。

 

 

日本水氣道協会 上席支援員 水氣道従弐段下

 

水氣道活水航法 直伝 林 亮博(はやし あきひろ)

 

 

< ドイツ語圏の医学との交流 >

 

 

インターネット検索で、興味深いタイトルの書物を見つけました。

 

日独医学交流の300年 (1992)E.クラース 比企 能樹 (ドイツ語) ハードカバー

 

原著はドイツ語で、日本語の翻訳の本です。

 

ドイツ語で、以下の紹介文が掲載されていました。

 

ドイツ語の引用文の後からお読みください。

 

 

Aus dem Geleitwort von Dr. H. Götze: "Das 50jährige Jubiläum der Japanischen Medizinischen Gesellschaft 1984 in Tokyo gab Anlaß zu einem historischen Rückblick auf Beginn und Entwicklung der wissenschaftlich-kulturellen Beziehungen zwischen Japan und Deutschland....Die Kontinuität, aber auch den Wandel ausführlicher darzustellen, ist Anliegen des Buches." Die Geschichte der Zusammenarbeit in der Medizin zwischen Deutschland und Japan reicht bis ins 17. Jahrhundert zurück. Erstmals werden diese Beziehungen ausführlich in einem Buch dargestellt. Vertreter beider Länder lieferten Beiträge aus verschiedenen Teilgebieten der Medizin, die jeweils in deutsch und japanisch abgedruckt sind. Dieser außergewöhnliche Band mit seinen zahlreichen Fotografien wird nicht nur Ärzte, sondern auch Geschichtswissenschaftler faszinieren.

 

 

あまり時間が無いので、サックリと訳して見ます。

 

 

H.ゲーツェ医師による序文から:

「東京で 1984 年に日本医師会50 周年記念をもたらした最初の歴史的振り返りと日本とドイツの科学的、文化的な関係の端緒とその後の継続性」

 

17 世紀におけるドイツと日本との間の医学協力の歴史。

 

これらの関係は、この本ではじめて詳細に表現されます。

 

 

両国の代表者は、ドイツ語と日本語で出版した医学の様々な分野でドイツ語と日本語での出版に貢献しました。

 

豊富な写真の数々は医師だけでなく、歴史家を魅了することでしょう。

 

 

以上ですが、残念ながら一般の読者の興味を引き立てる内容ではないようです。

 

 

さて、私は、現在200頁のドイツ語の心理学書を英訳する作業を続けています。

 

これは一般の読者にも紹介したくなる興味深く有益な具体的内容の宝庫です。

 

 

それは<Synoptische Psuchotherapie>という本で、

 

Hans Peter Bilekという精神神経科専門医とHarald Moriという臨床心理士が編者となって心療内科専門医を含む他の4人の専門家との共著の本です。

 

これは、私が昨年ウィーンを訪れたときにHarald Mori氏からいただいたものです。

 

 

Synoptische Psuchotherapieというドイツ語タイトルは、英語で直訳するとSynoptic Psychotherapyとなります。

 

 

Synopticという単語は、梗概の、概要の、大意の、といった意味の英単語ですが、名詞として用いられる場合は、共観福音書(内容・構成に共通性の高いマタイ・マルコ・ルカの3福音書)のうちの一つ、を意味する言葉であることが興味深いところです。

 

 

タイトルを直訳すると概要心理療法になりますが、これは心理療法提要とか心理療法概論としてしまうと明らかな語訳になってしまいます。

 

私は<共観心理療法>という訳が面白いと思っています。

 

もちろん原著はキリスト教の本ではありませんし、<共観>は心理学で多用される<共感>とは異なることも指摘しておかなければなりません。

 

 

結局、書物のタイトルは、その書物全体を通読して、内容をしっかりと把握したうえで訳語を決定しなければならないのだと思います。

 

 

日本語でなく英語に訳す試みは、著者の意図をきちんと汲み取れているかどうか、という確認の手段として必要だからです。

 

英訳したものを原著者に点検していただき、誤解が無いかどうかを確認・修正していただく予定です。

 

また、この本は専門家向けであって一般向けではないので、あえて急いで日本語訳にする必要性は高くないからです。

 

 

しかし、最終的には、解説を加える形で、日本の一般の読者の皆様にも読んでいただけるものにしたいと考えています。

 

 

英訳作業は、ドイツから日本の東京工業大学建築学科に留学中のHans Henrik Frickeke 君と各週の火曜日の夜に進めています。

 

彼は建築家の卵であり、医学や心理学の専門でないので、かえって英訳もわかりやすい平易な文書にすることができます。

 

 

私は日本心療内科学会とドイツ心身医学会(DKPM)の姉妹関係締結文書の起草者として、このような作業を続けていくことで、将来に向けての責任の一端を果たしていこうと考えております。

 

総合アレルギ‐科(呼吸器・感染症、皮膚科・眼科を含む)

 

<アレルギー性鼻炎のトータルマネジメント>

 

 

スギ花粉症を含むアレルギー性鼻炎は非常に増加しています。

 

全国的有病率調査では1998年⇒2008年で、通年性アレルギー性鼻炎(18.7%⇒23.4%)、スギ花粉症(16.2%⇒26.5%)であり、現在では少なくとも4人に1人の割合であると推計できます。

 

 

そこで今回は

①鼻炎とは何か?

②治療法の選択は?

③実際の薬剤の特徴は?

という質問にお答えする形でまとめてみました。

 

 

①鼻炎とは何か?

 

鼻炎は様々です。大別すると1、感染性、2、過敏性非感染性、

3、刺激性、4その他(萎縮性鼻炎、特異性肉芽腫性鼻炎)です。

 

 

高円寺南診療所で最も多く診療しているのが2の過敏性非感染性鼻炎に含まれるアレルギー性鼻炎です。

 

アレルギー性鼻炎には、ダニなどが原因となる通年性と、主として花粉が原因となる季節性があります。

 

後者には花粉-食物アレルギー症候群を伴うケースもあり、注目されています。

 

 

アレルギー性鼻炎には、風邪に代表される感染性の急性鼻炎と、急性・慢性副鼻腔炎との鑑別を要することが多いとされますが、風邪がきっかけとなってアレルギー性鼻炎を発見することがとても多いです。

 

非感染性の好酸球性副鼻腔炎は難治性なので、見落とさないように注意しています。

 

 

問題なのは、生理的で正常な鼻粘膜の防御作用を病的なものと素人判断して不適切な対応をした結果、自分で病気を作り、悪化させている方が増えていることです。

 

 

②治療法の選択は?

 

患者さんのタイプに応じた治療法の選択が必要です。

 

 

たとえば花粉症であれば、大切なのは、初期療法の開始時期です。

 

使用する薬剤の効果発現までの日数や患者さんの例年の飛散花粉に対する過敏症の特徴が関与するので、それらの情報を整理することがコツだと思います。

 

 

アレルギー性鼻炎一般について抗原回避は有意義です、そのための工夫は、患者さんが自らできる重要な治療法です。

 

 

実際の治療法としては、アレルギー性鼻炎の病型(くしゃみ・はなみず型、鼻づまり型)とともに重症度評価をして分類し、中等症以上である場合の薬物療法には、病型を考慮したうえで作用機序の異なる薬剤を複数組み合わせる必要があります。

 

抗ヒスタミン薬は、アレルギー性鼻炎に有効性が高く、日中の眠気などの副作用が弱い第2世代の抗ヒスタミン薬を用います。

 

 

根本的な治療として舌下免疫療法があります。

 

高円寺南診療所では、治療の限界や注意点もご説明したうえで実施しています。

 

また、薬物によらない全身的治療法として水氣道®聖楽院でのヴォイストレーニングをお勧めしています。

 

アレルギー性鼻炎で鼻閉型の方には、しばしば低換気で低酸素血症の方がみられ、不眠傾向を伴い運動不足のため体力が低下しています。

 

しかし、屋外での運動はアレルゲン暴露や、冷え、脱水、粘膜乾燥のためアレルギー性鼻炎を増悪させます。

 

これに対して水氣道は屋内の温水プールでのエクササイズです。

 

水場であるためアレルゲンは極めて少なく、湿度や温度が保たれる環境下での有酸素運動であるため、アレルギー性鼻炎の患者さんにとっては好適なエクササイズです。

 

なお、喘息はアレルギー性鼻炎に合併しやすい病態です。

 

水氣道は、アレルギー性鼻炎のみならず喘息にもきわめて有効であり、とくに鼻炎合併喘息(気管支喘息の3人に2人はこのタイプ)では、薬物療法を凌ぐ治療効果が期待できます。

 

 

③実際の薬剤の特徴は?

 

治療薬は症状の病型と重症度により使い分けます。

 

適切な併用療法を積極的に行うことも推奨されています。

 

 

わずかな初期症状であっても第2世代抗ヒスタミン薬抗ロイコトリエン薬を開始することが、その後の経過を改善します。

 

 

中等症以上の場合は、病型を問わず通年性アレルギー性鼻炎や花粉症に鼻噴霧用ステロイド薬が標準的に用いられ、実際に好ましい治療成績が得られています。

 

鼻噴霧用ステロイド薬の特徴は1)効果が強い、2)効果発現は約1~2日と早い、3)副作用が少ない、4)鼻アレルギーの3症状(くしゃみ、はなみず、はなづまり)に等しく効果がある、5)投与部位のみに効果が発現し、全身的副作用がない、という素晴らしい性質を兼ね備えています。

 

鼻噴霧用ステロイド薬は全身的副作用がないばかりでなく、治療により鼻閉が解消されると、口呼吸や睡眠障害が改善され、その結果、合併することの多い気管支喘息まで改善されることが多いです。

 

鼻噴霧用ステロイド薬には様々な剤型があり、患者さんの希望に併せて最適なものを選択することで計画的で無駄の少ない治療が継続できています。

一般内科(循環器・消化器・内分泌・代謝・栄養関連の病気)

 

<膠原病に伴う消化器疾患>

  

膠原病のお話は、本来であれば木曜日、日々の臨床⑤:総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)で度々採り上げています。

 

それを、なぜ火曜日なのか、というと、病気が発生する区分が消化器だからです。

 

 

膠原病は、内科のリウマチ科の領域ですが、そもそも膠原病は全身性疾患であるということをご理解いただきたいと思います。

 

膠原病は免疫異常を背景として全身の結合組織と血管の障害を引き起こします。

 

今回テーマとする膠原病に合併する消化器病変は、潰瘍病変、運動機能障害、蛋白漏出性胃腸症、アミロイドーシス、腸管嚢腫様気腫症、悪性腫瘍など多様です。

 

 

これらの消化器疾患を伴う代表的な膠原病として以下の2つ挙げることができます。

 

①全身性エリテマトーデス

 

②全身性硬化症

 

 

まず、①全身性エリテマトーデスにおける消化器病変は、

 

①-1.ループス腸炎、および①-2蛋白漏出性胃腸症が重要です。

 

 

①-1.ループス腸炎の本体は血管炎です。

 

これは小腸を主体とした広範囲な浮腫、腹水を認める虚血腸炎型と、主として大腸を主体として潰瘍や穿孔を生じる多発潰瘍型があります。

 

 

①-2.全身性エリテマトーデスに伴う蛋白漏出性胃腸症は、若い女性に多く、下痢が続き、浮腫みが顕著となります。

 

正常な小腸がもつひだ(ケルクリング皺襞)が腫大し、粘膜浮腫や発赤を生じます。

 

 

ついで、②全身性硬化症の消化管病変は、全消化管共通に認める固有筋層の線維化と筋組織の萎縮によって起こります。

 

代表的なものは、

②-1.食道病変(胃食道逆流症)

 

②-2.偽性腸閉塞、および

 

②-3.腸管嚢腫様気腫症です。

 

 

②‐1.食道病変(胃食道逆流症)は、食道下部にある括約筋が弛緩することが原因となり、胃から食道への逆流が起こり、さらに食道下部の蠕動運動が低下することが原因となり、逆流物が胃内に速やかに送り込めないために生じます。

 

 

②-2.偽性腸閉塞は、予後不良の病態です。

 

小腸の粘膜下平滑筋の萎縮や線維化によって生じます。小腸の蠕動運動が低下することにより小腸細菌叢が増殖することで吸収不良症候群を呈します。

 

 

②-3.腸管嚢腫様気腫症は、やはり腸管蠕動低下によって細菌叢が増殖し、腸管内圧が上昇し、また微小粘膜病変による腸管壁内へのガス貯留が生じることで嚢腫様の拡張をきたす病態です。腸管壁が穿孔することもあります。

 

 

以上のケースでお示しした通り、リウマチ内科医は、様々な合併症を有する膠原病を扱うため、消化器内科をはじめとする総合内科を中心とし、

 

また関節リウマチなどの整形外科でも扱われる領域にも深く関与する総合医療の立場をとるべき必要性があることを確認することができると思います。

<分類困難な患者群から学んできたこと>

その4・・・“患者モドキ”について

 

 

患者モドキ”とは、患者としての自覚がない来談者です。

 

たいていは、家族など身内の問題で自らが悩んでいる方々です。

 

こうした方々は、① 電話でのお問い合わせ、②直接ご来院の上でのご相談、いずれの場合もあります。

 

 

実際には①の場合が多いのですが、高円寺南診療所のような零細医療機関では十分に対応できないことが少なからずあります。

 

なぜなら、ご相談内容が明確でないまま、長電話になりがちで、受付機能が麻痺してしまうからです。

 

これに対しては、事務職員を二人体制とすることで緩和できますが、零細医療機関では常時二人体制というのは現実には難しいです。

 

電話対応のためだけに専属の職員を一人確保する余裕はありません。

 

 

最近とくに増えているのは、<安全で安価な欲求不満のはけ口>として、あちこちの開業医に電話しまくっているようなタイプの方々です。

 

訴えは多く、複雑で、切々と苦悩を訴えるので、つい話に引き込まれてしまい、あるいは一方的に途切れなく話し続けるのですが、結局<遠方なので、通院できない>という方です。

 

最初から、受診するつもりのない、得体のしれない方は、被害者意識、弱者意識が強く、こうした“魂の病”にとりつかれた匿名の病人の方々に振り回される医療機関は非常に困惑します。

 

高円寺南診療所が対応できるのは、身体疾患の方の他には、せいぜい、何とか病識があり、受診意思のある“心の病”の方までが限度です。

 

 

電話対応で、最も困るのは、どうしても医師(院長)に取り次いでほしい、という強引な方です。

 

明らかに業者であれば、窓口で鄭重にお断りして済むことですが、中には患者成り済ましの方、公的機関の職員や各種関連医学会の事務局員を騙る方など、やっかいな方々も紛れ込んできます。

 

 

医師(院長)は、大抵の場合は、すでに目の前の患者さんを診察しております。

 

順番を待って診察室に入ってこられた患者さんにとっての貴重な時間を中断する権利など、面識すらない第三者にあろうはずはない、と考えますが、いかがでしょうか。

 

電話で用件を済ませたいと考えている人には、精神的な余裕が無く、大きな不安に取りつかれているためか、相手方がいつでもすぐに対応して当然と考えているようですが、ご一考願いたいところです。

 

医療に限りませんが、迷惑を受けているかもしれない第三者が具体的にイメージできないと、ついついマナー違反であることに気付けず迷惑行為をしてしまいがちです。

 

 

ただし、緊急の問い合わせ、ということもありますから、やむを得ないこともあります。

 

ですから全面的にご遠慮願うこともできず苦慮します。

 

そこで、何とかご自分の足で来院することが可能な方は、受診していただくのがベストです。

 

それが不可能な場合は、近医あるいは場合によっては救急車の要請をご一考いただきたいと思います。

 

 

②の場合、直接ご来院の上でのご相談であっても、ご用向きが来談者ご本人でない場合の対応も簡単ではないことが少なくありません。

 

この場合も来談者は直接、医師(院長)との面談を希望されることが多いです。

 

しかし、零細医療機関であっても高円寺南診療所はチーム医療を構築し展開することによって、規模の大きな医療機関が必ずしも得意としない重要なサービスを提供することができるのです。

 

つまり、各職員が現場での一つ一つの臨床経験の積み重ねと、毎週実施している院内カンファレンスで研修を続けています。

 

それにもかかわらず医師(院長)以外の高円寺南診療所の一人一人の職員を信頼していただけないとすれば、それは医師(院長)自身の管理・教育能力を含めて信頼されていないことと同義であるとすら考えています。

 

信頼のないところには、その後のチーム診療において双方にとって好ましい結果はもたらされません。

 

ですから、担当職員との事前の面談をお受けいただけない場合は、ご相談はお引き受けしないようにいたしております。

 

 

また、<病識の無い、受診意思のない>家族を何とか説得して欲しい、という御希望も少なくないです。

 

公的な相談窓口がみつからずお困りであることには同情いたしますが、それにしても全くの筋違いです。

 

病識があって、さらに受診意思があってはじめて“患者”というステータスが得られるはずだからです。

 

病識があっても、受診意思が無ければ、“病人”ではあっても、“患者”ではありません。

 

医療機関はすべての“病人”を受け入れる所ではなく、それに相応しい“患者”様のみを受け入れ、医療上の奉仕をする所です。

 

 

大切なのは、<病識がないが、患者本人以上に困っている>という御家族の方です。

 

私は、このようなご家族の方を、“患者モドキ”の一種に分類しています。なぜなら、一定の割合で、このような皆様自身が“病人”だからです。

 

“病人”の方が、ひとたび医療機関を訪れれば“患者”になるのが通例ですが、どうしても“患者”として扱われたくない方々は、まさに“患者モドキ”ではないでしょうか。

 

 

多くの小児科のドクターも、いわゆる“モンスター・ママ”などの対策で苦慮されているようです。

 

あまり使いたくない言葉ですが、<母原病>の患者さんなどは、典型的な“患者モドキ”として分類できそうです。

 

しかも、<母原病>は、思春期頃までに解決されないまま、年余にわたって継続し、さらに複雑化し、子が中高年に達し、社会的にも十分成熟しているにもかかわらず、不適切に親が介入してくることもしばしばです。

 

コミュニケーション不足による思い込みや囚われ、さらには妄想に至っていることがあり、それを医療機関や学校、場合によっては職場などに責任を転化して、自分の気が済む解決を迫ろうとするケースも散見されます。

 

原因や責任の所在が明らかであっても、他に原因や責任を転嫁しようという態度であれば、永久に問題は解決できないと思います。

 

 

いずれの専門か、ということによらず、自らの病識が無い、あるいはそれを受容しようとしない来談者の扱いは、とても厄介であり、保険診療制度の枠組みでは、とうてい解決できないテーマの一つだと思います。

 

医師をはじめとする医療従事者、介護従事者は、決して強い立場にはありません。

 

むしろ、社会的弱者であるとさえ思われるような事例が増えてきているのは、とても残念な思いがいたします。