日々の臨床 ③:11月21日 火曜日<心電図…自動解析心電計の有用性と限界>

一般内科(循環器・消化器・内分泌・代謝・栄養関連の病気)

 

<心電図…自動解析心電計の有用性と限界>

 

 

心電図は日常診療において最も身近で欠かすことのできない臨床検査です。

 

そして、心電図の判読は難しいとして敬遠されがちだが、実際は異常所見の数は限られているので、基本を押さえて、段階を踏んで判読を試みれば、決して難しくないとのことです。

 

 

ちなみに多くの心臓病の権威の先生に伺ってみると、心臓病の診断は、正確な病歴聴取身体所見心電図心エコー胸部X線(レントゲン)だけでほとんど可能だと言います。

 

つまり、高円寺南診療所では、心臓病の診断に関しては不足のない環境にあるといえます。

 

 

高円寺南診療所の心電計は最新の自動解析システムが搭載されているので、以前は急性心筋梗塞の見逃しが多いことが指摘されていた心電計も、新しいポイントスコア法を用いることで大幅に改善しました。

 

また従来、判読が難しいとされてきたWPW症候群の部位判定やブルガダ症候群およびJ波症候群などに関してもある程度の判定が可能となってきています。

 

 

しかしながら、自動解析心電図を実際に使用して、自動解析心電図の長所ばかりでなく短所にも気づかされました。

 

それは、見落とし率を小さくするために必然的な欠点なのですが、まず第一に、所見の読み過ぎによる疑陽性率が高い傾向があることです。

 

第二に、患者さんのわずかな体動や筋緊張に伴って生じるノイズの混入などを過大に読み取り、不整脈と判定してしまいやすいことです。

 

第三に、コンピュータは不整脈の解析はやや苦手のようだということです。

 

その原因は心電図の最初の波形となるp波の認識が難しいからだとされています。

 

 

それにもかかわらず、私は自動解析心電図をフル活用しています。

 

それはちょうど人様とのお付き合いと一緒で、相手の長所は短所にもなるからです。

 

以上に列挙した自動解析心電図の短所ばかりを取り除こうとすると長所すら失ってしまいかねません。

 

一見短所と見えても、それを良く理解すれば長所として生かすことができるはずだということです。

 

 

高円寺南診療所では、安静時心電図検査の他に、必要に応じて運動負荷試験による心電図検査を行うことによって、診断の精度を高め入ています。

 

運動負荷試験の主な目的は、虚血(冠動脈の機能的狭窄)の有無の診断、不整脈の診断です。

 

 

 少し専門的になり恐縮ですが、不整脈の診断や治療方針決定で有用な例としては、先天性QT延長症候群(遺伝子型の予測)や治療方針の決定、カテコラミン誘発多形成心室頻拍(CPVT)の診断、特発性心室頻拍の誘発、徐脈の治療方針決定などに有用です。

 

 

医療の主役は医師ではなく患者さんであり、また診断するのは機械ではなく人間である医師です。

 

生きた人間である患者さんに対して責任を負うことができるのは部分的な判断しかできない機械ではなく、総合的な判断が可能な人間である医師であるからです。

 

 

それから、何といっても信頼関係が大切です。

 

心臓病の診断は高円寺南診療所では十分に可能な環境であるとはいえ、それに対して最終評価するのは患者さん自身です。

 

そのため心臓病で特に不安の強い方には、病診連携の提携先である東京警察病院の循環器内科に紹介の上、ダブルチェックをしていただき、安心して過ごしていただけるように支援させていただいております。