日々の臨床 ②:11月20日 月曜日<だるい、疲れやすい:全身倦怠感とは?>

総合医療・プライマリケア

 

<だるい、疲れやすい:全身倦怠感とは?>

 

体がだるい、疲れやすい、体力が落ちてきている、こうした相談で高円寺南診療所を受診される方はとても多いです。

 

これらは、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん:General Malaise)と言います。

 

あらゆる病気で出現する症状なので、この症状だけで診断に至ることは困難です。

 

そこで、全身倦怠感以外の特異的な症状を問診によって確認したり、身体所見を把握したりするなどによって、原因の領域の絞り込みが必要です。

 

実際には以下のように4群に分けて情報を整理していくことも少なくありません。

 

①生理的疲労 

 

②器質的疾患

 

③精神神経性疾患 

 

④慢性疲労症候群

 

 

内科医としては、まず②器質的疾患の有無の見立てが重要です。

 

 

近年、原因不明の全身倦怠感をきたす疾患として、④ 慢性疲労症候群が注目されています。

 

この病気の発症には様々なストレッサーが複合的に関与しているものと考えられています。

 

すなわち、精神的ストレス、身体的ストレス、物理的ストレス(紫外線、騒音など)、科学的ストレス、生物学的ストレスなどです。

 

これらによってもたらされる免疫異常(細胞活性の低下、炎症性サイトカインの上昇、単球機能の異常など)がみられる他、神経系の異常(前頭葉の機能異常・萎縮など)を、内分泌系の異常(副腎皮質機能低下など)などが報告されています。

 

このような身体の変調が全身倦怠感の背景となります。

  

 

6か月以上持続する原因不明の全身倦怠感を訴える場合に<慢性疲労>と称しますが、慢性疲労症候群の診断のためには、大別して3つの前提があります。

  

 

前提Ⅰ:①疲労の原因となる器質的疾患の有無を確認する

 

① 下記の疾患がみられる場合は、診断を保留する

 

1)治療薬長期服用者(抗アレルギー剤、降圧剤、睡眠薬など)

肥満(BMI>40)

 

2)下記の疾患としては併存疾患として取り扱う

気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害不安障害

 

 

前提Ⅱ: 前提Ⅰで原因不明であるが、下記の4項目を満たす。

 

1)この全身倦怠感は新しく発症したものであり、急激に始まった

 

2)十分な休養を取っても回復しない

 

3)現在行っている仕事や生活習慣のせいではない

 

4)日常の生活活動が、発症前に比べて50%以下となっている、あるいは疲労感のため、月に数日は社会生活や仕事ができず休んでいる。

 

 

前提Ⅲ:以下の自覚症状と多角的所見10項目のうち5項目以上を認めるとき

 

1)労作後疲労感(労作後休んでも24時間以上続く)

 

2)筋肉痛

 

3)多発性関節痛 (腫脹はない)

 

4)頭痛

 

5)咽頭痛

 

6)睡眠障害(不眠、過眠、睡眠相遅延)

 

7)思考力・集中力低下

 

 

以下の他覚的所見は、医師が少なくとも1ヶ月以上の間隔をおいて2回認めること

 

1)微熱

 

2)頸部リンパ節腫脹(明らかな病的腫脹と考えられる場合)

 

3)筋力低下

 

 

最後に。慢性疲労症候群については、慢性疲労症候群(CFS)研究会、疲労研究会、文部科学省疲労研究班などが母体となって、疲労全般に関する研究発表、知識の交換の場としての「日本疲労学会(Japanese Society of Fatigue Science)」が平成17年に発足しました。  

 

この学会では、生理的疲労病的疲労慢性疲労産業疲労などの疲労全般を科学的に扱い、臨床的研究もおこなわれていますが、専門医制度は確立されていません。

 

 

私の視点からは、慢性疲労症候群の患者さんを専門的に診療できる医療機関や専門医は、日本においてはほぼ皆無に近い、と言わざるを得ません。

 

高円寺南診療所は、線維筋痛症など慢性疲労症候群の近縁疾患を含めて多数の症例を経験し、通常の医学的方法に加えて水氣道®や、今年発足した聖楽院での音楽療法など、慢性疲労症候群の患者さんの治療、社会復帰および再発予防に積極的に取り組んでいます。