日々の臨床 ⑦:11月11日 土曜日<水(すい)とは何か?>

東洋医学(漢方・中医・鍼灸)

 

<水(すい)とは何か?>

 

中医学(中国伝統医学)では、水を津液(シンエキ)と言います。

 

津液は体内のすべての正常な水分の総称です。

 

血液中の液体成分や組織間液、汗、尿その他の比較的清稀(さらさら・すっきりした成分)な水分をといい、細胞内液や、分泌液のなかでも比較的濃稠(ネバネバ・ドロドロとした成分)なものをといいます。

 

しかし、津と液とを厳密に区分することは現実的でないため、両者を一括して津液と称しています。

 

 

津液は気(キ)、血(ケツ)と並んで重要な体成分です。

 

気が陽に属するのに対して、津液は血とならんでに属します。

 

 

津液(水)の源は口から入った水です。

 

脾胃(上部消化管)によって吸収された水分は肺に運び上げられ

(現代医学的には、この間に門脈⇒肝臓⇒心臓⇒を経由して)、

 

水道である三焦を経由して全身に分布された後、腎の働きにより膀胱に集められます。

 

腎ではその一部が上騰して再利用(現代医学的には、腎尿細管での再吸収に相当)され、残りは尿として排泄されます。

 

 

このように中医学理論は大筋において現代医学・生理学と矛盾はありませんが、下線部については、現代医学的に説明することは困難です。

 

そこで、少し補足を加えて<臓腑器官で代謝された後の濁液>が三焦水道を経由して、と解釈し、<臓腑器官で代謝された後の濁液>とは静脈血と考えれば、グッとわかりやすくなります。

 

しかし、そもそも三焦水道とは何でしょうか?

 

 

三焦とは上焦、中焦、下焦の総称とされます。これらについては、別の機会の話題にしたいと思います。

 

 

津液(水)の病変とは?

 

津液の病変は、津液の損傷や不足、水分の積聚(病的な貯留)に分けられます。

 

 

津液の損傷(傷津)は、津液の損傷の軽度なもの、あるいは水分摂取不足などによる一時的な津液が消耗したもので軽度の脱水症状です。

 

現れやすい症状は、発熱、口渇、舌乾燥などです。

 

 

脱液(傷陰)は、全身の体液成分が枯渇した重篤な変化です。

 

高度な脱水状態で、意識障害や心不全などを伴います。

 

 

中医学の概念での肺、脾、腎の三臓が失調し、津液の輸布(分布)あるいは排泄障害を引き起こし、その結果、異常な水分が停滞蓄積したもので中医学では水滞と総称され、日本漢方では水毒(スイドク)とされます。

 

細分すると全身性の浮腫である水腫(スイシュ)と局所的な浮腫である痰飲(タンイン)とに分けることがあります。

 

なお、痰飲もさらに薄い水分を、粘稠な水分をとして分けます。

 

日本人には、慢性的な水分過剰の病態が問題になることが多いので、水滞(水毒)の症状について紹介します。

 

 

水滞(水毒)の症状

 

①むくみ・浮腫

 

②鼻汁、蓄膿、痰、耳垂れ

 

③動悸、息切れ、咳、喘息

 

④悪心・嘔吐、口渇、胃内停水

 

⑤めまい、耳鳴り、頭痛・頭重、肩こり、関節の痛み(右上半身と左下半身に生じやすい)

 

⑥分泌障害:唾液・涙の分泌過多、発汗異常(過剰もしくは無汗)

 

⑦排泄障害:下痢(水様性)、便通異常・腹鳴

 

 

 

水滞(水毒)対策

 

①むくみの原因となる塩分の摂取過剰、蛋白質摂取の欠乏、脚気の原因となるビタミンB1欠乏の有無を確認し、是正する。

 

②体の浮腫みは、脳や心の浮腫み、自律神経の不調(夜更かし、朝寝坊、昼夜逆転など)、ホルモンのアンバランス(甲状腺機能低下、副腎機能低下など)を、生活習慣の見直しをはかる。

 

③運動不足はないか。たとえ運動をしていても質的な吟味が必要。

有酸素運動が望ましく、さらにいえば運動中に持続的に水圧が掛る水中有酸素運動が好適。

 

水氣道は理想的なエクササイズであり、活水航法は浮腫み対策の核心的な技法。

 

 

④漢方薬では主に利水剤を使用。鍼灸と併用による効果増強の実績多数。

 

 

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上焦は横隔膜より上の部分にあり、「霧の如く」肺の衛気を宣発し、津液を散布する作用です。

 

 

中焦は横隔膜より下で臍の位置より上の部分にあり、「濫(かめに貯えられた水から生じる泡、変化が生じることを示す)の如く」といわれている。

 

 

下焦は臍より以下の部位、尿と大便の排泄である。

 

「下焦は潰(みぞ)の如く」といわれている。その他、肝腎や命門 も下焦に属している 。