日々の臨床 ⑤:11月9日 木曜日<関節リウマチの経口剤「オルミエント」の登場>

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<関節リウマチの経口剤「オルミエント」の登場>

 

 

関節リウマチ治療の新たな経口剤「オルミエント錠」(一般名・バリシチニブ)が先月発売されました。

 

関節リウマチの第1選択薬である「リウマトレックス®」(一般名・メトトレキサート:MTX)など、既存治療が効果不十分な患者さんに用います。

 

1日1回投与で炎症や免疫反応に関与するヤヌスキナーゼ1(JAK1)およびJAK2を選択的に阻害します。

 

臨床試験では、疾患活動性の抑制効果は既存の生物製剤(バイオ製剤)を上回りました。

 

 

上気道感染の他、重大な副作用として感染症などがあることが懸念材料です。

 

 

関節リウマチは、近年では発症早期から疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を用いて疾患活動性を抑え続ける(寛解または低疾患活動性とする)ことで、将来の関節破壊を抑制することが可能となりました。

 

 

DMARDとしてはまずリウマトレックス®(一般名・メトトレキサート:MTX)の使用が強く推奨されます。

 

高円寺南診療所では実施していませんが、リウマトレックス®で効果不十分な患者さんには、一般的にバイオ製剤などが用いられています。

 

しかし、バイオ製剤によっても寛解・低疾患活動性に至らない患者さんや副作用のために継続できない患者さんが一定数存在します。

 

また、バイオ製剤の投与経路は点滴静注あるいは皮下注射であるため、通院あるいは注射の負担は避けられません。

 

 

関節リウマチの新薬であるオルミエントはJAK1/JAK2を選択的に阻害する経口剤です。

 

これはIL-6、GM-CSF(顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子)、IFNγといった炎症性サイトカインの細胞内シグナル伝達を阻害します。 

 

MTXで効果不十分な患者さん、バイオ製剤で効果不十分な患者さんなどに用いることが想定されます。

 

一方で、「安全性プロファイルおよびそのリスクの程度は生物製剤と類似していると考えられる」(審査当局の報告書)ことから、適正使用が求められています。

 

 

国際共同第3相試験「RA-BEAM試験」は、MTXで効果不十分な関節リウマチ患者さん1305例を対象に行われました。

 

ランダムに分け、オルミエント、プラセボ、アダリムマブ(抗TNFα抗体)のいずれかを投与しました。

 

 

主要評価項目の「12週時のACR20改善率(米国リウマチ学会による疾患活動性の改善基準)」はオルミエント群69.6%、プラセボ群40.2%で、同剤が有意に優れていました。同剤群とアダリムマブ群(61.2%)との間にも有意差が認められました。

 

 

他の第2相試験、第3相試験を合わせて、オルミエントを投与した3439例中、同剤との因果関係が否定されなかった有害事象は41.5%に認められました。

 

主なものは上気道感染(9.7%)帯状疱疹(3.9%)などでした。

 

また、主な臨床検査値異常はLDLコレステロール上昇(43.2%)などでした。

 

 

重大な副作用として、重篤な感染症 などがあり、同剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用することとされています。

 

 

 

▽効能・効果=既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)

 

▽用法・用量=通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。

 

▽薬価=2mg 1錠 2694.60円、4mg 1錠 5223.00円

 

 

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】

 

①本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

 

②重篤な感染症(敗血症など)の患者

 

③活動性結核の患者

 

④重度の腎機能障害を有する患者

 

⑤好中球数が500/mm3未満の患者

 

⑥リンパ球数が500/mm3未満の患者

 

⑦ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者

 

➇妊婦または妊娠している可能性のある婦人

 

 

高円寺南診療所では、当面、生物学的製剤の使用は見合わせる方針です。

 

その理由は、2つあります。

 

 

第一に生物学的製剤は、免疫に直接作用する薬なので、免疫力の低下が避けられず、細菌や真菌に対する抵抗力を弱くしてしまうからです。

 

通常は問題ない程度の菌による日和見感染症にかかったり、結核を発症したりすることが問題になっています。

 

 

第二の問題は非常に高価なことです。

 

以前の抗リウマチ薬による治療では、1カ月あたり数千円で済んでいた薬剤費が、生物学的製剤だと10万~15万円程度必要になることもあります。

 

負担が重いために生物学的製剤の使用に踏み切れない患者さんも多くいます。

 

 

免疫力の低下は、投与前に十分な検査を行い、感染症を疑う症状があった時にどう対処するか担当医と十分に相談しておくことが重要です。

 

 

薬剤費の負担については、身体障害者福祉制度や高額療養費制度を利用して支払額を抑えることができます。

 

しかし、医療費助成を受けられるほどの身体障害者となると、かなり進行した関節リウマチになってしまいます。

 

病状を進行させないための投与では、医療費助成の対象にならないのが実情です。

 

このあたりが日本の医療制度の欠点の一つです。

 

 

水氣道は、参加者の行動体力のみならず防衛体力(免疫力)を高めることが重要な目的の一つですが、

 

それと同時に、病気が進行しないうちに支援する生涯エクササイズであるといこと、費用が一か月数千円以下で済んでしまうことなどから、

 

たとえ水氣道が医療の一環として承認を獲得することができたとしても、現行の医療費助成の対象にはなりえないことでしょう。