診察室から 11月7日(火)<分類困難な患者群から学んできたこと>その3

「臨床医としての腕を磨くのであれば、高円寺で開業するに限る。」

 

とことあるごとに私が表明してはばからない理由は、分類不能な患者さんに恵まれているからです。

 

分類不能な患者さんとは、自分がどこに行ったらまっとうな診療を受けられるかわからずに彷徨っているような患者さんです。

 

これらの患者さんをあえて3群に分類して紹介してきました。

 

これを再掲してみます。

 

 

タイプA:自分の悩みが病気に該当するのかどうかがわからない、というタイプ

 

タイプB:自分の病気の相談窓口かどこなのかがわからない、というタイプ

 

タイプC: 自分の健康上の問題点を複数抱え込んでいて、どこから手を付けてよいのかがわからない、というタイプ

 

 

今回は、タイプCについて検討してみたいと思います。

 

 

タイプCは、タイプAやタイプBとはことなり、すでにご自分の健康問題に気付いていらっしゃる皆様です。

 

このタイプにも、いくつかのサブ・タイプがあります。

 

 

タイプC1:

いわゆる我慢型。すでに健康上の不具合が生じていたにもかかわらず、放置しているうちに、次第に悪化し、さらに新たな病気を併発したため、どこから手を付けてよいのかわからないというタイプ

 

⇒とにかく、継続して通院可能な主治医を見つけてください。

 

初回の受診のみで解決してくれる医療機関を見つけることはとても難しいことです。

 

主治医と相談して、検査計画や治療計画を立案して、段階的に問題解決していかれることをお勧めします。

 

 

タイプC2:

いわゆる気休め型。 自分の健康上の問題点を複数抱え込んでいて、そのときどきで一番気になる自覚症状に対してのみ受診するというタイプ

 

⇒ これは、発作性の病気を持つ方に多いようです。

 

頭痛、めまい、喘息、痛風、狭心症、胆石などいずれにしても、発作が治まれば事足れり、として健康管理を中断することはとても危険なことです。

 

こうしたタイプの患者さんの「お陰様で完治しました。」という思い込みの報告ほど危ういものはありません。

 

 

タイプC3:

いわゆるドクターショッピング型。自分の健康上の問題点を複数抱え込んでいるため不安が募り、健康や医学情報に振り回された結果、いろいろな医療機関を転々とし一貫した治療を継続できていないタイプ

 

⇒複数の病気に対して、病気ごとにインターネット等でマスコミ名医を検索し、別々の病院の別々の科を受診し、

 

おまけにすべて門前薬局で処方薬を受領している上に、お薬手帳も別々、という有様の方がしばしば受診されます。

 

すでに20種類以上の処方を受けているにもかかわらず、減薬には応じず、良く効く新薬を出して欲しいと頑固に要求されるようなタイプも混じっています。

 

健康管理は総合的に行うべきでしょうが、大病院志向・超専門医志向・有名医志向の患者様は、容易に耳を傾けてくださいません。

 

 

タイプC4:

超高齢初診型。90歳を超える超高齢者で、これまで主治医を持たずに済むほど元気で過ごしてこられたような方。

 

とくに住民健診も全く受けたことが無く、何らかのご家庭の事情で、急に老後が心配になって来院するタイプ

 

 

仮に老後を65歳とすると、四半世紀以上に亘って自分が老後の人生を送っているという自覚と覚悟がなかったという方に多いようです。

 

⇒ 本人の思い込みとは甚だしく異なり、心身共に複数の慢性疾患に侵されているケースが少なくありません。

 

家族とのトラブルや、ご近所や社会に対する不満が募り、その矛先をたまたま目の前で耳を傾けようとしている医師にぶつけたりされます。

 

一見しっかりされているようで、部分的に認知症を思わせる言動があったりします。

 

このような方が、ご近所であればいざしらず、通院困難な遠方からわざわざお見えのことがあります。

 

その場合は、なるべくご近所で、継続的に通院可能な医療機関を探していただくようにアドヴァイスします。

 

早晩、要介護となる可能性が高いので、往診や在宅診療の実績がある医療機関を選んでいただくことが肝要であることをお伝えするようにしています。

 

 

このタイプCを細分して、個別に説明するだけで、骨が折れます。

 

しかし、これが日常診療の実情なのです。

 

こうしたケースを想定してトレーニングを受けていない総合病院の総合診療部門の担当医師は、相当なジレンマをかかえるであろうことを同情します。

 

診療所の限界があるように、総合病院の限界もあるということに気づかなければ、路頭に迷う患者さんが増える一方だと思われます。

 

 

ロコモティブ・シンドロームやフレイル・シンドロームあるいは認知症といった超高齢社会に対して介護力強化はまだまだ必要だと思います。

 

しかし、高円寺南診療所は、往診にも在宅医療にも手を広げていません。

 

高円寺南診療所の方向性は、自律と自立、共同体参加と社会貢献による介護予防にあるからです。

 

水氣道®や聖楽院活動は、こうした方向性の中から少しづつ体系化されつつあります。