診察室から 10月24日

<分類困難な患者群から学んできたこと>その1

 

 

足かけ三十年程、開業医を続けてきて、改めて感じることは、分類不能な患者さんの御蔭でたくさんのことを学んでこられたということです。

 

分類不能な患者さんとは、自分がどこに行ったらまっとうな診療を受けられるかわからずに彷徨っているような患者さんです。

 

これらの患者さんには、いくつかのタイプがあります。

 

 

タイプA:自分の悩みが病気に該当するのかどうかがわからない、というタイプ

 

タイプB:自分の病気の相談窓口かどこなのかがわからない、というタイプ

 

タイプC: 自分の健康上の問題点を複数抱え込んでいて、どこから手を付けてよいのかがわからない、というタイプ

 

 

 

今回はタイプAの患者さんについて振り返ってみることにします。

 

タイプAの患者さんは、長引く体調不良や気分不安定に悩んでいます。

 

それでも、それが誰にでもあることなので辛抱すべき問題なのか、

 

それとも診断名(病名)がつくような確立した病気であるのかが分からないままにして、放置しているケースが問題となります。

 

つまり、何らかの慢性疾患の存在に気づいているのにもかかわらず過小評価して、問題解決を先延ばしにしている人たちも含まれます。

 

このようなタイプの方は、急を要する別件の病気のために、ようやく受診することがあります。

 

そのときが問題解決の好機でもあるのですが、そもそもの慢性疾患について医学的に言及しても、話題を避けがちであることが問題となります。

 

 

 

例1:気管支ぜんそく発作のため受診、背景となるアレルギー性鼻炎については、気づいてはいたが放置していた。(かなり多数例)

 

 

例2:痛風発作のため受診、背景となる高尿酸血症については、健診結果ですでに知っはいたが、特段困らないため放置していた。(多数例)

 

 

例3:狭心症発作のため受診、原因となる喫煙習慣と未治療の高血圧について、高血圧の治療には応じるが、<喫煙と狭心症は関係が無い>と主張し、専門家の見解を真っ向から否定した。(比較的多数例)

 

 

例4:両足の浮腫みで歩行困難であるため受診、数年前、脳卒中にて高円寺南診療所の提携先である東京警察病院脳神経外科に入院の後、数か月に一回の受診を継続していたが、その際に内科管理については高円寺南診療所で継続するように指示されたが無視していた。飲酒制限を守ることができず、すでに治療困難な肝硬変を来していた。(高円寺では、決して少数憂いではありません)

 

 

 いかがでしたでしょうか。

 

以上の様な患者さんについて皆様はどのようなご感想をもちましたか。

 

高円寺南診療所は、こうした患者さんを見捨てることなく、

 

とことんお付き合いしてきた経験の蓄積によって、

 

多くのことを学び、医学理論より広範な医療実践を展開してくることができたように思います。

 

 

来週はタイプBの患者さんについて振り返りを試みたいと思います。