日々の臨床④ 10月11日水曜日<アレルギー性鼻炎のトータルマネジメント>

総合アレルギ‐科(呼吸器・感染症、皮膚科・眼科を含む)

 

<アレルギー性鼻炎のトータルマネジメント>

 

 

アレルギー性鼻炎は非常に増加している病気です。

 

1998年と2008年に馬場らが行った全国的有病率調査では、通年性アレルギー性鼻炎は18.7%から23.4%に、

 

季節性アレルギーであるスギ花粉症は16.2%から26.5%に増加しています。

 

しかし、高円寺南診療所を受診する患者さんの多くは、アレルギー性鼻炎に罹っていても、慢性化していて、鼻閉による口呼吸を放置している方が多く、

 

たまたま何度も風邪ひきを繰り返したていたり、睡眠障害に陥っていたり、気管支喘息を併発していたり、といったケースで受診される方が後を絶ちません。

 

 

これらのアレルギー性鼻炎は、有病率が高いばかりでなく、

 

日中の眠気や集中力の低下、疲れやすさ、イライラなど生活の質(QOL)を低下させ、労働生産性も低下させます。

 

そこで、アレルギー性鼻炎の診療において、実践的な診療指針が必要になります。

 

実際のアレルギー性鼻炎の診療の紹介のために、

 

今回は

1)そもそも鼻炎とは何か?

 

2)その診断とは?

 

3)治療法の選択は?

 

4)実際の薬剤の特徴は?

 

について手短にまとめてみました。

 

 

 

1)そもそも鼻炎とは何か?・・・鼻炎には様々な種類があります

 

臨床上、鼻炎と称される多くの異なる病態があります。

 

アレルギー科が扱う鼻炎は、主にアレルギー性鼻炎ですが、これは過敏性非感染性鼻炎に分類されます。

 

このアレルギー性鼻炎は、かぜ症候群に代表される感染性の急性鼻炎と、急性・慢性副鼻腔炎との鑑別を必要とすることが多いです。

 

とくに、非感染性の好酸球性副鼻腔炎は難治性なので注意しています。

 

そして、アレルギー性鼻炎と診断できた場合には、ダニなどが原因となる通年性のものと、主として花粉が原因となる季節性のものがあります。

 

花粉によるアレルギー性鼻炎のなかには、花粉‐食物アレルギーを伴うケースもあります。

 

 

2)アレルギー性鼻炎の診断のステップは?・・・①問診、②アレルギー性かどうかの鑑別、③原因抗原を同定する

 

①問診を行うにあたり、家族歴や発症年齢、鼻症状や付随する眼症状、咽頭症状など耳鼻咽喉科的な視点のみならず、内科として喘息の合併や小児ぜんそくの既往歴を聴取することが、アレルギー性の関与を疑ううえで役に立っています。

 

そして、発症期や生活環境などの情報は、原因抗原の手掛かりを捕まえるためにも大切にしています。

 

 

②アレルギー性鼻炎か否かを鑑別するにあたり、上記問診の他に、鼻鏡検査、レントゲンなど画像検査、血液・鼻汁好酸球検査、血清非特異的IgE抗体定量を行うことがあります。

 

 

③原因抗原を同定するには、血清特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、誘発テストが含まれます。

 

 

3)アレルギー性鼻炎の治療選択・・・患者さんのタイプに応じて選択

 

原因物質である抗原を回避するための工夫は、患者さん自ら実行できる重要な治療対策です。

 

ただし、治療薬は軽症例では第2世代の抗ヒスタミン一種類を選択しますが、中等症以上のアレルギー性鼻炎に対しては、病型に応じて作用機序の異なる薬剤を複数組み合わせて用いています。

 

第2世代の抗ヒスタミン薬は、有効性が高いうえに、眠気などの副作用が軽減されているため使いやすいですが、反応性には個人差があります。

 

根本的な治療として、舌下免疫療法が注目されています。また、保存的治療が無効な例では、手術療法を考慮すべきことがあります。

 

 

4)実際の薬剤の特徴と使い分け・・・症状の病型と重症度から薬剤を選択

 

わずかであっても症状が出たら初期療法を開始します。

 

この段階では、第2世代抗ヒスタミン薬もしくは抗ロイコトリエン薬を選択します。症状が強い場合には、適切な併用療法を積極的に行います。

 

鼻噴霧用ステロイド薬は、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症で鼻汁・くしゃみ型、充全型を問わず軽症例から用いられ、中等症以上では標準的に用います。

 

鼻噴霧用ステロイド薬の特徴は、

 

①効果は強く、②効果発現は1~2日と早く、③副作用は少なく、

 

④鼻アレルギーの3症状(くしゃみ、はなみず、はなづまり)に等しく効果があり、

 

⑤投与部位のみに効果が発現して、全身作用をもたらさない、という利点が挙げられます。