日々の臨床① 10月8日日曜日<プラセンタ療法>

統合医学 (東西医学、補完・代替医療)

 

<プラセンタ療法>

 

これから初めてプラセンタ療法を受けられる方やプラセンタ療法にご興味をお持ちの方は、是非ご一読ください。

 

 

高円寺南診療所でプラセンタ療法を開始する契機となったのは、自身がアレルギー体質で、かつ線維筋痛症に苦しみ、

 

他院でプラセンタ療法を経験して顕著な効果を実体験した妻(高円寺南診療所事務長、兼薬剤師)の報告と勧めによるものでした。

 

著効を示した妻の勧めにより、文献を検索してみると、私自身の不勉強は明らかでした。

 

しかもプラセンタの注射薬は厚生労働省が認める医薬品です。

 

非常に厳しく管理され、提供される胎盤は厳しく選定され、その胎盤に対して更に加熱・分離等の処理を経て医療用製剤となります。

 

最古参のプラセンタ注射薬であるメルスモン®は、私が生まれた年である1959年に国内での薬価が収載されていますので、すでに60年近くの長期間に亘り使用され続けいるロングランの注射薬であることがわかります。

 

この間、特段の健康被害が発生することもなく、極めて安全で人気のある薬です。

 

 

しかし、アレルギーの患者さんを診療している専門医としては、率直に申し上げてプラセンタに対して、どちらかといえば否定的な立場に立っていました。

 

なぜならプラセンタ注射として使用可能なメルスモン®、ラエンネック®のいずれも作用機序が十分明らかにされていないことと、

 

そして「蛋白アミノ酸製剤」だという知識があったからです。

 

それは牛乳や卵、肉、大豆製品などのたんぱく質を含む食材にアレルギーのある人に注射して反応が強く出る可能性を怖れていたからです。

 

しかし、よく考えてみると蛋白質ではなくアミノ酸に対して強度のアレルギー反応を示す人は、そもそも生存が困難なため、

 

アナフィラキシー・ショックなど重篤な状態に繋がるケースは極めて稀であるはずです。

 

 

それどころか、プラセンタ注射の効能の一つに「アレルギー体質の改善」があります。

 

アレルギーは、もともと体内に備わっている免疫細胞が、アレルゲン(ダニや花粉など)に対して過剰に働くことが原因で起こるものです。

 

プラセンタは細胞の再生を促す成長因子を多く含むため、アレルゲンを過剰に攻撃する免疫細胞を排除する作用があるようです。

 

 

実際プラセンタ注射は、正しい使い方をしている限り、重篤な副作用が起きることはほとんどありません。

 

「正しい使い方」とは、製剤を皮下注射や筋肉注射によって注入することです。

 

 

メルスモンの作用機序は、前述のとおり、まだ充分明らかではないのですが、

 

細胞呼吸促進、創傷治癒促進、抗疲労などの諸作用が確認されており、これら多種多様の生物学的活性作用が広汎な生体過程への賦活作用を示し、

 

組織細胞の新陳代謝を高め、身体の異常状態を正常化するものと推測されています。

 

 

以下は各論です。ご興味をお持ちの方は、そのままお読みください。

 

 

①プラセンタとは胎盤のことです。

 

治療に使用する注射は人間の胎盤から作られたものです。

 

これに対して、サプリメント(健康食品)や化粧品はブタなど動物の胎盤から作られていることが大きな相違点です。

 

 

②プラセンタは胎盤代謝を促進させ、 細胞の分裂を活発化させます。

 

その結果として、アンチエイジングの効果があります。

 

これは女性だけでなく男性も対象となります。

 

アンチエイジングのためにプラセンタ療法を受けた方の多くが、その結果として肌の調子が良くなるために美容の薬のイメージができてしまったようです。

 

ただし、高円寺南診療所ではプラセンタ治療を美容目的のみで行うことはしていません。

 

プラセンタの主な効能 は「肝臓の機能の改善」「代謝障害いわゆる更年期障害や冷え性などの改善」「消炎鎮痛(腫れや痛みをとる)作用」「抗アレルギー作用」です。

 

肝機能を改善して、代謝を良くして、炎症やアレルギーを制御できれば、必然的に肌の調子が良くなります。

 

 

③プラセンタ治療の種類は、定期的に注射をする、サプリメントを飲む、プラセンタ化粧品などを使う等があります。

 

注射剤は人間の胎盤から作られた医薬品ですが、他は主にブタなどから作られた食品であり医薬品ではありません。

 

効果は注射の方が速効性に優れますが、出張や旅行等で注射を中断しなくてはならないときには、サプリメントのプラセンタ・カプセルを内服して繋いでおくといった工夫も有意義だと思います。

 

 

④プラセンタ注射の正しい打ち方は、医薬品添付文書にある通り、

 

通常「1日1回2mlを皮下または筋肉内に注射する。症状により1日2~3回注射することができる。」となっています。

 

実際には1日2~3回注射することは皆無であり、またお勧めすることもありません。

 

「1 回 1 アンプルを毎日または隔日に注射する」方法が最も効率の良い打ち方です。

 

それであっても医療機関に毎日通院するのは現実的には無理な方がほとんどです。

 

来院が可能な方は「週 2 回」を基準にしていただければ、本来の打ち方と同等の効果が得られています。

 

一部に誤解されている方がおられますが、「沢山打つと効果が長く持続する」ことはありません。

 

また1 回に多く打つから回数が少なくて良いということではありません。

 

しかし、高円寺南診療所では、通院間隔が週1回もしくは、それ以上の方の場合では、経験上効果的なので1回に2アンプルまでを体調に応じて打つことを推奨しています。

 

調子が比較的良いときは1アンプルのみ、体調がすぐれないときは2アンプル、といった方法で継続していくと、次第に1アンプルで済むようになっていくことが多いからです。

 

 

⑤筋肉注射と点滴のどちらが良いのか。

 

本来プラセンタは本数に関係なく皮下もしくは筋肉注射が基本です。

 

点滴でも効果は変わりませんが、 特に点滴の方が効果的な訳ではありません。

 

そこで、高円寺南診療所では原則通り、皮下もしくは筋肉注射のみを実施しています。所要時間は1分以内です。

 

 

⑥実際に治療を開始した直後に効果を感じることができる方がいらっしゃいます。

 

「体が暖かくなってきた」「意欲が湧いてきた」「目の前が明るくなって視力が戻ってきた」という報告が多いです。

 

直後に効果を感じられなくても、その日の夜から「よく眠れる」ことです。次に数回の注射後には「体が元気になった」と実感できます。

 

更に続けて行くと「お酒に酔わなくなった」「肌の調子が良い」「冷え性が改善した」「腰痛が治った」「アレルギーが改善した」「白髪が減った」等の効果が認められます。

 

医療の全般についての私の見解ですが、治療のコツは「無理なく計画的に継続する」ことによって自然治癒力を高めることができます。

 

プラセンタ注射も同様です。わずか 2 ~ 3 回注射をして効果が無いと自己判断して、せっかくのチャンスを逃してしまうのは大変もったいないことです。

 

 

⑦いつまで続けるのかという質問は、最近あまり受けません。

 

それは、まず、注射自体が苦痛とならないよう、高円寺南診療所独自の呼吸法を応用した無痛注射法が好評だからです。

 

たとえば線維筋痛症など痛みに過敏な患者さんであっても、注射によって痛みを訴えることはほとんどありません。

 

次にプラセンタを症状の種類と程度に応じて、注射するツボを選定して打ちワンパターンにならないように工夫しているからです。

 

同じ注射であるにもかかわらず、注射を打つツボによって効き方を調整することができることを、患者さん自らが直接体験することができるからです。

 

それから体調に合わせて頻度を調節しながら続けていただいているからだとも思います。

 

もし途中で止めた場合もリバウントはありません。

 

ただ長期間中断しますと、その間に改善して来た症状が、再現してしまうことがあります。

 

その場合は、遠慮なさらずにお申し出いただければ再度スタートが可能です。

 

 

➇プラセンタは生物製剤のため感染の危険などはないのか、という御質問があります。

 

プラセンタは副作用もリバウンドもほぼ無い最も安全性の高い薬剤です。

 

 

平成 19 年 8 月の日赤(日本赤十字社)の通達により、イギリス・ フランスに1度でも渡航したことのある方、ヨーロッパに半年以上滞在したことのある方、ピアスの穴がある方と同様に、プラセンタを打った方は献血ができなくなりました。

 

これは当時問題となった狂牛病対策のためです。

 

しかし、不特定多数に提供する献血(日赤の事業)と違い、相手を特定して提供する輸血(厚労省管轄の医療行為)は全く問題ありません。

 

ですからプラセンタをしたため、大切な家族に輸血できなくなる等ということは一切ありません。

 

 

⑨薬剤の選択について、高円寺南診療所ではメルスモン®とラエンネック®の両者を使い分けています。

 

効果・効能は同じとされていますが、原則として女性にはメルスモン®、男性にはラエンネック®を選択します。

 

その理由は、メルスモン®(皮下注射のみ)の第1の適応が更年期障害、乳汁分泌不全の治療であり、

 

ラエンネック®の第1の適応が慢性肝疾患における肝機能の改善だからです。

 

もっとも、女性であっても慢性肝疾患や飲酒機会の多い方にはラエンネック®を選択するようにしています。

 

 

以上について十分ご理解・ご納得の上、根気よく続けてください。