日々の臨床9月15日金曜日<非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)>

心臓・脈管 / 腎・泌尿器の病気

 

<非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)>

 

急性心筋梗塞の診断と治療の進歩は著しいものがあります。

 

生命に直結する病態であるため、医師ばかりでなく、

 

一般の皆様も、凡その概要に触れておくことは無駄ではないと思います。

 

 

そもそも心筋梗塞とは、心臓の筋肉細胞に酸素や栄養を供給している冠動脈血管に閉塞や狭窄などが起きて血液の流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態です。

 

通常は急性に起こる「急性心筋梗塞 (AMI) 」のことを指します。

 

また心臓麻痺とか心臓発作とも呼ばれることがあります。

 

 

心筋が虚血状態に陥っても壊死にまで至らない前段階を狭心症といい、

 

狭心症から急性心筋梗塞までの一連の病態を総称して急性冠症候群acute coronary syndrome, ACS)という概念が提唱されています。

 

 

 

診断:最近では、心筋壊死の証拠とし心筋トロポニンの上昇を必須とします。

 

高感度トロポニンは心筋特異性が高く、1時間という早期から上昇するため急性冠症候群の鑑別診断に有用です。

 

心電図の波形で、ST部分が上昇しているもの(ST上昇型)と、上昇していないもの(非ST上昇型)があります。

 

 

 

治療:非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)は、ST上昇型急性冠症候群と比較して治療までの時間的猶予があることが多く、冠動脈バイパス手術(CABG)が必要となる可能性が高いです。

 

中等度以上の非ST上昇型急性冠症候群NSTE-ACS)は、24時間以内の経皮的冠動脈形成術(けいひてきかんどうみゃくけいせいじゅつ、英percutaneous coronary intervention; PCI)は生命予後を改善できます。

 

このPCIとは、アテローム等の動脈硬化性病変により狭窄した心臓の冠状動脈を拡張し、血流の増加をはかる治療法で虚血性心疾患に対して行われる血管内治療の一つです。

 

この治療法の確立によって虚血性心疾患における内科学領域の循環器学と外科学領域の心臓血管外科学は限りなく接近しつつあります。

 

 

PCIによる早期侵襲的治療が有利とされつつある中、新規抗血小板薬(ADPアンタゴニスト:プラスグレル、チカグレロル)の開発にも目覚ましいものがあります。

 

これらの多くは欧米のガイドラインでは推奨されていが、日本では慎重に改訂作業を進めています。

 

救急外来で速やかに、これらの薬剤を投与した方が緊急PCIに十分効果が期待できるが、冠動脈造影の結果、速やかにCABGが必要となったときに出血の問題があるからです。

 

 

その場合、プラスグレルは7日前、チカグレロルやクロピトグレルは5日前に抗血小板薬の休薬が必要とされます。

 

推奨される2剤併用抗血小板療法(DAPT)期間は1年です。それ以上の継続は出血リスクが低く、血栓リスクが高いときのみとされます。

 

出血リスクが高いときや抗凝固を併用する3剤併用のときは抗凝固療法を優先し、DAPT期間を短縮します。

 

これらのリスクの層別化はTIMIリスクスコアやGRACEリスクスコアで行いきめ細かい対応が取られています。