日々の臨床9月10日日曜日<慢性頭痛>

神経・精神・運動器の病気

 

<慢性頭痛>

 

高円寺南診療所の外来診療で気づくのは、慢性頭痛の相談が年を追うごとに増え続けていることです。

 

そこで、日本頭痛学会認定の頭痛専門医レベルの勉強をしておきたいものだと考えていたところ、

 

条件次第では頭痛専門医の資格を取得できることがわかり、

 

本格的な研鑽を続けていることは、たびたびご報告しているとおりです。

 

受験するための資格を取得するためだけでも3回の試験に合格しなければならないのですが、

 

幸いに最短時間でクリアすることができたのも、日常診療での豊富な経験に支えられたためだと考えています。

 

 

そこで、改めて頭痛診療のために、なぜ専門医が必要なのかを考えてみました。

 

意外に多い患者数にもかかわらず、

 

高い水準での医療がなされていない現状であることは知っていましたが、

 

それだけではないことに気づきました。

 

 

その一つが、頭痛診療には禁忌(きんき)が多く、

 

至る所に危険な時限爆弾が仕掛けられているようで、

 

危険極まりない領域だから、ということです。

 

 

そこで、しばしば用いられる禁忌とはどのようなことを言うのか、というあたりからご説明いたしましょう。

 

【禁忌(きんき)】とは、当該医薬品を使用してはいけない患者を記載しています。

 

 

以下のような点から考えて、ある医薬品を使用することにより、

 

病状が悪化したり、 副作用が起こりやすくなったり、

 

薬の効果が弱まるなどの可能性が高いため、使用しないこととされています。

 

 

すなわち、現在の病気(原疾患) 、ある病気が原因となって起こる別の病気(合併症) 、

 

これまでにかかった病気(既往歴) 、ご家族の方の病気(家族歴) 、

 

現在使われている他のお薬(併用薬剤) 、医薬品を使用する方の体質などです。

 

 

 

次に、頻度の多い頭痛に関する禁忌の例を挙げてみることにしました。

 

 

緊張型頭痛:治療薬としては消炎鎮痛剤(NSAIDs)や抗不安薬が用いられます。

 

 

片頭痛:前兆としては閃輝暗点などの視覚異常が90%で多いです。

 

病態としては脳血管周囲の三叉神経が刺激されて神経原性炎症を起こし、

 

そのシグナルが視床を通して大脳皮質に伝わり痛みを感じるという説が有力です。

 

予防薬としてはカルシウム遮断薬(ロメリジン®)、

 

抗てんかん薬(バルプロ酸)β遮断薬(プロプラノロール)、

 

抗うつ薬(アミトリプチリン®)が用いられます。

 

ただし、プロプラノロールとリザトリプタンの併用は禁忌です。

 

 

発作の前兆・予感が現れたときにエルゴタミンを、

 

頭痛発現後早期にトリプタン製剤を用いると良いでしょう。

 

なお酒石酸エルゴタミンとトリプタン製剤の24時間以内の併用は禁忌です。

 

発作時の治療薬はスマトリプタン等のセロトニン受容体作動薬やロキソプロフェンなどのNSAIDsを使用します。

 

 

前兆のある片頭痛では、エストロゲンを含む経口避妊薬は脳静脈洞血栓のリスクを高めるため使用すべきではありません

 

 

脳底型片頭痛・片麻痺型片頭痛トリプタン製剤はこれらの片頭痛には禁忌です。

 

また虚血性心疾患、脳血管障害、末梢血管障害などがある場合も禁忌です。

 

 

群発頭痛:20~40代の男性に多い。

 

片側の眼窩がえぐられるような激痛が1時間ほど続きます。

 

随伴症状としては頭痛側に、流涙、鼻閉の他、

 

縮瞳や眼瞼下垂などといった自律神経症状を生じることもあります。

 

急性期治療にはトリプタン製剤の皮下注射や100%酸素(純酸素)7Ⅼ/min,15minの吸入が有効です。

 

 

薬物乱用性誘発頭痛:単一成分の鎮痛薬の場合は月に15日以上の頻度で3ヵ月以上用いると薬物乱用頭痛の原因となります。