日々の臨床9月9日土曜日<肥満症>

内分泌・代謝・栄養の病気

 

<肥満症>

 

本邦において肥満とは体格指数25以上、高度肥満は、BMI35以上の肥満者のことをいいます。

 

肥満者はどの程度の減量をすればよいかの目安は、「肥満症診療ガイドライン2016」 において、

 

減量目標として肥満症では現体重からの3%以上の減少、高度肥満症では5~10%以上の減少が掲げられています。 

 

 

この肥満がもたらす様々な臓器障害の中で、最近、腎障害が注目されています。

 

これを肥満関連腎臓病といいます。

 

肥満関連腎臓病の腎組織病理像は、専門的な話で恐縮ですが、糸球体肥大と巣状分節状糸球体硬化症を特徴とします。

 

肥満に伴う腎障害には大きく分けて二つあり、

 

一つは肥満と肥満を基盤病態にするメタボリックシンドローム(Mets)<次週に解説します>に合併する糖尿病、 高血圧による腎障害です。

 

もう一つが肥満固有の腎障害であり、これを肥満関連腎症といいます。

 

肥満関連腎症の予後は必ずしもよくありません。

 

近年、 肥満自体が慢性腎臓病の危険因子と注目されており、

 

その機序としてアディポサイトカイン(アディポカイン)<次週に解説します>の異常、

 

腎臓に対する脂肪毒性, 糸球体過剰濾過を主とする腎血行動態の異常、

 

インスリン抵抗性などがあげられています。

 

今後の慢性腎臓病(CKD)治療の中心として肥満、

 

メタボリック症候群の管理が重要となってくると思われます。

 

 

アディポカインの一種で、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは、

 

糖尿病、脂質異常症、高血圧症などを抑制する善玉アディポカインの一種です。

 

肥満では脂肪細胞が肥大しており、

 

悪玉アディポカインの分泌量のほうが増大しているためにアディポネクチンは減少しています。

 

肥満に起因する肥満関連腎臓病では、

 

耐糖能低下を伴わないにもかかわらず蛋白尿や腎機能低下を示します。

 

これが腎臓の糸球体肥大や腎肥大を呈し、

 

組織学的には巣状分節性糸球体硬化症の病理像を示すことになるのです。

 

ただし、幸いなことに、早期であれば減量により改善が見込めます。

 

 

またレプチンも脂肪細胞から分泌されるホルモンで善玉アディポカインの一種です。

 

これは食欲抑制、脂肪分解、エネルギー消費増加の作用があります。

 

レプチン抵抗性(レプチンに反応しないこと)のある人では

 

レプチン分泌は過剰増加を示すが肥満化しやすいことが知られています。