日々の臨床 9月5日火曜日<播種性血管内凝固>

血液・造血器の病気

 

<播種性血管内凝固(DIC)>

 

本日のテーマは、率直に申し上げて、説明が容易ではありません。

 

インフォームド・コンセントという言葉が広まりましたが、

 

生命にかかわる様な重要な疾患や病態であるにもかかわらず素人にわかりやすく説明することが難しい疾患はたくさんあります。

 

それをどれだけ上手に効果的にせつめいできるか、ということも医師の技量に関わる問題であると思われますが、まだまだ、というのが正直なところです。

 

医師は生涯学習・障害研修を通して少しでも前進していくしかないのではないか、と考えている次第です。

 

 

播種性血管内凝固(DIC)とは、何らかの基礎疾患により凝固系が活性化され、

 

微小血栓の多発により循環障害に起因する臓器機能障害を呈するとともに、

 

消費性凝固障害および線溶活性化のために出血傾向をきたします。

 

 

 

DICの症状:出血時間の延長

 

DICではトロンビン感受性のⅠ、Ⅴ、Ⅷ、ⅩⅢを中心に、あらゆる凝固因子が消費されます。

 

播種性血管内凝固(DIC)の基礎疾患として最も多いのは敗血症です。

 

しかし、脱水症も原因となります。血管内脱水が生じると血管内の凝固が起きやすくなります。

 

 

 

DICの診断基準:

①血小板数減少、②FDP(フィブリン分解産物)増加(血栓溶解の結果)、③フィブリノーゲン減少、④PT延長

 

 

DICの検査所見:

血小板数減少(凝固亢進、微小血栓形成による血小板の消費のため)、

 

血小板粘着能が亢進し血栓形成に働く、赤沈値遅延(微小血栓形成によるフィブリノゲン消費のため)、

 

感染症によるDICではトロンビンの凝固活性を中和するアンチトロンビンⅢ(ATⅢ)低下、

 

凝固系亢進の指標であるトロンビン-アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)上昇、

 

線溶活性化の指標であるプラスミン-α2⁻プラスミンインヒビター(PIC)上昇、

 

補体低下(補体の消費による)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)延長

 

 

 

DICの治療:

DICの基礎疾患の治療が基本であり最優先されます。

 

並行して他に抗凝固療法(ヘパリン注射、ATⅢ製剤、合成抗トロンビン薬メシル酸ガベキサート、

 

遺伝子組換えトロンボモデュリン製剤)、補充療法(血小板輸血、新鮮凍結血漿)も行います。

 

リコモヂュリン®(遺伝子組換えトロンボモデュリン製剤)は腎排泄性であるため、腎機能を考慮して投与量を調節します。

 

なおヘパリンは血中のATⅢと複合体を作ることで抗凝固作用を発揮するため、ATⅢ活性が70%以上ないと単独では作用しません。

 

DICではATⅢ活性が低下するため、ATⅢの補充が必要です。

 

抗線溶薬投与は原則禁忌ですが、線溶亢進型DICに対しては必要に応じてトラネキサム酸を投与することがあります。