日々の臨床 8月28日月曜日<老年病は内科の延長で診ることが危険なワケ!>その4

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

<老年病は内科の延長で診ることが危険なワケ!>

 

その4.高齢者では腎機能低下を考慮しないと命とりに

 

 

高齢者では、健康者であっても腎機能低下が進行していきます。

 

このことを常に念頭に置いておかないと高齢者を危険な状態に陥らせかねません。

 

 

たとえば、高血圧治療の第一選択薬の一つであるACE阻害薬は、

 

腎障害例では腎機能の増悪や血清K値の上昇を来しやすくなります。

 

その場合、早期に発見すれば薬剤の中止により速やかに改善します。

 

しかし、改善しない場合には腎不全に準じた治療を行わなくてはならなくなります。

 

高齢者に投与する場合には、このことに注意する必要があります。

 

定期的に腎機能や血清K値を測定するのはそのためです。

 

 

もう一つの例は不整脈治療薬です。

 

高齢者では、腎からの排泄率の高い抗不整脈薬の成人標準量を投与してはならないことになっています。

 

抗不整脈薬のうち、ジソピラミド(リスモダンR®)クラスⅠa群(Naチャンネル遮断薬)、

 

シベンゾリン(シベノール®)クラスⅠb群(Naチャンネル遮断薬)、

 

ピルジカイニド(サンリズム®)クラスⅠc群(Naチャンネル遮断薬)

 

などは、腎からの排泄率が高い薬剤です。

 

こうした薬剤は、生理的な腎機能低下状態にある高齢者の体内に蓄積されるため、副作用を呈する可能性が高くなります。

 

 

これらの薬剤を、高齢者に投与しなくてはならない場合は、

 

成人量の1/2~2/3程度の減量が必要であるとされます。

 

高円寺南診療所では、更なる安全性確保のため1/4~1/3程度から投与を開始していましたが、

 

催不整脈作用(抗不整脈薬投与による新たな不整脈が発生しやすくなる作用)が問題にとされるようになってからは、

 

外来での新規の抗不整脈薬投与は行わず、原則として入院設備のある病院での治療開始をお勧めしています。

 

 

なおジソピラミドの投与に際しては、抗コリン作用による尿閉にも同時に注意しなければなりません。