日々の臨床 8月26日土曜日<情緒不安定、易刺激性、うつ状態は内科の病気かも?④>

内分泌・代謝・栄養の病気

 

<情緒不安定、易刺激性、うつ状態は内科の病気かも?>

 

4回シリーズ(第四話)

 

 

42歳女性。公務員。情緒不安定でイライラしやすく、

 

部下にうっかり暴言を吐きパワハラを訴えられ、

 

うつ状態になり、某有名病院の神経科を受診していました。

 

諸事情により高円寺南診療所を受診、精査の結果、原発性副甲状腺機能亢進症の診断を得ました。

 

 

<治療方針>

 

第一段階:

婦人科専門医の処方薬、女性ホルモン、活性型ビタミンD製剤の即時中止⇒血清カルシウム値漸減

 

 

第二段階:

精神科専門医の処方薬、抗うつ剤の漸減・中止⇒気分不安定は変わらないが、悪化しなかった。

 

 

第三段階:

カルシウム受容体作動薬の投与⇒PTH分泌を抑制し、

 

高カルシウム血症を改善⇒胃部症状、背部疼痛消失

 

 

第四段階:

消化器内科専門医の処方薬、消化管潰瘍治療薬の漸減、中止

 

 

第五段階:

手術のための説得。本例のように高カルシウム血症による多彩な症状を呈する場合には手術の適応になります。

 

腺腫の局在部位はすでに確定していること、若年(50歳未満)であること、

 

顕著な骨所見(重症骨粗しょう症の合併、病的骨折の既往)なども手術を勧めるファクターです。

 

 

<転帰>

高カルシウム血症を最初に指摘した、某共済病院にて手術。

 

術後は一過性に出現する可能性がある低カルシウム血症や、

 

テタニーなどのけいれん発作も生ずることなく、

 

ほとんどの愁訴は解消したとのことでした。

 

短期間の入院ののち、現場に復帰して精力的に公務をこなしているとのことです。