中毒・物理的原因による疾患、救急医学
<老年病は内科の延長で診ることが危険なワケ!>
その3.高血圧の高齢者診療の落し穴
高円寺南診療所は、かつて医師が直接血圧を測定していました。これはとても意義深い方法ですが、白衣高血圧の例が増えてしまうため、それから高齢者の比率が増えてきため、あるときから自動血圧計に変更した経緯があります。高齢者の高血圧の測定は、聴診のみで行ってはならないとされます。
動脈硬化の進行した高齢者では、聴診法では聴診間隙のため血圧が低く測定されることがあります。血圧測定に際しては、聴診法のみならず、必ず触診による血圧測定や異なる原理に基づいて計測している自動血圧計を用いるなどの工夫が求められる、ということです。
もっとも、自動血圧計にしたところで、白衣高血圧が発生しなくなるわけではありません。気軽に計測できるためか、中には3回以上計測し直す方もいらっしゃるのですが、2回までとしていただきたいものです。
さて、一般に高齢者では、血圧の動揺性が大きく、白衣高血圧が高率になります。ですから高齢者では、1回の血圧測定のみで血圧を評価してはなりません。ましてや安易に、高血圧症の診断は下せません。高血圧症でない高齢者が高血圧症と誤診されている例は後を絶ちません。1回の測定では2回以上読み取り、日を変えて3~4回血圧を測定する必要性を説く指導医がいます。私も1回の測定で2回読み取るのは推奨したいところです。それ以上は、強迫的性格・気分・行動という健康上望ましくない傾向を助長するのでむしろ制限すべきではないかと考えているからです。
さらに注意すべきなのは、高齢者では降圧薬への反応が過度となり、壮年者より降圧効果が強く出る場合があるので注意をしています。そのため、家庭でも血圧を測定する習慣を作り、ふだんからセルフ・モニタリングするために血圧記録をとり、受診の際には主治医のチェックを受けるようにすれば、高血圧の管理はより適切なものになることでしょう。
このことの延長で言えることは、高血圧者の収縮期高血圧に対する降圧治療に際しては、血圧の正常化を急いではならないということです。高齢者の収縮期高血圧に対する降圧療法の効果は、すでに確立されています。信頼のおける妥当な方法であれば慌てる必要はありません。そもそも高齢者の収縮期高血圧の病態は動脈壁の硬化が背景にあります。そのため、一定の血流量を確保するために必要な血流抵抗が高いため、降圧を急に行うと重要臓器への血流を低下させてしまいます。降圧薬は少量から投与し、数か月かけた穏やかな降圧を図るべきとされている所以です。
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