日々の臨床 8月3日木曜日<インフルエンザは従来よりも積極的な予防投与が推奨>

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

 

<インフルエンザは従来よりも積極的な予防投与が推奨>

 

 

『日本感染症学会提言2012「インフルエンザ病院内感染対策の考え方について

 

(高齢者施設を含めて)」』(日本感染症学会・インフルエンザ委員会)には

 

抗インフルエンザ薬の暴露後予防投与について記載されています。

 

 

そこから、学べることを質疑応答形式でまとめてみました。

 

ただし、抗インフルエンザ薬は、ワクチン接種の代わりになるものではないということ、

 

インフルエンザの迅速診断には限界があることなどを予め念頭に置いてください。

 

 

 

Q1. 病院職員が家庭内で、インフルエンザを発症した人と接触した場合、

 

積極的に予防投与を行う必要がありますか?

 

 

A1. 必要はありません。健康な職員は、ワクチン接種を行っていれば、

 

予防投与は原則として必要はありません。

 

 

高円寺南診療所では非常勤を含め職員全員が

 

インフルエンザのワクチンを毎年早期に接種しています。

 

そして日頃から健康保持に努めるようにしています。

 

健康とは身体的、心理的、社会的、霊的すべての側面で良好な状態であるということです。

 

職員が水氣道®に自主的に参加していることも、

 

インフルエンザ予防対策の一環として大きな意味があります。

 

 

 

Q2.インフルエンザを発症した患者に接触した入院患者に対しては、

 

ワクチン接種の有無に関わらず、抗インフルエンザ薬の予防投与が必要ですか?

 

 

 

A2. 必要です。ただし、本人の承諾が必要です。強制はできません。

 

ただし、実施するのであれば、なるべく早く24時間以内に投与を開始します。

 

発症者の同室者に対して予防投与を実施するのが原則です。

 

 

 

Q3.多床室(個室でない病室)に入院中の患者がインフルエンザを発症した場合、

 

その患者は個室に隔離し、その他の患者は他の病室へ移動しないようにするのは正しいですか?

 

 

A3. 正しいです。インフルエンザを発症した患者は直ちに個室に隔離して治療を行います。

 

同室の患者移動は、潜伏期間を考慮し、

 

3日間は、それまでの病室からの患者移動は行わないようにします。

 

 

 

Q4.高齢者施設では、どのような段階で、フロア全体で予防投与を行うべきですか?

 

 

A4. インフルエンザ様の患者が2~3日以内に2名以上発生して、

 

1名でも迅速診断でインフルエンザと診断されたら、

 

フロア全体の予防投与の開始を考慮すべきです。

 

 

 

Q5. 予防投与はワクチン療法に置き換わるものですか 。

 

また、インフルエンザの予防投与が認められている薬剤について教えてください。

 

 

A5. 予防投与は、いずれもワクチン療法に置き換わるものではありません。

 

10歳以上の未成年者ではハイリスクを除き原則使用は控えます。

 

現在、3剤が予防投与に使うことができます。

 

 

①ザナミビル(リレンザ®):1日1回、7~10日間内服

 

治療目的では症状発現から2日以内に使用します。

 

 

②オセルタミビル(タミフル®):1日1回、10日間吸入

 

慢性呼吸器疾患患者は、使用後に気管支痙攣発現の可能性があり、

 

乳製品に対して過敏症の患者は慎重投与とされるため、

 

アレルギー患者の多い高円寺南診療所では、他の薬剤を選択することが多いです。

 

 

③ラニナミビル(イナビル®):1回完結、単回吸入、2日間吸入も可

 

オセルタミビル耐性ウイルスに有効とされます。    

 

インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2日以内に投与を開始します。

 

治療目的のときは、症状発現後、可能な限り速やかに投与開始します。