診察室から 7月25日<患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その3)>

テーマ:患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その3)

 

 

ピア・カウンセリングの担当者をピア・カウンセラーといいますが、

 

職業的カウンセラーではないので、

 

専門家であるカウンセラー等の指導を受けておく必要があります。

 

コミュニケーションは双方向性であってこそ促進され、

 

望ましい関係性、すなわち信頼関係が気づけることになります。

 

そのための環境整備をしてみました。

 

それが、患者の皆様からのメッセージ・ボードの創設です。

 

 

これは、高円寺南診療所のオフィシャル・ホームページを

 

患者の皆様との交流の場とすることです。

 

一人一人の皆様が経験したこと、わかったこと、

 

つまり、体験的な知恵を共有財産化するためのツールとすることです。

 

テーマは:いずれも「私の気づき-通院患者の視点から」というものです。

 

 

個人情報保護の見地から、情報開示の範囲について、

 

「あなたの声をホームページでご紹介可能であれば、以下の確認をお願いいたします。」

 

としてチェックをお願いいたしております。

 

□氏名はイニシャルのみ。□年齢は10歳区分を希望。□職業は伏せてほしい。

 

そして、原稿は原則としてご本人の手書きとさせていただいております。

 

 

 

最初のケースは61歳会社員の男性、F.Tさん。

 

 

初診のF.Tさんの印象としては、一見して栄養不良で担がん患者を思わせました。

 

「担がん」とは、その時点でガンが体内にある、

 

つまり「患者さんががんを抱えた状態である」という意味です。

 

これは診断名ではなく、がん患者さんの病状を表す用語です。

 

低栄養状態で、姿勢のバランスが悪く、呼吸が浅く、雑音が入り、

 

眼光が冴えなく、顔色不良で、まったく生気というものを感じませんでした。

 

<これは、何か重大な病気がありそうだ>、という臨床経験で培われた特別な感覚です。

 

「死相が顕れている」などとは、滅多に口に出せる表現ではありませんでしたが、

 

直ちに調べておかなければ、手遅れになり、後悔することになると考えました。

 

「まず、たばこをやめていただきたい」と率直に、ご本人にお伝えしたところ、

 

「タバコを吸えないと、心の安定が得られなくなりそうなので、考えてみます」

 

というお答えでした。

 

 

症状は、全身倦怠感、呼吸苦や咳・痰であり、

 

診断は肺気腫、慢性気管支炎、栄養障害でした。

 

幸い胸部レントゲン写真では、腫瘍を疑わせる陰影はありませんでした。

FTさん

 

その後のF.Tさんですが、別人のように輝いた表情で、

 

しっかりと前を見据えて生きているという印象に激変しました。

 

爽やかささえ感じられます。全身倦怠感、呼吸苦や咳・痰もほとんどみられません。

 

 

そこで、改めて喫煙状況についてお尋ねすると、すでにキッパリと禁煙し、

 

「今後も喫煙するつもりはない」と仰っていました。

 

納得と決断と実行によって、禁断症状も出現することなく、

 

心の安定が保てているとのことです。「たばこをすわないと心が不安定になる」というのは、

 

思い過ごしであったこと、自分で病気の原因を作っていたことに気づけたこと、

 

そして自力で禁煙成功を勝ち取って自信を取り戻された様子でした。