日々の臨床 7月20日 木曜日<肺癌(喫煙者には愛を、非喫煙者には更なる愛を!)>

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テーマ:肺癌(喫煙者には愛を、非喫煙者には更なる愛を!)

 

 

肺癌が発生率No1のがんです。喫煙は周囲の人にまで害を及ぼします。

 

 

タバコを吸わない人が、せきやたん、息切れなどが続くようになったり、

 

気管支喘息、慢性気管支炎になったりする原因の1つが受動喫煙です。

 

そのほかにも、糖尿病、メタボリックシンドローム、

 

精神疾患(うつ病・うつ状態)、認知症、化学物質過敏症なども、

 

受動喫煙が関与しているといわれています。

 

 

肺がんは、その組織型によって4種類のがん

 

(扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、大細胞がん)に分類されます。

 

予後の悪い順では、小細胞がん≫大細胞がん≻腺がん≧扁平上皮がん、です。

 

わが国で最も多いのは腺がんで、男性肺癌の40%、女性肺癌の80%以上を占めています。

 

 

たばこを吸わない女性の肺がんには腺がんが多いことが報告されています。

 

近年の研究(Int J Cancer. 2008 Feb 1;122(3):653-7)

 

の対象女性でも、肺がんの8割以上は腺がんでした。

 

そこで、腺がんに限って解析を行ったところ、

 

受動喫煙のあるグループの肺腺がんリスクは、

 

受動喫煙のないグループの約2倍高いことがわかりました。

 

 

肺癌の腫瘍マーカーは、組織型や腫瘍量を推定することはできます。

 

たとえば血清NSEは小細胞がんで上昇します。

 

しかし、これらは癌の進行度を反映しないため、

 

臨床病期の決定に用いることはできません。

 

 

肺癌根治手術の適応は、原則として臨床病期Ⅰ、Ⅱ、ⅢA期までです。

 

 

肺癌で手術不能のものは、

 

①遠隔転移、②癌性胸水、③全身状態不良、④N3リンパ節転移(対側縦隔、鎖骨上リンパ節)です。

 

 

FDG-PETは骨シンチグラフィ―に比べて、

 

肺がんで多く認められる溶骨性骨転移病変の検出力は同等以上です。

 

 

しかし、予後の悪い肺小細胞がんでは、

 

外科的切除が推奨されるのは臨床病期Ⅰ期までです。

 

 

肺癌の標準的根治手術は通常側方開胸なので側臥位で行います。

 

 

肺癌の根治術後の5年生存率は、Ⅰ期で70~80%、Ⅱ期で40~60%です。

 

 

上皮成長因子受容体(EGFR)変異の有無は、

 

進行非小細胞肺がんの薬物治療を選択するうえで決定的に重要な因子です。

 

 

ALK融合遺伝子陽性小細胞肺がんの切除不能な進行・再発の非小細胞がんに対して、

 

クリゾチニブが認可されています。

 

 

非小細胞がんに対する化学療法は、

 

プラチナ製剤と第3世代抗がん剤の2剤併用療法が標準的です。

 

また、継続維持療法で、最もエビデンスのある薬剤はペメトレキセドであり、

 

シスプラチンとの併用後の非増悪症例で有意に、増悪までの期間、

 

全生存期間を延長させることが示されています。

 

非小細胞がんのうちで、切除不能な再発・進行性で化学療法後に増悪したものには

 

エルロチニブ(タルセバ®)が適応になっています。

 

 

EGFR変異陽性かつPS3~4の非扁平上皮癌では

 

ゲフィチニブ(イレッサ®)単独投与を考慮しますが、

 

副作用としての間質性肺炎のため推奨グレードは低くC1です。

 

 

肺癌に対する分子標的治療薬でEGFRチロシナーゼ阻害薬である

 

ゲフィチニブの副作用として、日本人では間質性肺炎などの急性肺障害が多く、

 

他に下痢、肝障害、皮疹などがあります。

 

また、同じEGFRチロシナーゼ阻害薬であるエルロチニブも、

 

間質性肺炎の副作用は致死的であり注意を要します。

 

パクリキタセルは末梢神経障害を来します。