日々の臨床 7月15日土曜日<潜在性クッシング症候群>

内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:潜在性クッシング症候群

    (メタボの症状だが、生活習慣病ではない病気)

 

 

潜在性クッシング症候群(subclinical Cushing Syndrome)とは

 

クッシング症候群の臨床症状を示していないが、

 

コルチゾールの自律的な分泌

(中枢性の上位ホルモンのコントロールを受けないので、

生理的なホルモン分泌の日内変動が消失)

 

がある状態のものです。

 

 

副腎偶発腫瘍(副腎インシデンタローマ)の発見により指摘されることが多いとされます。

 

これは、他の理由で行われた画像診断で偶然副腎に腫瘍が発見されたものの総称です。

 

 

副腎偶発腫瘍の中では非機能性副腎腺腫が約半数で最多ですが、

 

自律性にホルモンを分泌しているもの

 

(コルチゾール産生腫瘍、褐色細胞腫、アルドステロン産生腺腫など)もあります。

 

ホルモンの過剰分泌がある場合や悪性が疑われる場合(直径3cm以上)では外科的摘除も考慮します。

 

 

副腎偶発腫瘍の中で、臨床症状はなくても

 

コルチゾールを自律性に分泌しているコルチゾール産生腫瘍の例があり、

 

これを潜在性クッシング症候群(subclinical Cushing Syndrome)と呼びます。

 

 

血中コルチゾールは日中正常値であることが多いため、

 

血中副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の測定、

 

少量デキサメサゾン抑制試験、副腎シンチグラフィなどを行います。

 

血中ACTHとコルチゾールの採血は早朝約30分間の安静後に行います。

 

尿検査も早朝尿ないし朝のスポット尿で血中遊離コルチゾールを計測し、クレアチニン補正を行います。

 

 

持続的なコルチゾールの過剰分泌により、高血圧、脂質異常症、耐糖能異常、

 

骨粗しょう症などを合併することが多いです。

 

これに伴う高血圧、糖尿病は自律性に分泌されるコルチゾールに依存します。

 

また過剰に分泌されたコルチゾールのミネラル・コルチコイド作用により、

 

低K血症を来すことがあります。

 

 

これらの大部分は顕性のクッシング症候群には移行しません。

 

しかし、外科的切除により改善がみられる場合があるため、

 

個別の患者さんの状況を総合的に判断して手術を考慮します。

 

ちなみに、副腎腫瘍を摘出後の改善率は50~80%です。

 

 

片側性副腎腫瘍によるクッシング症候群では、

 

健側副腎はコルチゾール分泌過剰によるACTH抑制のため萎縮し、

 

術後半年以上のグルココルチコイド補充療法が必要です