日々の臨床 7月12日水曜日<胃がん検診(その1)>

消化器系の病気

 

テーマ:胃がん検診(その1)

 

<胃がん検診の意義と目的>

 

 

国の指針(2016年4月1日から適用)では

 

胃がんの一次検診では:問診、胃X線検査、胃内視鏡検査が勧められています。

 

 

日本対がん協会が2015年度に全国の支部で行った胃がん検診の結果では、

 

胃がん検診を1万人が受けると、638人が「異常あり」と判定され、

 

精密検査(二次検診)を受けるように勧められます。

 

精密検査を受けた人は516人で、その中から12人に胃がんが発見され、

 

1万人中12人という割合になります。

 

 

この数字をどのように判断するかは、個人の価値観によって異なるのではないかと思います。

 

ただし、高円寺南診療所のポリシーとしては、

 

1万人中9988人の方のメリットも同時に考慮するようにしています。

 

 

①「胃X線検査」

 

「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2006年)で、

 

「対象とする集団の胃がんによる死亡率を減少させる」

 

という胃がん検診の目的に合致すると科学的に証明され、

 

「効果あり」と判定されています。

 

 

検査法は、まず、空気を出して胃を膨らませる発泡剤を飲みます。

 

その後、X線を反射するバリウムという造影剤を飲んで、胃にX線を当てながら撮影します。

 

撮影したいところにバリウムがうまく付着するように体を上下左右に動かして、

 

7~8枚撮影するのが一般的です。

 

胃X線検査は、一次検診で「異常あり」と判定された場合、

 

さらに詳しく検査するために精密検査でも利用されます。

 

検査の感度(がんがある人を正しく診断できる精度)は70~80%といわれています。

 

胃がんのほかに、胃潰瘍(かいよう)やポリープも発見でき、治療に結びつけられます。

 

 

高円寺南診療所では胃X線検査を高く評価しています。

 

その理由は、胃がんや胃潰瘍、その他器質的胃炎の診断に役立つばかりではなく、

 

慢性胃炎の大多数を占める症候学的胃炎(器質的病変を認めないもの)や、

 

健診受診者の約15%にみられる機能性ディスペプシア

 

(胃のもたれ、みぞおちの痛みなどの腹部症状を呈するが

 

症状の原因となる器質的・全身的・代謝性疾患を認めないもの)

 

のケースであっても、胃全体の解剖学的位置や周辺臓器との位置関係をはじめ、

 

胃の形態と機能の全体像を観察することができ、

 

その後の治療に役立てることができるからです。

 

 

問題点として、X線による放射線の被曝(ひばく)がありますが、

 

自然のなかで浴びる放射線と同程度なので、健康に大きな影響を及ぼすことはありません。

 

 

②「胃内視鏡検査」については2014年に同ガイドラインが見直され、

 

一次検診の方法として推奨されました。

 

ただし、死亡率減少効果を判断する証拠が不十分で、

 

対策型検診として実施することはすすめられていません。

 

また麻酔薬や鎮痙剤を使うので、これらの薬による副作用もあります。

 

薬に対するアレルギーのある人は必ず医師に相談しましょう。

 

高円寺南診療所では現在、この検査を積極的に行っていませんので、

 

必要な場合は、適切な医療機関にご紹介いたしております。