日々の臨床 7月11日火曜日<後天性血友病>

血液・造血器の病気

 

テーマ:後天性血友病

 

(循環抗凝固因子による出血傾向)

 

 

血友病とは、血液中の凝固因子の異常により出血傾向を来すものです。

 

 

第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の先天的な活性低下によるものがそれぞれ、血友病Aまたは血友病Bです。

 

いずれも遺伝性疾患で先天性の病気なので小児科疾患と考えがちですが、

 

成人になってから後天的に発症するものがあるため、

 

内科医もこの病態を把握しておかなければなりません。

 

アレルギー専門医は、たとえ血液病の専門医ではなくとも、

 

自己抗体による病気の診断と治療のエキスパートであるため、

 

これを見逃すことがないよう心がけています。

 

 

これは特定の凝固因子に対する阻害物質(インヒビター)が

 

後天的に形成されて出血傾向を来す病態が知られています。

 

 

血友病Aの患者に輸血や第Ⅷ因子製剤を補充(補充療法)して

 

同種抗体による第Ⅷ因子インヒビターが出現することがある一方で、

 

輸血や補充療法とは無関係に自己免疫疾患(関節リウマチ、SLEなど)、

 

妊娠、悪性腫瘍、薬剤投与後などに出現することや、

 

全くの健常者に突然出現することもあります。

 

 

第Ⅷ因子活性の低下から全身の出血傾向を呈するものを特に後天性血友病Aと呼びます。

 

 

これは成人期以降に第Ⅷ因子に対するインヒビター抗体の出現が最も多く、

 

70歳代を中心に高齢者に好発し、

 

広範な斑状紫斑や皮下出血・筋肉内出血など全身の出血傾向を来たします。

 

活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長します。

 

 

採取した血液に外因系血液凝固因子を活性化させる部分トロンボプラスチンと

 

内因系の始まりである第Ⅶ因子を活性化させる薬剤(ヘパリンやカオリンなど)を加え、

 

血液が凝固するまでの時間(APTT)を調べます。

 

この検査で凝固時間の延長(時間がかかる)が見られたら、

 

内因系の異常が疑われ、血友病をまず疑います。

 

 

凝固第Ⅷ因子活性と出血の重篤度は相関しません。

 

凝固第Ⅷ因子活性が残存していても、タイプⅡのインヒビターが多く、

 

このインヒビターは希釈されるほど力価が高くなるという特性をもっているため、

 

重篤な出血を認めることがあります。

 

 

診断後は直ちに副腎皮質ステロイドなど免疫療法を開始し、

 

インヒビター力価を速やかに低下させることが必須です。

 

 

フォン・ビルブラント因子に対するインヒビターが発生しると、

 

後天性フォン・ビルブラント病を発症します。

 

 

抗リン脂質抗体症候群のループスアンチコアグラントは

 

リン脂質またはリン脂質に結合したタンパク質に対する自己抗体であるため、

 

特定の因子でなく多くの凝固因子(第Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ因子)の活性を阻害する。

 

この場合、出血傾向はみられず、血栓形成が問題になります。