中毒・物理的原因による疾患、救急医学
テーマ:歯科医からのSOS
<ただちに歯科治療してはいけない疾患>
高血圧症、狭心症、慢性肝炎、甲状腺機能亢進症、自己免疫疾患、抗凝固薬服薬中などでは、
抜歯などの歯科治療を直ちにおこなってはいけません。
本日は、高血圧が未治療のまま狭心症に発展していた患者の抜歯の例をご紹介いたしましょう。
コントロール不良の高血圧患者では、痛みや歯科治療に対する不安や恐怖心により、
内因性カテコーラミンの分泌が亢進しやすいです。
これは急激な血圧上昇をもたらし、
高血圧性脳症や頭蓋内出血を誘発するリスクが高いです。
治療前に血圧のコントロールを行うべきです。
治療中の血圧変動をモニターし、変動が激しければ抜歯を中止すべきなのですが、
なかなかそこまで管理できる歯科医院は少ないようです。
せめて、治療前の血圧測定だけでも実施していただきたいものです。
治療を途中で中止しづらい、とのご意見も少なくありませんが、
多数歯を一度に抜歯しないようにするなど慎重な対応が必要だと思います。
重篤な事故を直接・間接に経験した歯科医は、より慎重になるようです。
もっと注意しなければならないのは、狭心症です。
狭心症は心臓死の危険が大きいことを知らない歯科医はいないと信じたいところですが、
発作がほぼ収まっている状態の患者さんは自分で申告しない限り、
歯科医はそれを知りようもありません。
いずれも抜歯により狭心症発作をおこしたり、
その狭心症に心筋梗塞が併発して心停止したりすることがあるので注意を要します。
以前、海外出張を目前に控えて抜歯をしなければならない患者さんが
胸痛発作をしばしば起こすことが判明して、急遽相談を受けたことがあります。
患者さんに高円寺南診療所を受診していただき、労作性狭心症と診断しました。
そこで、疲労の回復と外用硝酸薬による対処を指導しました。
歯科治療の2日前から睡眠導入剤にて十分な睡眠を確保していただき、
半日前からフランドルテープ(持続性亜硝酸外用薬)40mg®を腹部の皮膚に貼付し、
さらに、万が一発作が出現した時に備えて、
ニトロール・スプレー(速効性硝酸薬)を持参していただきました。
無事に抜歯できましたが、米国への出張に向かう機中で狭心症発作を起こしました。
幸い、持参していたニトロール・スプレーで事なきを得たとの報告を受けました。
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