日々の臨床 6月26日月曜日<口の乾き>

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:口の乾き

 

口腔乾燥症状改善薬サラジェン®(ピロカルピン塩酸塩)の功罪

 

高円寺南診療所の日々の臨床の課題は、特異体質の方のサポートをどうすべきか、ということです。

 

特異体質の方は、一般に症状が多彩で、あらゆる症状に対して過剰な反応が現れやすいです。

 

アレルギー体質やリウマチ体質の皆様を多数診させていただいているのは

 

、専門の関係で当然ではあります。

 

しかし、アレルギー体質やリウマチ体質、線維筋痛症などの病気は、

 

症状が全身におよび、心理的、気候や環境的要因が複雑にかかわってきます。

 

しかも、使用するお薬にとても敏感であるため、さじ加減が難しいことが悩みの種です。

 

 

それでも、これらの患者の皆様に、効果的なケアを提供しないと、

 

予期せぬ他科受診による事故を引き起こしかねません。

 

紹介状を持参して受診していただければ良いのですが、

 

中には<お薬手帳>も持参せずに他科を自身した結果、

 

検査薬を含めて薬剤の相互作用が生じることもめずらしくありません。

 

 

本日のテーマであるサラジェン®、この薬は、唾液の分泌を増やすお薬です。

 

シェーグレン症候群などにおける口腔乾燥症状を改善します。

 

このお薬は、唾液分泌促進薬です。唾液腺に働いて唾液の分泌を増やします。

 

この薬のメリットとしては、唾液の分泌がよくなり口内が潤えば、

 

口の違和感や痛み、摂食・会話障害などの口腔乾燥症状も改善されることです。

 

気管支喘息を始めアレルギー体質の方等には禁忌とされる薬ではありますが、

 

現場では、あえて慎重に使用せざるを得ないことがあります。

 

気管支喘息の治療薬ではM3受容体遮断薬

(M3受容体を阻害して気管支ぜんそくに用いる吸入抗コリン薬の総称)

 

の副作用には口渇、散瞳、排尿困難などがあります。

 

気管支喘息の方で口渇がある方は、まず、この薬の処方医と相談することが大切です。

 

 

この病気を治療しないままでおくデメリットは、

 

唾液が減少を続け、口の乾燥感や痛みを生じ、

 

食事や会話など日常生活にも支障があらわれる点です。

 

この状態がさらに長く続けば、カンジダ症虫歯にもなりやすくなります。

 

これは免疫力の低下を意味します。肺炎などの感染症や、諸々の癌に罹り易くなると考えられます。

 

 

以下に、補足的な説明を加えます。

 

 

【薬理】 作用機序からは副交感神経刺激薬 (コリン作動薬)に分類されます。

 

副交感神経系の唾液腺内ムスカリンM3受容体を刺激することにより、唾液の分泌を促進させます。

 

この薬には神経伝達物質のアセチルコリンに近い性質があり、

 

唾液腺以外のいろいろ臓器に影響をおよぼします。

 

そのため、心臓の悪い人、胃腸や膵臓など消化器系あるいは泌尿器系に病気のある人、

 

また、未治療の気管支喘息、てんかん、パーキンソン症状のある人など使用できないことがあります。

 

 

同類のコリン作動薬との併用は、互いに作用を増強します。

 

逆に、抗コリン作用を持つ一部の胃腸薬や安定薬、抗うつ薬と併用すると、

 

効果が打ち消されるおそれがあります。

 

 

【副作用】 重い副作用はまずありません。

 

しかし、以下のような症状で、つらいときは、医師とよく相談してください。

 

一番多いのは、汗が出やすくなることです。

 

ほかに、鼻炎、吐き気、下痢、頻尿、頭痛、ほてり、などもみられます。

 

 

【使用上の注意】

 

〇指示された用法用量どおりに、正しくお飲みください。

 

ふつう、1日3回、毎食後に飲みます。空腹時は避け、食後30分以内に服用しましょう。

 

〇高円寺南診療所の方針としては、安全性確保のため、

 

この薬を最初から1日3回ではなく、1日2回以下から開始しています。

 

期待する効果より、不快な症状が優っていれば、早期に中止していただきます。

 

なお、この種の薬は、すぐによい効果がでるとは限りません。

 

3か月程度続けて効果が無ければ中止しています。