日々の臨床 6月23日金曜日<急性腎炎症候群>

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

テーマ:急性腎炎症候群

 

 

高円寺南診療所では、初診時にはすべて血圧・脈拍数の測定をしていただいておりますが、

 

尿試験紙による血尿・蛋白尿のチェックも同様に大切だと考えています。

 

 

高円寺南診療所の専門外来科目の一つがアレルギー科ですが、

 

医学のいろいろな領域にアレルギーがかかわってきます。

 

急性糸球体腎炎もⅢ型アレルギーが関与しています。

 

 

 

<かぜは万病の元>といわれますが、風邪症状を訴える初診の方で、

 

乏尿(尿量の減少)がみられる場合には、浮腫(むくみ)が生じているかどうか、

 

血尿・蛋白尿がみられるかどうかを確認するようにしています。

 

 

それは急性腎炎症候群を見落とさないためです。

 

急性腎炎症候群では、症状が日単位で変化していきますので、

 

初診だけでなく、必ず再診してくださることが大切ですが、

 

なかなか理解していただけなくて難渋することがあります。

 

 

急性腎炎症候群の原因は様々ですが、よく知られているのは病原体による感染症です。

 

急性腎炎症候群の代表は急性糸球体腎炎で、溶連菌感染後糸球体腎炎などが重要です。

 

 

 

急性糸球体腎炎

 

先行感染の後、一定の潜伏期を経て、

 

血尿、高血圧、浮腫などの症状が急激に出現しますが、多くは保存的治療で治癒します。

 

A群β溶血性連鎖球菌(12型)感染症が代表的ですが、

 

他の細菌や、パルボウイルスB16・B19をはじめとするウイルス感染によっても生じることがあります。

 

なお、パルボウイルスB19は、伝染性紅斑、巣状糸球体硬化症にも関与します。

 

 

溶連菌感染後急性糸球体腎炎

 

高血圧、乏尿(尿量の減少)、浮腫(むくみ)などが生じることがあります。

 

A群β溶血性連鎖球菌(12型)に対するⅢ型アレルギーによる急性糸球体腎炎です。

 

咽頭炎・扁桃炎・丹毒などの先行感染後、2週間で発症します。

 

血液中の補体(ほたい)の濃度が変化します。

 

補体とは、生体が病原体を排除する際に

 

抗体および貪食細胞を補助する免疫システム (補体系) を構成するタンパク質です。

 

補体系は自然免疫に属しており、血液中の多数の小タンパク質からなり、

 

それらは通常不活性な酵素前駆体の形で循環しています。

 

 

溶連菌感染後急性糸球体腎炎では低補体血症を呈します。

 

発病2週以内に、補体が低下し、症状の改善とともに上昇する。

 

顕微鏡による組織像では糸球体係蹄内に炎症細胞が増えて、

 

管内増殖性糸球体腎炎を呈します。

 

腎臓の糸球体の係蹄壁に免疫グロブリン蛋白のIgG

 

補体蛋白のC3が顆粒状に沈着します。

 

 

IgGはウイルス、細菌、真菌など様々な種類の病原体と結合し、

 

補体、オプソニンによる食作用、毒素の中和などによって生体を守っています。

 

IgGはヒトの胎盤を通過できるので自分の免疫系を確立する生後1週間までの間、

 

胎児を守ることができる免疫蛋白です。

 

 

治療:基本は安静・保温、食事療法(塩分・水分制限)です。

 

必要時のみ薬物療法を行います。

 

浮腫があるときは利尿薬(フロセミド)、

 

高血圧には降圧剤(カルシウム拮抗薬)、

 

ステロイドなどの免疫抑制薬は、症状を増悪させることがあるため、慎重に用いられます。

 

 

予後:多くの症例は数か月で治癒しますが、慢性糸球体腎炎に移行することがあります。