日々の臨床 6月16日金曜日<急性腎障害(AKI)>

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

テーマ:急性腎障害(AKI

 

<病気の定義が不明確だと救命できないわけ>

 

 

近年の高齢化や糖尿病患者の増加により、

 

手術後や造影剤検査後などの急性腎不全が増加しています。

 

さらに、集中治療室などの救急医療の現場において、

 

急性腎不全は発生頻度の高い病態です。かつ、生命予後を増悪させる危険因子です。

 

 

しかし、1990年代から最近に至るまで救命率は改善されていません。

 

その一因として問題になっていたのは、

 

従来の急性腎不全(ARF)の定義や分類が統一されていないために

 

質の高い研究が困難であったためであることが指摘されています。

 

つまり、早期に診断できる確かな基準がないと手当が始められない、というわけです。

 

 

そこで、急性腎障害(AKI)の診断基準の作成により、

 

急性腎障害に対して早期に治療介入できるようになりました。

 

しかし、何事も予防に勝る治療はありません。

 

 

急性腎障害の診断:

超音波検査では腎サイズは正常あるいはやや腫大を認めるのみです。

 

KDIGOのAKI定義

 

以下のうち、いずれかに該当すればAKI

 

1)48時間以内に、血清Cr値が0.3mg/dL上昇した場合

 

2)血清Cr値が、それ以前7日以内に判っていたか予想される基準値より1.5倍の増加があった場合

 

3)尿量が6時間にわたって<0.5mL/kg/時に減少した場合

 

 

AKIN病期(KDIGO分類)

   病期2は、血清Crが基礎値の2.0~2.9倍、尿量は12時間以上で<0.5mL/kg/時

 

 

RIFLE分類:

AKIを「Risk, Injury, Failure, Loss, ESRD」に分類し、AKIN分類ではステージ1~3に分類します。

 

 

尿中L-FABP:

腎疾患のバイオマーカー。AKIの早期診断・腎障害の重症リスク評価に有用ですが、

 

原因(腎前性・腎性・腎後性)を鑑別することはできません。

 

 

最も確実なAKIの予防法は、

 

2012年に急性腎障害(AKI)の診断基準が標準化されて次第に明らかになってきたことで、

 

1)腎毒性薬剤を可能な限り使用しないこと、

 

2)造影剤腎症の予防についてはガイドラインを活用する

 

3)血行動態を適正に管理して十分な腎血流を確保すること

 

なお、虚血によるAKIの予防に関しては、等張性晶質液の投与が推奨されています。

 

 

腎代替療法(RRT):

我が国では約8割が持続的血液濾過透析(CHDF)が行われています。

 

ただし、治療導入開始基準は未確立で、早期介入が予後改善をもたらすかどうかは不明です。

 

心腎症候群(CRS)type3:急性腎障害によって引き起こされた心機能障害です。

 

 

肝腎症候群:

重症肝疾患が原因となる腎前性腎障害で経過とともに急性尿細管壊死、

 

尿中Na排泄は低下を認めます。

 

 

運動後AKI(ALPE

運動後に生じる急性腎障害で、背部痛の頻度が高いです。

 

腎性低尿酸血症患者や無酸素運動で発症しやすいが、尿の色などには変化がありません。

 

また尿量が減少しない非乏尿性の急性腎障害なので発見が困難です。

 

血清尿酸値が低い方は、水氣道®などの有酸素運動がおすすめです。