診察室より 6月13日(火)

第114回日本内科学会講演会に参加して(その3)

 

(4月14~16日:東京国際フォーラム)

 

テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-

 

招請講演<がん幹細胞研究の進歩と治療開発>

 

赤司浩一(九大研究院・病態修復内科)氏の公演を聴いて(その3)

 

 

正常組織を構成する細胞群の中にも幹細胞があります。

 

この正常幹細胞はさまざまな支持細胞群からなる微小環境の中で維持されています。

 

これを<幹細胞ニッチ>と呼んでいます。

 

このニッチからのメッセージによって、自己複製や分化が始まります。

 

 

前回【先週】は、がん幹細胞の治療抵抗性、

 

つまり、がん幹細胞が薬剤・放射線治療に抵抗して生き残る背景について触れました。

 

 

がん幹細胞が強い理由の一つは、がん幹細胞を支えるニッチの存在です。

 

なぜならば、がん幹細胞もニッチからのメッセージにより、

 

自己再生や増殖分化の制御を受けているからです。

 

 

したがって、がん幹細胞の制御のためには、

 

ニッチを形成する細胞が果たしている役割について研究が進められているのです。

 

 

《朱に交われば赤くなる》という成句があります。

 

人は交わる友によって善悪いずれにも感化されることの譬えです。

 

細胞レベルだけでなく、人格をもった個体レベルでも同様のことが言えるのではないでしょうか。

 

個人にとっても、いわば<個人ニッチ(個人的な居場所となる小さなコミュニティの要素)>があります。

 

視点を変えれば、すべての人が、周囲の人々に対して

 

<個人ニッチ>となることが理解できます。

 

 

高円寺南診療所では、個人の環境を整えることや、対人関係の改善、

 

コミュニケーションや表現能力の向上を支援しています。

 

水氣道聖楽院での取り組みは、健康的な居場所や創造的で生産的かつ芸術的な活動を通して、

 

みずからも良好な<個人ニッチ>となりうるように成長していきたいものです。