日々の臨床 6月13日 火曜日 <脳卒中の予防>

火曜日 血液・造血器の病気

 

テーマ:脳卒中の予防

 

<他の薬剤の影響を受けやすく、副作用が問題となる抗凝固薬>

 

脳卒中に関しては、通常であれば、

 

日曜日のテーマである神経・精神・運動器で扱いますが、

 

今回は血液の凝固に着目してみます。

 

 

『高円寺南診療所の院長は、大の嫌煙家である。』

 

という書き込みがされていますが、この点は間違いではありません。

 

ただし、誤解していただきたくないのは<喫煙者には、愛を!>

 

の精神で禁煙指導をしているということです。

 

 

先日も、とある新患に脳梗塞のリスクが高いため禁煙を勧めましたが、

 

案の定、その後まもなく脳梗塞になって、東京警察病院に入院されました。

 

適切な治療により、幸い目立った後遺症はなく、

 

退院され、高円寺南診療所に来院し、経過を報告してくださいました。

 

 

脳画像検査の結果、反対側にも脳梗塞の痕跡が見いだされ多発脳梗塞が疑われました。

 

さすがに禁煙に踏み切れたようです。

 

 

何らかの抗凝固剤が処方されているはずなので、尋ねましたが、

 

生憎、「お薬手帳」を持参していらっしゃいませんでした。

 

 

こうした薬剤情報は、すべての医師・薬剤師に情報提供しておかないと、

 

困った事態に発展しかねないので、以下説明します。

 

 

一般には、高齢者に発症する脳梗塞の病型としては、心原性脳梗塞の割合が高くなります。

 

その理由は、高齢者では心房細動の有病率が高いためであると考えられます。

 

心原性脳梗塞の場合はt-PA療法が最も多く使用されます。

 

ただし、1ヶ月以内の脳梗塞の既往がある場合は使用できません。

 

なお81歳以上の頸静脈的血栓溶解療法は禁忌ではないが、慎重投与事項に該当します。

 

心原性脳梗塞では抗凝固療法として、ワルファリンやヘパリンなどを使います。

 

ワルファリンは半減期が長くコントロールに時間がかかるため、

 

急性期における予防のためにはヘパリンを使います。

 

 

しかし、今回の症例は、非心原性脳梗塞でアテローム血栓性脳梗塞ラクナ脳梗塞であったと考えられます。

 

これらの病態の急性期には抗血小板療法(アスピリン、オザグレルNa)を使います。

 

高円寺南診療所再来時は、急性期を過ぎて安定していますので、

 

しっかりとした再発予防が鍵になります。

 

最近、新規の抗血栓薬(DOACや抗血小板薬)の脳卒中や

 

全身性塞栓症の予防に対して、各種の臨床試験が行われ、

 

有効性や安全性について多数の結果が示されつつあります。

 

 

ところで、抗凝固薬の重大な副作用は、過剰投与による出血です。

 

高血圧患者などでは特に注意し、頻回の凝固学的検査が必要です。

 

経口抗凝固薬は他薬の影響を受けやすい薬剤です。

 

 

特にワルファリンは併用薬によって作用が変動するので注意が必要です。

 

そもそも、ワルファリンに対する感受性には個人差が大きく、出血リスクが高い場合があります。

 

そのため、他薬を併用ないし中止する場合は、凝固学的検査(プロトロンビン時間)を行います。

 

ビタミンK₂(メナテトレノン)投与中の患者に

 

ワルファリン投与の必要性が生じたときはビタミンK₂を中止します。

 

また、ヘパリン投与に際してはヘパリン起因性血小板減少症に注意します。

 

アスピリンは消化性潰瘍には禁忌ですが、

 

プロトンポンプ阻害薬などの併用で慎重に投与されます。

 

 

抗凝固薬を処方されている患者さんは、

 

御自分の薬の名前を正確に覚えておくことが肝要、ということです!