心臓・脈管 / 腎・泌尿器の病気
テーマ:拡張型心筋症
今回のテーマは、高円寺南診療所とKS病院で
併診している患者さんに対する最新医療情報提供を兼ねてのレポートです。
病因:三大原因は①遺伝子異常、②自己免疫機序、③ウイルス感染、とされつつあります。
特に拡張型心筋症の患者の25~35%に家族歴があります。
常染色体優性遺伝が多数を占めますが、常染色体劣性遺伝やX染色体連鎖遺伝の報告もあります。
拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドラインが
2011年に日本循環器学会より発表されています。
そこでは、<拡張型心筋症は、左室のびまん性収縮障害と左室拡大を特徴とする症候群>
として定義されています。
確定診断には、基礎疾患や全身の異常に続発し、
類似した病態を除外する必要があるとされます。これを除外診断といいます。
経過・予後:慢性進行性のことが多く、長期的な予後は不良でした。
20年前には10年生存率が36%でした。しかし、2000年では73%まで改善しています。
ふだんの外来診療では、胸部レントゲン、心電図、心臓超音波検査等で十分フォローアップが可能です。
治療:薬物療法とICD(植え込み型除細動器)の進歩が目覚ましいです。
1)薬物療法:主に日本循環器学会の心不全治療ガイドラインに準拠します。
予後改善効果が証明されている、
β遮断薬、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系抑制薬
(ACE阻害薬・ARB・アルドステロン拮抗薬)を
主薬とします。心不全の重症度に応じて選択します。
2) 非薬物療法:
<ICDの植え込み>が考慮されることがあります。
① 致死的不整脈に対して、薬物でコントロールできない場合
② NYHA(ニューヨーク心臓協会)心不全重症度分類ⅢないしⅣ度で、
薬物療法のみでこれ以上改善しない重症心不全(左室駆出率35%以下、
心電図QRS幅130msec以上の心室内伝導障害を有する洞調律症例)
<CRT(心臓再同期療法)の適応>
NYHA分類Ⅱであっても、左室駆出率35%以下、心電図QRS幅120msec以上の左脚ブロック波形で洞調律症例
なお、拡張型心筋症の終末医療として、2010年4月から植え込み型補助人工心臓が保険収載されました。
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