日々の臨床 5月10日水曜日

消化器系の病気

 

テーマ:過敏性腸症候群

 

 

高円寺南診療所の新患は、比較的若い世代が多いという特徴があります。

 

若い方たちの中には、体調不良が生じてもすぐに来院せず、

 

3ヶ月以上も経過して、やっと来られる方も少なくありません。

 

 

症状で多いものの代表は腹痛です。

 

腹痛が3ヶ月間続いている場合に、まず確認するのは腹痛の頻度です。

 

過去3カ月間、平均して少なくとも週に1回以上起こしている場合には、

 

その段階で過敏性腸症候群(IBSを疑います。

 

次に、①腹痛と排便が関係するか、②腹痛により排便頻度に変化があったか、

 

③腹痛により便形状(外観)に変化を伴ったかどうかを尋ねます。

 

この3項目のうち2項目以上が認められれば、過敏性腸症候群(IBSと診断します。

 

以上は、Rome Ⅳ基準(2016)という過敏性腸症候群の診断基準の骨子です。

 

 

腹痛の他、下痢、便秘、腹鳴などの機能的障害がみられることがあります。

 

 

治療は第1段階から第3段階まであります。

 

第1段階は、過敏性腸症候群(IBSの患者さんを日常的に診療する

 

一般医や消化器内科専門医が担当しています。

 

このIBSを便の形状(硬便・兎糞状便~軟便・水様便)の割合から

 

下痢型、便秘型、混合型/分類不能型に分類します。

 

もし、便の形状について問診を受けなかったとしたら、そのドクターはIBSに関して、

 

余り専門的な知識を持っていないのではないかと思います。

 

この分類がIBS診療で重要なのは、便性状が、排便回数より、大腸通過時間を良く反映するからです。

 

 

第2段階は、消化器内科専門医等による消化管主体の治療が無効だったことを踏まえて、

 

中枢機能の調整を含む治療経験のある総合病院の消化器科、心療内科、総合内科での治療とされます。

 

ここでは、第1段階の薬物治療との併用も可能です。

 

 

第3段階では、薬物治療が無効であることを踏まえ、心理療法を行います。

 

消化管機能あるいは心身医学の専門医がいる施設での治療戦略です。

 

心理療法には弛緩法、催眠療法、認知行動療法などがあります。

 

 

高円寺南診療所では、第1段階から第3段階に至るまでの一切を担当しています。

 

心身医学や心療内科の最大の欠点は、薬物療法で治療効果を発揮できない場合に、

 

ただちに心理療法を検討することにあります。

 

これは、心身医療や心療内科の発祥であるドイツでも同じです。

 

<神経症や精神病でない心身症の患者に、心理療法を施すのは誤り>であると、

 

心身医学専門医であり心療内科専門医である医学博士が指摘することは、問題があるでしょうか。

 

 

私はそうではないと考えています。非薬物療法すなわち心理療法ではないからです。

 

心身症の患者さんには心身医学療法こそが進められるべきです。

 

真の心身医学療法とは、身体活動や運動訓練を伴うものであると考えているからです。

 

しかし、実際に心理療法もどきの技法を心身医学療法にすり替えていることこそが、

 

心身医学の矛盾であり弱点であると考えています。

 

心身医学療法は心身医学の専門医みずから新たにデザインすべきではないかと考えます。

 

その考えを実践したのが水氣道®であり臨床声楽法(聖楽院)なのです。