日々の臨床 5月3日水曜日 

消化器系の病気

 

テーマ:S状結腸軸捻転症

 

 

<キリキリとお腹が痛く、吐き気を伴う、あるいは吐いてしまった>という、

 

だれでも経験したことがあるような症状は、初診の患者さんに多く見受けられます。

 

 

このような場合に大切なのは、患者さんのお腹が張っているかどうか、

 

脱水していないかどうか、腸管が閉塞していないかどうか、がポイントになります。

 

 

急患の患者さんは、自分の症状について嘘はおっしゃらないものですが、

 

より大切な症状に気づかない、あるいは、そこまで気が回らないことがしばしばです。

 

 

まず、表情を拝見し、それから診察ベッドに寝ていただき、お腹を丁寧に診させていただきます。

 

腹壁に冷えがあるかどうかも大切です。

 

このとき、すでに腹部が膨満していれば、

 

そのことをご指摘させていただくのですが、それでもピンと来ない方がいらっしゃいます。

 

たいていは腸管のガス、場合によっては水、まれに血液ということさえあります。

 

 

次に聴診し、腸管の動きの有無をチェックしてから、

 

立位と横臥位の単純エックス線検査をします。

 

 

腸管のガス像により、小腸のガスなのか大腸のガスなのか、

 

はたまた胃にもガスがたまっているのかどうかも簡単に確認できます。

 

 

ほとんどが癒着性イレウスと呼ばれるもので、内科的な治療で治癒します。

 

しかし、<痛みがあるので痛み止めを!>と考えるのは無理もありませんが、

 

診断が確定するまでは原則として用いないことが鉄則です。

 

 

絶飲食を指示することがありますが、腸管ガスが顕著であれば、

 

消化管ガス駆除剤が役に立つことが多いです。

 

何よりも大切なのは、症状の原因を理解していただくことです。

 

心身医学では、腸脳相関の研究が進んでいますが、

 

<根拠のない疑問や不安>から<根拠のある納得や安心>に転換できるだけで、

 

お腹の痛みが楽になることがあります。

 

 

イレウスの中でも複雑性(絞扼性)イレウスには特段の注意を喚起しなければなりません。

 

これは、腸間膜を走行する血管の血流障害により、腸管壊死に至り、腸管閉塞を来せば、

 

急激に病状が悪化して緊急手術を要することがあるからです。

 

 

高円寺南診療所では、腹部単純エックス線で、拡張したS状結腸を発見することがあります。

 

 

S状結腸軸捻転症を疑うコーヒー豆徴候が出現しているからです。そのような場合は、

 

消化管ガス駆除剤を処方し、自宅でこれを内服していただき、

 

入浴(シャワーではありません!)していただいた後、

 

温かくしたまま休んでいただきます。

 

もちろん、軽快しない場合は、救急車を呼ぶように、予めお伝えしています。

 

しかし、30年近く、緊急手術はおろか、救急搬送に至ったことは全くありません。

 

 

むしろ<痛みがあるので、早く痛み止めの注射を!>

 

と感情的に医師に迫るようなタイプの方は

 

<根拠のない疑問や不安>から脱却できないままですので、

 

緊急手術となる可能性が高まるのではないかと心配しています。