第114回日本内科学会講演会に参加して(その1)
(4月14~16日:東京国際フォーラム)
テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-
招請講演<がん幹細胞研究の進歩と治療開発>
赤司浩一(九大研究院・病態修復内科)氏の公演を聴いて(その1)
私は毎日<がん>の患者さんを診ています。
このように言うと、
『高円寺南診療所は、すごくハイレベルなクリニックなんですね』、
という反応が返ってきます。
しかし、日本の国民の過半数は<がん>で亡くなります。
ですから、<がん>患者の診療は、
ごく普通の診療所の普通の医者にとっても日常的なことなのです。
正常な組織を構成する細胞は、自己複製する能力がありますが、
幹細胞でない多くの正常細胞は、他の種類の細胞に変化する能力(分化能)を持ちません。
これに対して、悪性腫瘍である<がん>組織の中にも、
自己複製する能力を持ち合わせた細胞が少数ながら混じっています。
これが<がん>幹細胞(ステム・セル)です。
そのため、正常組織は分化能のない細胞集団なので、細胞レベルで均一なのですが、
《 悪性腫瘍の組織は、分化能をもつ<がん>幹細胞が
正常とは異なる分化能を示すことにより、細胞レベルで不均一となる。》
というモデルが提唱されているそうです。
がん幹細胞とは、2006年の米国癌学会で、
「腫瘍内に存在し、自己複製能と主要組織を構成するさまざまな系統のがん細胞を生み出す能力を併せ持つ細胞」
と定義されました。
医学用語の定義は、今後の研究の方向性を明確にするうえで大きな役割を果たします。
この定義により、
がん化とは・・・正常細胞ががん幹細胞化すること
がんの治療とは・・・治療抵抗性が高いがん幹細胞を根絶すること
がんの再発とは・・・残存がん幹細胞が再活性化すること
がんの転移とは・・・がん幹細胞の移動と局所への定着
そして、がん治療の標的は、がん幹細胞にある、
ということが明確になってきました。
治療抵抗性については、次回【来週】で採り上げます。